第1話 初めての手がかり

香織と涼介は、山田隆二の死の真相を探るために動き始めた。門司港の静かな街並みの中、二人は自分たちが働く信用金庫へと足を運んだ。日差しが柔らかく照らす中、古いレンガ造りの建物が目の前に現れる。赤茶色のレンガが積み重なったその建物は、歴史と風格を感じさせる佇まいを見せていた。


「山田さんのデスクには、何か手がかりがあるかもしれない。彼がどんな資料を扱っていたのか、調べてみよう。」香織は決意を込めて言った。


涼介は建物の外観を見上げながら、深く息を吐いた。「そうだな。まずは同僚に話を聞いてみよう。何か不審な点があったかもしれない。」


信用金庫の入り口をくぐると、冷ややかな空気が二人を包み込んだ。受付を通り過ぎ、香織は一歩一歩、足元を確かめるように進んでいく。緊張と不安が心の中で渦巻いていたが、表情には出さない。


「涼介、私は山田さんのデスクを調べてみるわ。」


「わかった。俺は同僚に話を聞いてみる。」


香織は山田のデスクにたどり着くと、そっと椅子を引き、座った。デスクの上には書類やメモが整然と並べられている。山田の几帳面な性格が表れているようだ。窓から差し込む光がデスクの上を照らし、書類に柔らかな陰影を作り出していた。


香織の心の声「山田さん、あなたは何を見つけたの?何があなたを死に追いやったの?」


香織は一冊のノートに目を留めた。それは山田が使用していたものだ。ノートを開くと、彼の緻密な筆跡で書かれたメモがびっしりと並んでいた。


「これは…」香織の声が低く響いた。


ノートには、不正融資や隠蔽工作についての詳細な記録が記されていた。香織の胸に不安と興奮が交錯する。これは山田が命を懸けて集めた証拠に違いない。


その時、涼介が戻ってきた。彼の表情は険しく、何か重要な情報を掴んだようだった。


「香織、同僚から話を聞いたんだ。山田さんは最近、夜中に物音がすると言っていたらしい。」


「物音?それはどんな音だったの?」


「具体的にはわからないけど、足音や何かが落ちる音だと言っていたみたいだ。彼は少し不安そうだったらしい。」


香織はノートと涼介の言葉を頭の中で繋ぎ合わせながら考えた。


香織の心の声「山田さんは何かに怯えていた。それが彼の死に繋がったのかもしれない。でも、彼は一体何を見つけたの?」


二人は更なる手がかりを探すため、山田の自宅へ向かうことにした。門司港の街並みを歩きながら、香織の心には山田の優しい笑顔と共に、彼の抱えていた恐怖が思い浮かんだ。


「涼介、山田さんの部屋には何か重要な証拠が残っているかもしれないわ。」


「そうだな。彼がどんな恐怖に直面していたのか、それを突き止めないと。」


山田の自宅に到着すると、香織は部屋の鍵を開け、慎重に中へと入った。部屋は整然としていたが、どこか不自然な雰囲気が漂っていた。家具の配置や小物の置かれ方が、まるで何かを隠そうとしているように感じられた。香織は部屋の中を丹念に調べ始め、涼介も手分けして調査を進めた。


「ここに何か重要な証拠があるはずよ。山田さんが見つけた不正の証拠を。」


「香織、こっちに来てくれ。引き出しの奥に何かが隠されている。」


涼介が見つけたのは、小さなUSBメモリだった。香織はそれを手に取り、何が保存されているのか確認するためにパソコンに接続した。


「これは…山田さんが見つけた不正融資のデータかもしれない。」


二人は興奮と緊張が入り混じった表情で画面を見つめた。このデータが、山田の死の真相を解き明かす鍵となるかもしれない。


香織の心の声「山田さん、このデータがあなたの命を奪った原因なのね。でも、私たちはあなたの意思を継いで真実を明らかにするわ。」


その夜、香織の自宅でデータの解析を進めていた二人は、新たな手がかりを見つけた。USBメモリには複数の不正融資の記録が含まれており、その中には高額な取引や隠蔽工作の詳細が記録されていた。


「これは大きな不正が行われている証拠よ。山田さんが命を懸けて集めたものだわ。」


「これを公表すれば、多くの人々が巻き込まれることになる。でも、それが山田さんの望みだったに違いない。」


香織と涼介は、次に何をすべきかを考えながら、USBメモリのデータをさらに詳しく解析することにした。彼らの前に立ちはだかる闇は、ますます深くなっていく。


**作者から**

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