第七話『穴を掘るヤツらは許さんッ! 半ケツの判決大臣の裁きッ!』

【注】本作はセクシャルマイノリティの方への差別の意図はございません。 


 ムキムキでつるっ禿げの五体が、ファッションモデルのような立ち姿をしている。


 生産大臣ツクルと、サディスティック・フォーの四体、スパンキン、ワドザメン、ジラッシ、スンドゥメが『判決の間』に集結した。


 各々、逮捕者を連れている。


 彼らが入ってきた入り口の両脇には、逆さになった、巨大で、光り輝くケツのオブジェ。


 入り口の正面、奥の方には、大きな横長の卓。


 なぜか、卓のすぐ右隣に、『便所』と書かれたドアがある。


\ジャァァァァァァ/ 

 小さく、だが確かな勢いで、流水音。

\ガチャッ、キーィ/

 音の発信源から、一体のウオが出てくる。


 判決大臣オケツ・ガバックだ。


 例に漏れずムキムキの上半身、そして下半身には、七部丈のピッチピチの黒スキニーを履いているが、臀部ケツだけが露出し、半ケツになっている。


 判決大臣オケツ・ガバックは、

卍これはこれはッ! 生産大臣ツクル殿と、その愉快な仲間たちではありませんかッ!卍

 と、丁寧な口調でムキムキの五体を出迎える。


卍ガバック殿、不届き者を、捕えてきたッ! 裁いてくれッ!卍

 風呂敷を背負った生産大臣ツクルが、捕らえた二人の男を前に押し出す。

 サディスティック・フォーたちも、同じようにする。


 判決大臣オケツ・ガバックの眼前に突き出されたのは、

 スパンキンとワドザメンが連れてきた、『穴場』の半裸男三人。

 ジラッシとスンドゥメが連れてきた、手の汚れていない、農業従事者三人。

 生産大臣ツクルが連れてきた、性玩具販売店の店主と客の二人。

 計、八人。


 判決大臣オケツ・ガバックは、逮捕者の前をねり歩き、

卍大収穫ですなッ。さて、どいつから裁きましょうかねッ卍

 と、品定めをする。


 そこで生産大臣ツクルは、

卍こいつは、洞穴の中で性玩具の販売店を営んでいたッ。隣にいるのは客ッ。性玩具を買おうとしているところを捕らえたッ。比較的罪の軽そうなこいつらからで、どうだろうかッ卍

 と、提案する。


 店主と客は、小さく丸くなって、怯えている。


卍ほぉ、性玩具の売買ッ。いいでしょうッ! では判決を下しますッ!卍


 判決大臣オケツ・ガバックは、つま先立ちになり、バレリーナのように、ちょこまかとその場で高速ステップを踏みだし、ゆっくりと回転する。顔だけをこちらに向けながら、後ろを振り向く体勢になると、回転を止める。そしてケツを突き出す。強調されたプリプリの半ケツには、向かって左の片割れに『有罪』、右に『無罪』と文字が書かれている。筋肉を使って、左右の半ケツが、器用に、交互に、心臓の鼓動のようにピクピクと動かされる。有罪、無罪の文字が、交互に上下する。


 判決大臣オケツ・ガバックは、そのムキムキの姿に似合わない、プリティな声で、

卍有罪♪ 無罪♪ 有罪♪ 無罪♪ 有罪♪ 無罪♪ 有罪♪ 無罪……卍

 と、音頭を取る。


 今、『無罪』の文字が上に来ているが……

 

 プリっと、『有罪』の文字が再度浮上する。


卍両者、まごうことなき有罪ッ! 切腹あるいは打ち首に処するッ! 二者択一は、執行大臣シコールに、コイントスでもして決めてもらうんだなッ!卍


「なにゆえ、性玩具ごときで死刑にぃ!?」

 抗議する店主。

「俺たち、まだ働けますぅ!」

 命乞いする客。


 が、判決大臣オケツ・ガバックは、前に向き直り、容赦なくこう言い放つ。

卍性玩具にかまけて、セックスの重要性を忘れる愚かな人間が続出していますからねぇッ! の芽は早いうちに取りますッ! 連れておゆきぃッ!卍


卍了解したッ。あとこれはッ、証拠の押収品だッ。こっちで処分しておくッ卍

 生産大臣ツクルが、背負っていた唐草模様の風呂敷を床に広げると、大量の性玩具がジャラジャラと出てきた。


卍ふーむッ、物凄い量ですねッ。が、ツクル殿ッ、それには及ばないッ。手を煩わせるのも申し訳ないッ。こっちで処分しておくッ!卍

卍了解したッ……卍


 生産大臣ツクルは、風呂敷を広げたまま、二人の男を連れて判決の間を出ていく。

 彼の黒いグローブには、奇妙な膨らみがあった。

 

卍では次ぃッ、行きましょうッ!卍

 

 判決大臣の呼びかけに対し、


 今度はワドザメンが、半裸の男三人を突き出す。


卍ガバック様、三人は男性間性交渉者ですッ。どうかこやつらに、最大限の苦しみを与えてくださいッ!卍


「エッッッッ! ワドザメン様、エデンで乱行パーティのどさくさに紛れて男同士でやれば良いと、ご助言くだすったじゃないですか!」

「そうです! 理解者だと思ったのに!」

「やっぱりウオは極悪だ! 証拠もないのに!」


卍ほうらッ、早速ボロが出たッ! 証拠を示すまでもなく、こいつらッ、やる気マンマンでしょうッ? 本当阿呆なんですこいつらッ。そんなことすれば、その場で死刑だからなッ!卍

 検事ワドザメンは、半裸男たちの愚かさを説く。


卍事情はよぉくわかりましたッ! では……同性性交渉には、我が半ケツ判決を使うまでもありませんッ! 全員を、エキセントリックチェア、三角木馬、お尻ペンペンのいずれかに処すッ! シコールにサイコロでも振ってもらいなさいッ!卍

 判決大臣オケツ・ガバックは、半ケツを出すまでもなく、迷いなく宣告した。


 すると、半裸男らのうち、色白の男が、

「ひぇぇぇっ! どれも嫌ですっ! でも待てよ、お尻ペンペンはラクそうでは?」

 と、余計な発言をしてしまう。


卍おい白いのッ! さっき、ある程度スパンキングはしておいたがッ、まだ足らんかッ!卍

 と、スパンキンが、色白男の首根っこを掴む。


卍そうですかッ。ではッ、お尻ペンペンが最もキッツいと知らない愚かな男には、ぜひそうしてやりなさいッ!卍

 ありがたくも、詳細な判決が下る。


 お尻ペンペンとは、お尻番の鞭打ちの刑である。

 『鞭打ち』は、そうヤワなお仕置きではない。


卍ガバック様ッ、承知いたしましたッ!卍

 ワドザメンはそう言って、スパンキンはと共に、三人の半裸男たちを連れて判決の間を出ていった。


卍ではッ、残るはその農奴どもですねッ! ジラッシ、どんな疑いがッ?卍


卍この中にッ、生産点数の最低ライン、一九〇七二一点を下回っている者がいると聞いていますッ! 何でも、これまで管理者を買収して点数を誤魔化していたそうでしてッ。買収されたという管理者は処分済ですッ!卍


卍そうですかッ、ご苦労様ですッ。で、どの農奴がッ? ドノノウド、ノドがつっかえるほど言いづらいッ!卍


卍おいッ、貴様らッ! 数字をちょろまかしたのは誰だッ?卍


「「「こいつです!!!」」」

 三人の農業従事者は、三者三様に、他人に向かって指差した。


卍えーッ、長引きそうで面倒なのでッ……卍

 判決大臣オケツ・ガバックは、半身になって、片手間で、左ケツの『有罪』の文字を示し、

卍はいッ全員有罪ッ!卍

 と、軽々しく宣告した。


 農業従事者の一人は、

「おいこのプリケツっ! 怪しかったら全員有罪か? 司法を統括しておきながら、推定無罪の概念も知らないのかッ!」

 と、異議を唱えるが、


卍『疑わしきは罰せ』、それがウオランドの刑法の基礎の基礎ですからねッ!卍

 と、判決大臣オケツ・ガバックは一蹴した。


「くそー! こんなことになるなら真面目に働いておくんだった!」

「あァー! もっとセックスしたい人生だった!」

「働いたら負けじゃなかったのかよ! 働かなかったら有罪かよ! ってあれ、刑罰の詳細は?」


 農業従事者の一人が尋ねると、


卍あ、ちょっとトイレへッ!卍

 と、判決大臣オケツ・ガバックは、前触れもなく、トイレへ駆け込む。


♪〜音姫サウンド〜♪


 一分後、すぐに、

\ジャァァァァァァ/ 

 水の流れる音がして、

\ガチャッ、キーィ/

 と、ムキムキピチピチ黒スキニーの半ケツがドアから現れる。


卍やはりナイルの精製水のウォシュレットは格別ですッ! じゃッ、農奴どもはキュプロス島に島流しでッ! ジラッシ、スンドゥメ、三途川さんずがわの管理者に引き渡しておいてくださいッ! あッ、三途川のサメに気をつけてくださいねッ!卍


 判決大臣は、トイレの水を流すほどに軽々しく、三人に島流しを宣告した。


〈第八話『エッ、そこ急所なんッ? 執行大臣シコールの苦悩ッ!』に続く〉

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アルティメット・オルガニズム〜究極生命体ウオ〜 加賀倉 創作 @sousakukagakura

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