幸せの奇跡
それから、俺の日々は劇的に変わった。かなり劇的に変わった。
まず、休み時間はたいてい星野さんと地学談義に熱を入れることとなった。
おかげさまで勉強を教えてもらうためだけに俺に寄り付く人は減った。嫌いだったというわけではないが、時折鬱陶しく感じていたのでありがたい。
そしてなにより、自分の趣味を受け入れて一緒にやってくれる人が増えたことで、心が楽になった。
自分一人じゃないから、堂々と自分らしくやっていける。
「わたし、なんで地学なんかやってるんだろうって思い始めてたんだよね」
ある日、星野さんは伏せたる思いを俺に語ってくれた。
「周りは趣味で勉強してる人なんて一人もいないし、そもそも地学をやったことがある人もほとんどいなかった」
だから、自信を失くして、後ろ向きになってしまって、あんなに人が怖くなってしまったという。
「でも、地原くんと出会ってそれは変わった」
それからの星野さんの言葉は、嬉しいものだった。
「地原くんが地学を教えてくれて、わからなかったところがわかるようになった」
俺はうなずく。
「それだけじゃなくて、わたしがこれまで勉強してきたことも認めてくれて」
感動しそうだ。
「おかげでわたしは、自分らしく生きてもいいんだって思えて、前を向けるようになった」
嬉しい気持ちも感じながら、どこかで寂しい。
きっとこの役割は俺じゃなくても果たせていた。ただ、地学が好きで、他人に頼まれたら教える程度には優しくて、他人の努力を認められる程度に謙虚な人であれば誰でも。
でも、星野さんと出会えたのが俺でよかった。
「実のところ、俺も同じようなことを思ってた」
星野さんは目を見開く。
「地学を趣味にしてる人なんてこれまで会ったこともなかった。ネット上ではたまに見かけたけど、それだけの架空の存在かなにかなのかもしれないって本気で思い始めてた」
まだ衝撃から立ち直れていないみたいだった。
「俺も、星野さんと出会えてよかった」
これもきっと、星野さんじゃなくてもよかったのかもしれないけど。
でも、今の俺たちの組み合わせはきっと紛れもなく特別な関係。他の人たちじゃありえなかった。
今は素直にその奇跡を享受しておこうと思った。
クラスメイトの小動物系美少女に勉強を教えたら俺だけ懐かれたんだが ナナシリア @nanasi20090127
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