【完結】港町事件簿 新章スタート
湊 マチ
第0話 プロローグ:不審な死の謎
福岡県北九州市門司港。歴史的な街並みが広がるこの港町は、どこか懐かしさを感じさせる静かな雰囲気に包まれている。朝の柔らかな光が海面を照らし、静寂の中で波音が心地よく響く。木々の葉が風にそよぎ、鳥たちのさえずりが空気を清めるように響き渡っていた。そんな穏やかな日常を揺るがす事件が、この町で起ころうとしていた。
三田村香織は地元の信用金庫で働く28歳の銀行員だ。冷静沈着で高い観察力を持つ彼女は、同僚からも信頼されている。そんな香織のもとに、一報が入った。信頼していた同僚、山田隆二が自宅で亡くなったという知らせだった。
香織はすぐにその報せにショックを受けた。山田は45歳、誠実で真面目な性格から周囲に信頼される存在だった。彼の死は誰にとっても意外だった。しかし、事件の詳細を知るにつれ、香織はその死に不審な点が多いことに気付いた。密室での自殺とされているが、何かが違う。香織の直感が、この死には何か隠された真実があることを告げていた。
彼女は情報を整理しながら、カフェ「エトワール」へと足を運んだ。レンガ造りのクラシックな建物で、店内には温かみのある木製の家具が配置され、落ち着いた雰囲気が漂っていた。大きな窓からは柔らかな光が差し込み、木のテーブルに陰影を作り出している。香織の友人であり、同僚でもある藤田涼介がすでに席について待っていた。涼介は30歳、明るく社交的な性格で、香織にとって頼りになる存在だった。
カフェの中では、軽快なジャズが静かに流れていた。音楽が店内に柔らかなリズムを与え、訪れる客の心を落ち着かせている。コーヒーの香りがふわりと漂い、心を落ち着かせる。
香織は席に着くと、涼介に話しかけた。「涼介、昨夜のニュース見た?」
涼介はうなずきながら答えた。「ああ、門司港での事件のことだろ?亡くなったのは山田さんだったんだな。彼は静かな人だったから驚いたよ。」
香織は持ってきた新聞を広げ、事件の記事を指差した。被害者の名前は山田隆二、彼の部屋は港を見下ろす古いマンションの一室で、鍵は内側からかかっており、窓も閉ざされていたと報じられていた。
香織は少し眉をひそめ、「そう、密室での自殺とされているけど、どうも違和感があるの。」
涼介は興味深げに顔を近づけた。「具体的にはどんなところが?」
香織は記事に載った写真を指差した。そこには事件現場の写真と簡単な説明があった。
「例えば、窓が少しだけ開いていたみたい。そして、床にはガラスの破片が散らばっている。普通の自殺現場とは思えない。」
涼介は頷いた。「確かに。そういう細かいところが気になるよな。となると、やはり調査が必要か。」
香織が答えようとしたその時、店員が二人の前に料理を運んできた。
「お待たせしました。こちらが焼きカレーと、こちらが関門タコの唐揚げです。」
香織は微笑みながら答えた。「ありがとう。」
香織と涼介は、門司港の名物料理である焼きカレーと関門タコの唐揚げに目を落とした。焼きカレーは、香ばしいチーズが表面を覆い、オーブンで焼かれたカリッとした食感が魅力だ。関門タコの唐揚げは、ぷりぷりのタコがサクサクの衣で包まれ、口の中で広がる旨味がたまらない。カレーのスパイスが香り立ち、食欲をそそる。
香織は一口食べながら、「これ、本当に美味しいね。こういう時こそ、少しでも美味しいものを食べて元気を出さないと。」
涼介も一口食べて微笑んだ。「そうだな。美味しい料理でエネルギーをつけて、しっかり調査に集中しよう。」
二人は門司港のグルメを楽しみながら、山田の死の謎について話し合った。香織はふと、山田の優しい笑顔を思い出し、胸が痛んだ。彼が抱えていた悩みや恐れに気付けなかったことを後悔する一方で、真実を追求する決意がより強くなった。
「涼介、私たちが見つけた手がかりを元に、もう少し深く掘り下げてみよう。山田さんが抱えていた秘密を探るために。」
涼介は真剣な表情で頷いた。「了解。山田さんの周囲にもっと詳しく調査してみよう。」
ジャズのメロディーが流れるカフェ「エトワール」で、香織と涼介は新たな決意を胸に抱き、再び調査に乗り出すことを誓った。
**作者から**
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