なんちゃって500字ミステリー~靴~

豆腐数

遺留品には事件の匂い?

「やや! この小さな落とし物からは事件の予感しかしないよ真里ちゃん」


 いつもの探偵帽にパイプ(学生なので火はつけていない)、インバネスコートの新吾が、歩道に落ちていた靴を拾い上げる。今日も私の眼鏡の度はピッタリ合っていて、イカレ探偵幼なじみをしっかり見る事が可能である。


 そのかたっぽだけの靴は、足の小さいシンデレラでも履くのが無理だろうな、ってくらい小さい、アンパンヒーローの絵柄のマジックテープ式のものだった。


「デザインも大きさも、コレは3歳くらいの子供の持ち物だろうね! しかし何故こんなところに、一個だけ取り残されているのか!? 神隠し、蒸発、天気占い後のゴミ? いや、誘拐かもしれない!!」

「ちょっと」


 せっかくお散歩日和のいい天気なのに、事件大好き不謹慎探偵が不穏なフラグを立てる。


「なんてね、今日はそんな深刻な事件の匂いはしないさ。子供が親と遊びに行くにはちょうどいい天気、少し考えたらわかる事さ」


 得意げにポーズを張る新吾の後ろ、小さな子供を抱えた男性が走って来る。


 お父さんの腕の中の男の子は、新吾の持っているアンパンヒーローの靴を片っぽだけ履いて、失くしものにそもそも気づいてない顔でキャッキャと笑っていた。

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