【BL】後輩大学生にNTRされた俺が、新たな性癖に目覚める話

千織@山羊座文学

大学生にネトラレたのはノンフィクション

 大手企業に勤めて三年。企業名を言えば、合コンメンバーとして重宝される。そういうステイタスを持っていると思っていたのに……。


 大学生の後輩、朔に彼女をネトラレた。


 朔とは、幼い頃からやっていた習い事の先輩後輩にあたり、長い付き合いだ。あんな小ちゃくて、俺の後をついてくるばかりだった可愛い朔は、いまやスルッと背が伸びて、かっこよく育った。朔は、見た目と頭の良さで、それこそ合コンメンバーとして重宝した。


「俺は彼女いないとダメ、とかじゃないんで。合コンは門脇さんにタダ飯食わせてもらえるから行くみたいなもんですよ」


 その言葉を真に受けて、安心していた。それこそ合コンをきっかけに付き合った彼女と、朔と、三人でよく遊びに出かけた。そして三ヶ月後……彼女から朔を好きになったから、と言われて振られた。


 俺は文句を言いに、朔のアパートに押しかけた。朔は慌てるわけでもなく、ご丁寧にアイスコーヒーを出してきやがった。


「どういうつもりだよ……人の彼女に手を出すなんて……」


「別に、あっちが勝手に好きになっただけですよ。俺も溜まってたし、タイミングが合ったんで」


「な、なんだよそれ! じゃあお前は愛があるわけじゃなくて、単にヤりたくて寝ただけなのか?!」


「人間、そういうときもあるじゃないですか」


 お互い好きならまだ許してやろうと思ったのに……!カラカラに喉が渇いて、出されたアイスコーヒーを一気飲みした。


「お前が俺を裏切るなんて……ショックだよ……」


「あんなフラフラした彼女なら、早く別れて正解ですよ。どうせ今も男漁りしてますから」


 結局、俺そのものよりも、業界と繋がりたかっただけか……。それなら朔の言う通り、早く別れて正解かもしれない。


「わかったよ……。まあ……これからは、彼女になった人に……手を出してほしくないな……。お前のことは……後輩として、これからも……仲良く……したい……か、ら……」


 俺の意識はそこで途切れた。



♢♢♢



 ふと目を覚ました。暗い部屋に寝かされている。なぜか手がベッドに繋がれていて、全裸だった。


「起きましたか?」


 朔がベッド脇から見下ろしてきる。


「な……これ……どういうことだ?!」


「門脇さん、ホント鈍いから、実力行使をすることにしました」


「は?」


「俺、ずっと門脇さんのこと好きだったんです。だから門脇さんに彼女ができないように合コンを見張ってて……。その気がありそうな子は、事前に俺がアプローチしてかすめとってました。だから、あの彼女は案外本気で門脇さんのこと好きだったっていうか。半ば無理矢理体の関係に持っていきましたけど、彼女も最後は”ネトラレるカノジョ”ポジションにちょっと萌えたみたいです」


「な、何言ってんの……?」


「え? ちゃんと聞いてくださいよ。こっちは、自分がゲイかつ貴方が好きだって告白してるんですから。そんな一世一代のカミングアウトを適当に聞かないでください」


「わ、わかった! 言いたいことはわかった! で? この状況は、何?」


「そこまで苦労したのにここで振られたら、俺、可哀想じゃないですか。だからせめて、門脇さんに男同士の気持ち良さを知ってもらった上で考えてほしいな、って」


「いや! 待て! それは! 待って!」


「もう遅いですよ。結構強めの薬飲ませたんで、ぐっすり眠れたでしょう? 寝てる間にしっかり準備できてますから」


 そう言いながら、朔は服を脱いだ。


 若々しく引き締まった体。幾度となく、俺の経済力を凌ぐ性技で女たちを虜にしてきたのかと思うと、悔しくさよりも尊敬の気持ちすらある。


 いや、そんな呑気なことを考えている場合ではない。


「よ、よそうよ、こんなこと……。俺はお前との友情を壊したくない……」


「友情……でもいいですよ。友達同士でセックスして、気持ちよかったらそれはそれで良くないですか?」


 ん? いいような、悪いような?朔の言ってることがなんなのか考えているうちに、朔が馬のりになってキスをしてきた。


「ぶあっ! ちょっ……!」


 いや、もう……べろんべろん……


「まさか、ただ突っ込んだりしませんから。ちゃんとその気になってから……ね?」


 朔はそう言って、長い長い前戯に入った。



♢♢♢



 極限まで焦らされた俺は、最後はこちらから懇願する形で終わりを迎えた。


 あれから、朔に内緒で合コンをすると、バレた時にキツい仕置きをされるようになった。だが、それがまた、たまらない。


「なんでそんなに性癖がねじれたんですかね?」


 お前のせいだよ。


 今日も朔にいじめられ、涙目になりながら俺はそう思った。



(おわり)

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