私の奇跡。
恐ろしいほどに鮮やかな白黒の世界
私の奇跡
小さい女の子が「懐かしい」と言いながら、アルバムを持ってくる。
アルバムのはじめのページを開く。そこにはまだ赤ん坊の少女の写真。どんどん捲っていく。子供の頃の写真。アルバムでは写真に加工があるところもあったり、写真の外にイラストや落書きもある。
小中高大学生、社会人の写真。写真に相合い傘が書かれている。
段々と少女だった手が大きくなる。
彼氏との、結婚式の写真。
彼氏の手と共にページをめくる。手と手を絡めるところも。時々、手で喧嘩したり、慰め合う場面もある。指輪をつける。手に邪魔にならないものなら持つ。指切りげんまんまをする。
子供の写真。
二人の手を重ねたところから、小さい小さい手が出てくる。
子供の成長を追う家族の写真。
子供の手が大きくなる。子供は自分の写真にヨレヨレな字を書く。はじめの2つの手は段々と老いて行く。
子供の結婚式の写真。
子供の手は、手を降ってから、結婚相手の手とともに居なくなる。違う人の手と手を絡めるところもある。
二人の写真、時々子供、孫が入ってくる写真。
手が更に老いて行く。
夫の葬式の写真。
しわくちゃの夫の手が名残惜しそうに離れていく。はじめの人も追う素振りを見せる。
老後の写真。
ページを捲るスピードが遅くなる。
………。
アルバムを閉じる。
昔離れた手がそのアルバムを取り、軽くページを捲る。それらは色褪せている。もう動かない彼女の、少女だった手の上に乗せ、アルバムを持たせる。
アルバムに少し色がつく。
私の奇跡。 恐ろしいほどに鮮やかな白黒の世界 @Nyutaro
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