第9話 ~居酒屋探偵サムライ・罪と罰と注文の多い料理店~
「サムライ君はドフトエフスキーの罪と罰は読了済かな?」
「ええ。まだ軍属だった頃、国家間の移動の際に。なんか主人公の名前がラスコーニコルフなのかグスコーブドリなのか最近は混じってますけど」
しかし、ラスコーニコルフは農業被害を食い止める為に命を賭けたりはすまい。
ロシアの話にイーハトーブは無関係だ。
「普く全ての加害者は結局のところ、人殺しと同義であるとは君は思わないかい?」
「全ての罪には罰がセットで刑法には記載されてますけど…?」
「例えばの話。万引きをした人間は万引きをしただけだという感覚だろうけど、その被害者は万引き分の差額を被害額として計上出来るわけだね。その差額を取り戻す為に頑張らなくちゃならないわけだが、それは本来不要な筈の時間なんだ。つまり万引き犯は被害者の時間を奪う事で本来進むべきレールの上から落としている事と同じという事になる」
「加害者とは被害者から奪う者の事ですからねえ…」
何をって、時間だろう。
正常に進むべき時間を奪う。
その被害は金額に直せば途方もない。
だから、悪い事は出来ないし。
だから、ズルをして生きてはならない。
自分の未熟さを他人に預けて生きてはならない。
全て、そのツケは自身に返って来る。
「次はパワハラだ。新人に意地悪をしている先輩社員のせいで新人社員が自殺をすればそれはパワハラではなく自殺教唆で自殺幇助である。少なくとも自殺に誘導した罪は確定だ。それ以外にも仕事に嫌気が差して退職に追い込んだとしてもだ、本来は其処で働いて給金を得て暮らしていくというレールを歩ませなかった事になる。これもまた、不要な時間を歩ませる事となるね。生産的で経済的な時間を奪うんだから普通に営業妨害だ」
「ふーむ…」
「そして君が経験したようなその後の人生を変えてしまうような大人数でのイジメは最早だ。君の場合を例に挙げてしまうがレールから落ちたなんて話じゃない。自殺にまで至る精神の衰弱は確実に本来ならば歩まなくて良い時間だ。そして君の場合、複雑性PTSDという病を発症しているだろ。その闘病生活は与えられたものだ。与えられたというか埋め込まれたというかだね。ドアノブさえ回せなくなるほどの気力低下に人格の豹変、そして自律神経の異常。加害者は君から健やかな時間を奪った。君を手酷く裏切った元・恋人さんも同じだね」
「あれ?でもそうなると普く全ての加害者は泥棒という事になりませんか?署長が仰る事は行き着いて時間泥棒という概念になるわけじゃないですか。人殺しと同義なんですかね?」
「同じだ。其処に議論を挟む余地は無い。全ての加害者はね?被害者の御家族を殺す。商品を奪われた店舗経営者は生活レベルが落ちる。パワハラで仕事を奪われれば家族間の不仲を招く。イジメで病気になれば御家族の負担は途方もない物となる。命を殺すんじゃない。加害者とは被害者の家族関係を殺す。まあ友人関係とか恋人関係とかでも良い。関係性攻撃という意味で、他者への攻撃は全てが殺人なんだ」
「まあ、確かに俺の家は悲惨な状況になりましたけど」
「だから意識的に個人と敵対出来る人間ってのは怖いよねえ?」
「そうでしょうか?無意識的に誰かと敵対してしまうような人間の方が怖くないですか?」
「そりゃ単に価値観の相違が原因だ。私が言ってるのはそういう事じゃない。他人に対して簡単に宣戦布告をするような人間が増えてみなさい。警察の仕事が百倍忙しくなるんだよ?」
「形而下で知らず誰かと敵対してしまうのは俺がそうですけど…」
署長は「そりゃ君が優秀だからだ」と笑ってビールを飲んだ。確かに大学時代のイジメで狂ったワケだがそのイジメ自体は決して悪くない気分だった。それは等号で私が優れている人間であるとの証明だからである。
だからと感謝する気は無いが。
「そして全ての加害者は人殺しと同義だの言葉にはまた別の意味がある。意識的に敵対する事を選んだ人間というのはまるで敵視した人間との戦争状態を楽しむような独特の空気間に酔うものなんだ。これはイジメとパワハラだけじゃない。最近じゃスポーツ界で権力者の告発に一般人が便乗するなんてのが多いだろ?それはその空気に酔っているからだ。中途半端な正義感に由り産まれる我こそが正義であるとの付け焼刃の正義がその空気を生み出す。その告発に一般人が介入出来る余地は本来ならば無い筈なのにね?その付け焼刃の刀を振り回したがる。それは何故か?告発された権力者が、人殺し扱いをされているからだとは思わないかい?」
「成程…。事件に小さい大きいも無いのと同じで、大衆心理として悪の告発は悪そのものの大きさや重量を誤認してしまうというワケですか。お金が欲しいだけの小悪党を確かに国家反逆罪でもやったかのような犯人扱いですもんね」
「反省も後悔も意味は無い。けれど更生するなら意味はあるし価値がある。だから刑務所という施設が存在するのだし刑務官という職業が必要なんだ。法律とは悪を裁くのではなく悪を正す為に機能するものなのだからね」
「でも告発された悪は更生しない。だからこそ大衆心理は悪を倒す為に動こうとするでしょ」
「それが最終的な着地点だ。『全ての加害者は自分を殺す』んだ。自殺行為ではない。自滅するんだよ加害者というのは。だから他人を傷付けてはならない。自己肯定を果たす為だけに誰かを傷付けるなんてのは最も愚かな行為だと知らなくてはならない。無論、スポーツ界の悪は告発されるべくして告発されたのだとは思うが」
「しかし更生こそに価値があるというのはそれこそ罪と罰じゃないですか?偶然老婆の話を耳にする事で殺人を思い留まるかを悩んだわけですし」
「だからドフトさんは世の真理を見事に表現したのだろう。全ての罪には罰が在り、全ての罪は結局己を殺す殺人罪なんだよ。君だって大学時代のイジメが原因で人生が狂っているわけだ。その後の人生に多大な損失を与えられている。まあ、君の場合は損失以上に活躍をしたんだけどね。君を殺した人間はね、既に社会的に死んでいて然るべきだ」
「俺、全然損失分は取り戻せていませんけどね…」
「さて。そんな警察署長からの説教は此処までだ。本日の酒は何が頂けるのかな?」
「高知出身の署長さんの為にと栗焼酎を用意する筈だったんですが、用意してた分を機動隊の連中が全部飲み干しちゃったんで…。本日は仙台伊達家御用蔵の勝山を。中でもこれは『元 RUBY LABEL』と言いまして、驚くなかれ、一本三万円です。栗焼酎を護る事が出来なかったお詫びとしてはなんですが」
機動隊に探偵が勝てる道理無し。
これ署長の分だからって言っても連中は聴きやしねえんだ。
「そんな高い酒をかい?いやあ、困っちゃうなあ…」
「普通は手に入らない酒なんですけど…。伊達家のオジちゃんに頼んでなんとか一本だけ。俺も飲んだ事のない酒です。如何か味わってください」
「そっか。君、タヌキの子孫なんだっけね…」
「だからサムライと呼ばれてますんで…」
伊達のオジちゃん、ムチャクチャ困ってた声で電話応対してくれたのだが、それ以上に私の声が困ってたので何とか頼みを聞いてくれたのであった。私はこうして日本中の大名の子孫に迷惑をかけて日本中の銘酒を強引に手に入れている。
別に良いのだ。
刀狩りやったの、羽柴さんだし。
んじゃ松平の子孫が酒狩りぐらい、やっても良いのだ。
「ふむ…。メロンに近いのかな…?風味が果物そのままだ。口当たりも優しいね。これならどんな料理にも合うだろう。日本酒が苦手な女性にも喜ばれるかも知れないね」
「なので今日は手間のかかる料理をご用意させて頂いています。まずは茶碗蒸しを。こちらは銀杏と三つ葉と椎茸も沢山使っているんですが、それ以上にホタテを大量に使っています。濃厚な海鮮の旨味をお楽しみ下さい」
これもまた、伊達家のオジちゃんから送られて来たものだった。
別に良いのだ。
刀狩りやったの、羽柴さんだし。
んじゃ松平の子孫がホタテ狩りぐらい、やっても良いのだ。
「凄いね…。割いた貝柱じゃなく一個丸ごと入ってる茶碗蒸しなんか初めてだよ…?」
「ええ。なんせ四十個も送って寄越しましたので。網焼きは勿論、刺身も後でお出しします。三陸産の魚介は世界を狙えますからね。震災を経て徐々にではありますが以前の姿を取り戻している太平洋側の方々を支援する意味でも、当探偵事務所は三陸産の魚介をゴリ押ししようかなと思いまして」
「でも高いだろ三陸産は…?」
「其処はホラ、伊達のオジちゃんが送ってくれるんで」
「それ、恐喝だよ…?」
「失礼ですね。俺はちょっと三陸産の魚介が欲しいな~?と独り言を言ってるだけです」
別にさんさん商店街行ってこいやオラァ!とは言ってない。
優しいオジちゃんは独り言を呟くだけで何でもくれる。
成程。
確かに、私はクソダヌキの子孫だった。
「伊達家以外とは何処の大名家と仲が良いのさ?サムライ君と仲が良いって事は、サムライ君が無理難題を吹っかけているという事になるんだろうけどさ…」
「それも失礼ですね。武田家の子孫で俺の一個上に女性の先輩が居るんですけど、すっげえ可愛くて声を掛けたくてもかけられないって感じの先輩でしたね。まあ、俺がこんなキャラなんで先輩は絶対俺の事嫌ってたと思いますが」
「サムライ君って学年に必ず一人はいる不真面目でヤル気が無いけど身体も頭も利く子って感じだもんなあ。テストの成績以外のところで結果を残してただろ君は…」
「そうですかね?割と真面目に悪ふざけをやってましたが?」
遊び半分なのと遊び心を持つのは違う。未熟な内はそれを混同してしまう事もあるが、その二つは位相がまるで違う事を多くの人間が知らない。
真面目に遊んで、遊び心を持って働く。
それが豊かな社会人の生き方ってモンだ。
真面目に遊ばないと薬だの不倫だのが近寄って来るもんだし。
遊び心を持って働かないと成長しないのは勿論、何より続かないのだから。
「武田家の他には誰が友達なのかな?」
「武田の先輩は友達じゃなくて憧れの綺麗な先輩ってだけですが。そうですね。親戚って事で島津家とは仲が良いかと。いや、其処等に親戚だらけなのが松平家ではありますが」
「だから高級な芋焼酎や泡盛が棚に並んでいるんだね…。しかし、大名の子孫ともなれば色々苦労も多そうだが…?」
「俺は傍系なんで気楽なもんです。武家としての俺ん家はバーちゃんの兄貴が潜水艦と一緒にインドネシア沖に沈んだ事で没落してますから」
そう、没落してるからこそ気楽にやれるというのもある。受け継いだものを残すなんてのは性根が根無し草である私には無理な話なわけだが。世の中、何かを手に入れるよりも何かを残す方がずっと難しい。それが歴史あるものならば尚更だ。だからこそ旧家の人間は振る舞いを気を付けろと口を酸っぱくして子供に言い聞かせるものなんだが。
「気楽じゃない旧家の人間は大変な筈なんだけどね。その辺、あまり重要視しない親御さんというのも今の時代じゃ増えているってもんさ。苛めっ子がそうだ。結局は甘やかされて育った子供だろう?」
「そうっすねえ…」
これもまた犯罪心理学でよく言われる事だ。蝶よ花よと育った子供は大人になってから重大な罪を犯し易い。その重大な罪とは、まあ殺人の事なんだが。
気に入らないから排除する。
その考えは情緒の育たない人間にのみ産まれる。
畸形の感性。
これを犯罪者的思考の持ち主。
もしくは、サイコパスと呼ぶのだが。
今のこの時代、サイコパスは別に珍しくも何ともないのだ。それどころか、サイコパスであるのがスマートに生きる方法であると勘違いをしている若者まで現れている始末。理不尽を通した人間が強いのだと、本気で考える人間が普通に存在する現代。
大丈夫か、この国は。
「金持ちのボンボンはこういう酒を飲む事をステイタスだと勘違いをする。本当にスタイリッシュな酒の飲み方とは各郷土の酒に通じる事だと知らず、値が張れば美味いのだと未熟な考えの下に他者を見下す。バブル期のようにね。消費がステイタスであると擦り込まれている」
「バブルの亡霊って事か…」
一個一万円のアワビのソテーより、一個八十円のコンビニのオデンの大根が有難い。なんでって、普段飲んでる酒と喧嘩しないからだ。大きめの容器はそのままハーブを育てるプランターにリサイクル出来る。事実、オデンプラントでしそ科のハーブはスクスクと育っているわけだし。
特に赤紫蘇とバジルは気を付けないと群生し捲るので、オデンプランターが一番だ。
混んで来たら鉢植えに移植すれば良いだけである。
「見下したいんだよ。自分より上がいると認めたくない。しかし今のこの世の中、能力がそのまま給金だ。四ヶ国語を理解し、様々な銃火器に精通し、医療知識と医療技術を持ち、何より人間の本質を見抜く眼を持つ君はそれだけの給金なわけだろ?」
「いえ。俺、基本給二十万二千円ですよ?手取りは十六万ちょっとですし…」
それでもNPO職員にしては貰っている方らしい。
そもそも給与計算は大卒の山形県警職員が貰う基本給をベースにされているので、私のお給料は大卒のお巡りさんと全くの同じだ。まあお給料以外にも探偵としての依頼料も頂けるわけではあるのだが、ウチは浮気調査などが出来ない探偵事務所だ。扱う事件の大半が知能犯に対する案件である。なので、ちょっと小銭が欲しい時は友人の農作業を手伝う探偵なのだった。公務員はアルバイト禁止なのだが、私は公務員じゃなく団体職員なので問題は無かろう。団体というか私以外の職員はメスの狼犬が一匹だけなんだがね。
「君、お金持ちってイメージだったんだけどなあ…」
「いえ、銃と犬とゲームが好きなだけの貧しい田舎者です。本来、探偵業は歩合制なんでしょうけど。ウチは警察機構の補助機関ですからね。多分、俺よりハナコの方が貯金在りますもん。ウチの稼ぎ頭ですので」
愛犬より金の無い所長で申し訳ないのだが。
しかし、ハナコがお金持ちなのはそれだけハナコが働き者だという事だ。
「警察も最低賃金を保障し、それ以上は歩合制にするべきなんだがねえ…」
「それだとノルマ達成の為に冤罪が出ますし、小学生にすら職質するような警察官が増える事になりますが?違法改造車を見逃し軽トラに職務質問した方が安全だし安心だとするようなビビりが増えますよ?反撃しない相手だけに職質をする警察官が増える事になります」
「どうしても職務質問が歩合の判断材料になるからなあ…」
「その究極が犯人に懸賞金をかけるって事なんでしょうけどね」
日本の賞金首はその首の値が安過ぎるとして市民の誰もが命懸けで警察に協力するぐらいならば自らの生命を護ろうと動かない。それが一億を超すような値であるならば凶悪犯は何処にも行けないようになる筈なのだが、それが出来ない。そういう治安維持をしているのはドバイなどのお金持ちの国だけ。国民全てを賞金稼ぎにしてしまうような途方もない金額を犯罪者に与えるだけで悪党を牽制する為の一手としてはこれ以上ない程に効果的だ。膨れ上がった警察機構の維持の為に必要な年間予算を比較すれば、モラル的な問題はさておき、その方が安上がりなのだし。
まあ、警察機構のスリム化は警備会社の肥大化に繋がるので。
それもまた、様々な問題が産まれる原因となるってもんなのだが。
事実、とある国の警備会社では社員の大半が退役軍人だったなんて実例も在る。
「誰もがコツコツ稼ぐからこそ誰もが苦労人だ。だから人は人の邪魔をしてはならない。人は人の痛みに敏感でなければならない。間違っても他人の足を引っ張ってはならない。しかし、ボンボンだけは違う」
「成程。随分と回りくどい話でしたが、今回の案件は旧家の人間が加害者であるという事件になるわけですね?誘導の巧さは流石警察署長だという他無いですが」
「今度はサムライ君が失礼だね。警察官にとって誘導は禁じ手だよ?だが、その通りだ。『末期の眼』を持つ君に隠し事は通用しないから率直に話してしまうが、今回の案件は金持ちのボンボンが犯人であるというケースになる。まあ、珍しくも何ともない話ではあるし割と加害者が恵まれた環境下で育った人間であるというのは我々法執行機関に属する人間にすれば『当たり前』なのだしね」
「甘やかされて育った人間は他者に対する攻撃性が高くなり、また我慢を知らないから社会に出てからもワガママを貫こうとする為に有害であるとする、犯罪心理学の応用編でしたか?世の中に自分を合わせるのではなく、自分に世の中を合わせようとするからだとか何とか」
「その通りだ。虐待的なまでに厳しい家庭、つまりは君のような環境下で育った人間はそれはそれで有害以上に危険視されるものなんだが、それは一旦措いておこう。事件の全容は若くして助教授になったという期待される先生が講堂での講演中、急に照明が落ちて来たというものだ。幸いにも転んだ際に軽く手首を捻るだけのけがで済んだのだが。しかも設備屋さんの話では人為的な細工の跡があったらしい。その容疑者である大学職員もまた、社長の息子とかいう甘やかされて育ったんだろうなと思うような人間だったよ」
「大学講堂での講演中に照明を落とした?それ、完全に殺人未遂罪なんじゃ?」
「だから問題になっている。しかも計画殺人だ。しかし、計画殺人であるという証拠が細工の痕跡しかない。少なくとも誰が共犯者なのかを特定出来なければ、立件は不可能だ」
割と簡単な事件なので安心した。
末期の眼にチャンネルを切り替える。
自殺で得た、この観の眼に。
チャンネルを切り替える。
「うーんと、『注文の多い料理店』が何で書かれたのかって、著者も同じように計画殺人の未遂罪被害者だからなんですけど。もしかして大学側が日時を指定してましたか?それと講演する際の立ち位置とか、講演開始時刻とかを打ち合わせ無しにです。本来の壇上よりずっと前、それこそ照明の真下辺りにマイクが設置されてたんでしょう?」
「ふむ。流石、サムライ君だ。その通りさ」
「なら計画殺人だ。大学そのものが共犯者だ。事故を装った計画殺人なんてのは結局ドッキリの延長ですからね。事前の仕込みには大学の協力が無ければ出来ないでしょうし、先生に講演依頼を出すのだって事務局の協力が無ければ出来ません。なんで、『共犯者はその講演を企画した人間』で間違いないです。その犯人達は、若くして助教授になった先生に嫉妬していたと考えて良いですね。被害者に打ち合わせの有無を問えば事件はすぐさま解決します。注文の多い料理店は結局誰かを殺す為の注文という事なんですし。こんなのは情緒が育っていない子供の犯行だ。末期の眼を使うまでもない。十秒で解決出来る」
署長は目ん玉を飛び出させて驚いた。
仕事の速さが信条なので嬉しくはあったのだが、普通に怖かった。
「…あの、飛び出た目ん玉を閉まってくれませんか…?怖いんで…」
「これがサムライ君の実力ってわけかい…」
「暗殺の方法としては三流以下ですけどね。世の中の加害者は子供のような理由で罪を犯す。確かに全ての加害者が署長の言うように人殺しであったとしても結局は殺しの素人でしかない。俺なら一キロ先からチェイ・タックで狙撃する」
「それ、絶対止めなさいね?もう君は特殊部隊じゃないんだから…」
結局はワガママを通そうとしたって事だ。
世の中は誰かを中心に動いていない。
それでも中心になりたいなら。
なれるだけの能力を身に着ける努力をしろってだけだ。
借り物の力で偉そうにしてんじゃねえってだけだ。
「まずは自分の力だけで生きてみろよって話です。誰かに嫉妬すんのも誰かを攻撃すんのも。そっからだ」
「随分と突き放すけど、何かそんな未熟な加害者に言いたい事は無いのかい?」
私がそんなしょうもない加害者に言いたい事は唯一つ。
それは常に私が家族から言われていた、未だに続く呪いの如き言葉でもあった。
その言葉とは_。
居酒屋探偵・サムライ 居石入魚 @oliishi-ilio
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。居酒屋探偵・サムライ の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます