第17話 ステラのうわさ

 ケビンが重傷を負って帰ってきたという話はレインもすぐに知ることになった。それと同時にステラがケビンのパーティを抜けたといううわさも街を駆け巡っていた。話を聞こうにもケビンは部屋に引きこもりロクな話は聞けずステラは1人で行動してるらしくレインはなかなか詳細を掴めない状態が続いていた。


「いったいどうなってるんでしょうね?」


 拠点に来ていたリンとレインは自然とステラの話になった。


「まあケビンが重傷でキャンプ1に運ばれたって時点でその時ステラがいなかったのはほぼ確定。それでケビンがあんな状態なので今後復帰は難しいと思うのでパーティは解散、ステラは新たなパーティを探すでしょうね。」


 レインはステラの行動を予測する。


「重傷でキャンプ1に運び込まれたケビンさんたちを治療したのはステラさんらしいので一緒に行動してなかったのは間違いないですね。その時にステラさんとケビンさんが話をしてステラさんが珍しくかなり怒っていたらしいのでその時に何かあったのかもしれないですね。」


 協会で仕事をするリンの元にはいろんな情報が集まる。冒険者に伝手の多い彼女が軽く聞き込みをするだけでかなりの情報が手に入ったようだ。


「まあ外面はそれなりにいいですけどステラが怒るのはわりと日常茶飯事なので彼女をよく知ってる身としては珍しくもないんですけど気になるのはその内容ですね。ケビンが実力がないのは俺の方だったの一点張りなので何か実力不足を感じる出来事があったはずなんですけどケビンもそれ以上は話そうとしないのでよくわからないんですよね。」


 ケビンからすれば自分からレインを追い出しておいて自分の方が実力がありませんでしたでは話しづらいのはあるのだろうとレインは推測する。


「ケビンさんは話を聞く限り協会の方でもどうしようもないみたいですね。協会としても彼ほどの冒険者がいなくなるのはかなりの痛手なのでどうにか続けてもらえないかアプローチしてるみたいなんですけど帰ってくれの一点張りで諦めざるを得ないのではという話になっているようです。他のパーティの方たちは徐々に復帰してきてるようで勧誘合戦が始まってるとかなんとか。」


 ケビンたちのパーティが実質的な解散になったというニュースはすでにかなり広まっている。ひっそりと戦力外になったレインとは違いこれだけ話題になって行き先が決まってない実力者たちとなれば即戦力として勧誘の嵐になるのは想像に難くない。


「まあ、あいつらは多少デメリットのある尖った性能してますからパーティに合う合わないはあると思いますけど。」


 元々、光った才能はあってもいろいろ難があってパーティから孤立気味だったりと訳ありだったのをレインがスカウトした仲間たちだ。即戦力として期待されて期待通りの活躍ができるかはまた話が別だ。


「その中でも一番人気はやっぱりステラさんみたいですね。ヒーラーはどこも欲しいですし彼女の知名度は断トツですので。それでも彼女は誰とも組まずにソロでダンジョンに潜ってるようですけど。」


 『聖天使』の二つ名を持ち街でトップと言われるヒーラーともなれば大争奪戦は必至だ。その影響もありステラは協会にも近づけない状態が続いているようだ。街にいればどこにいても囲まれてしまうのでダンジョンに逃げ込んでいるのではとレインはステラの思考を推測する。


「レインさんは勧誘しに行かないんですか?そんなすごい人がギルドに加わってくれたら心強いと思うんですけど。」


 今日の無詠唱魔法の練習タスクを終えたマロンが会話に加わる。


「こんなできたばっかりの新生ギルドじゃあステラを勧誘できる材料が無いよ。」


 他のギルドがこういう待遇でとか提案する中でレインからすればステラにどう勧誘しろという状態だ。そもそもステラがいたパーティを戦力外になったレインがステラに声をかけるのはいろいろと矛盾しているようにもレインは思えた。


「案外レインさんが力を貸してほしいと言えばステラさんは来てくれる気もしますけどね。お2人の付き合いは長いんですし。」


 2人のことをよく知っているリンがそんなことを言う。確かにレインから助けを求めればステラは協力してくれる可能性はある。リンが言うように長い間苦楽を共にした2人にはそれくらいの関係値はあるかもしれないとレインにも思えた。しかし、レインにはそんな気にはならなかった。


「俺にはそんな資格無いですよ。ステラはもっと攻略最前線にいるパーティの方が輝くでしょうし。ステラには一番輝ける場所にいて欲しいです。」


 レインが元居たパーティの中でステラだけはどこに行っても活躍できるとレインは思えた。そして、レインはステラからその機会を奪う事が嫌だった。だから、やはり自分がステラを誘うことないだろうなとレインが考えていると突然ギルドのドアが勢いよく開かれた。


「ようやく見つけたわよ、レイン。」


 そこには今まさに話題になっていたステラが立っていた。

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回復するより攻撃魔法を使った方が魔力消費が少ないから攻撃魔法ばかり使っていたサブヒーラーはパーティを追放されました いかづち1 @ikaduchi1

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