深山幽谷に分け入り、想う。

山は古来から 隠世 であり、
人里との間には『禁忌』という名の、
見えない端境がある。

小さき者は無知蒙昧にして無邪気。
好奇心に唆されては、何の躊躇いもなく
実行へと移してしまう。

全てを捨て深山幽谷に分け入った先。
山には 主 がいるという。きっと
畏ろしい者なのだろう。噂ばかりが
人々の口に上り、ただ後悔が胸の内に
去来するが、後悔など何ものにも
ならないだろう。
現実と幻想、探究と逃避。まるで
それを見透かすように。

数々の芳しい草花で創られた獣から
発せられた 一言 が。



この邂逅が齎すものは絶望か諦念か。
けれども翻って想えば、その一言が
彼の望みだったのではないだろうか。


森羅万象に彼も又、宿るのだという。

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