復讐の美味
「反吐が出る!」クラマは雪の地面に唾を吐いた。雪が焼けるような音がした。「おまえは、トラウマを抱えた悲惨なヒーローを気取っているだけだ。何一つ償っていない。おまえは悪夢を見る自分に酔っているだけだ。死んだ人間のために祈ったことはあるか? 本当はただ、殺し屋に戻りたいだけなんだろう?」
クラマはライフルを空に向けて撃った。銃声は夜空に消えた。
「私がするのは復讐だ。簡単に殺すためじゃないし、当たり前だが、更生させるためでもない。いいか、おまえは私のために死ぬ。私の愛する夫を殺したおまえは私のために死ぬんだ。情けない、人でなしの人殺しめ。私に惚れたことを恥じろ。おまえはただの人殺しだ」クラマは銃口をジョーの顔に向け、地面に唾を吐いた。「悔いろ。自分がしてきたことを全身で悔いろ。魂の底から悔いろ。死ぬのはそれからだ」
クラマはライフルを下ろし、ケースにしまった。口の中の噛み煙草をジョーの顔に吐きかけ、新しい噛み煙草を口に含んだ。
「私はこれ以上、おまえを撃たない。助けもしない。死にたいのなら、自分で死ね。おまえがいなくなったところで、このまちの人間は気にもしないだろう。まだ生きていたいなら、自力で生きろ。人生を楽しむな。残りのおまえの人生は償うことだけに注げ。忘れるな。私は常におまえを狙っている。次に私の顔を見たときが最後だ。今度は、今以上に、憎悪を込めて殺してやる」
クラマは唾を吐いた。瞳は潤んでいたが、涙はこぼさなかった。背中で男の情けない鳴き声が聞こえた。
ハスキー・ボイスは夜空に向かって吠えた。その声はオオカミのように乾いていた。
遠くの方でオオカミの声が聞こえた気がした。
時代遅れの一匹狼 京弾 @hagestatham
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