図書館で二人きり勉強会

「ごめんなさい、地原くん」


 開口一番、星野さんは俺に謝った。


 星野さんが俺の気分を害したような記憶はないので、もしかして俺知らない間に告白してたのか、と記憶を探る。


 しかし、答えはすぐに星野さんの口から出た。


「わたし、ファッションセンスないから、服ださくて迷惑かけちゃうかも。それに、コミュ力もないから、地原くんを置いて突っ走っちゃうかも……しれないです」


 星野さんは、俺が気にもしていないようなことを心配していた。


「全然気にしてないし、今日俺も服超ダサい」


 今日の俺は、I♡地学Tシャツを着てきた。ダサい。


 対して星野さんは、可愛い英語の文字が書かれた白Tシャツと、黒のミニスカートで、俺からしてみればおしゃれに見える。でも春にミニスカートはつらくないか。


「確かに、地原くんは……面白い服装してますね」


 かなりオブラートに包まれた。自分でもダサいと自覚しているので、下手に気を使われた方が傷つく。


「じゃあ、図書館入ろうか」

「は、はい」


 俺が堂々と図書館に入り、怯えながら星野さんが後をついて歩く。


「ここ、個室あるらしいよ。どうする?」

「個室で、お願いします……」


 星野さんは他人の視線とか気になるタイプみたいなので、ちょうどよかった。


 受付の人に尋ねて、個室の利用カードを受け取る。


「あんまり広くないけど、十分使えそうだな」

「そう、ですね」


 俺が椅子に腰掛けるのを待って、座る。


「星野さん、なんで敬語なの?」

「え、それは……。地原くんの方が、すごいから」

「クラスメイトなんだから、敬語を使う必要はないと思う。というか、俺の方が心苦しいから、やめてほしい」


 敬語を使われているからといってこちらからも敬語を使うというのは少しよそよそしいし、かといって敬語を使われているのにタメ口というのも違和感があった。


「じゃあ、地原、くん、よろしく」

「ああ、よろしく、星野さん」


 そう言って各々持ってきた参考書を開く。


「じゃあ、どこからやろうか」

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