旅ウサギクウちゃん、東海道をゆく その3

 クウちゃんは、大好きなおやつがどこに在るのか知っています。

 ゲージの上のお皿の中に、お父さんは、今日あげる分を取り置いています。

 それを何かにつけ、少しづつ、クウちゃんにあげるのでした。

 なので時々、クウはそのお皿を、羨望のまなざしで見上げています。


「ああ、神様。おやつが、あのお皿ごと、クウちゃんの元にもたらされますように。どうかどうか、あのお皿ごとで、お願いします」

 両手をそろえて、クウちゃんは立ち上がって祈ります。

 キラキラしたおめめ。見上げるその先には、神の姿が見えるのでしょうか。

 恐らくお皿には、パッカーンっと後光が差していることでしょう。


 さて、伊勢神宮の続きです。

 次の日、クウちゃんはコテージにお留守番。申し訳ないもので、いつもより、おやつ多めでお出かけです。

 早朝7時、朝ごはんも食べずに、お父さんとお母さんは出発しました。

 本当は、外宮から参拝するのが習わしだそうですが、正しい観光客として、本当に観光のように、内宮へまっしぐら。何という不敬。


 おかげ横丁は、宿場町のような風情で、銀行、郵便局、スターバックスまで江戸時代の建物のようです。朝早かったので、どこも開いていませんが、一軒だけ開いている所がありました。

 それは、赤福本店。

 なんと参拝者の為に、朝5時から開いているらしいです。赤福2個とほうじ茶がついて280円という有難さ。

 赤福。食べたことはあるでしょうか?柔らか~いお餅に、こしあんが載っている実にシンプルな和菓子。二本の指跡が、美しいデザインになって、やさしさを添えています。

 これをですね、神の川、五十鈴川を眺めながら食べれるのですよ。

 上品なお味。

 ほうじ茶が絶妙です。

 これは、緑茶でもない、抹茶でもない、ほうじ茶なんですよ。奥さん!

めっちゃ合います!

 江戸の人も見たのでしょうか。この風景を。

 長旅の疲れをいやすように、この場に座り、赤福を食べ。と、悠久に思いを馳せます。


 では、さて、いざお参りに。

 立派な鳥居の先には宇治橋が掛けられています。

 五十鈴川をわたるこの橋は、神聖な世界への架け橋。そこを渡ってから五十鈴川で手を洗い、身を清めます。

 明るく整った日本庭園を通り、そこをぬけた瞬間、瞬間ですよ、空気が変わるのです。時間が止っているような、澄み切った気に満ちているような。

 その空気が肺を満たすからでしょうか。体も又、澄んでいくのがゆくのが分かります。

 いよいよご神体の祀られるお社の階段まで到着。この階段から先は撮影禁止となっております。

 豪華絢爛さとは真逆の、全てそぎ落としたような質素とも見えるお社が、なおのことその権威を際立たせています。

 この後も、お参りの手順があるようですが、すべて端折って、このまま失礼いたしました。

 帰りには、お店が開きだして、かわいい陶器やお土産物屋さんが、目にも楽しく、ショッピングを楽しみました。

 香りのお店で、お地蔵様のお香立てと、一番気に入った、桂川というお香を購入し、大満足。素晴らしい香り。これぞ京都。神の後に来る雅。気持ちは十二単。


 この澄み渡った心身が、この後、炭火にいぶされるんですよね。

 いやはや、諸行無常。

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ウサギのクウの日常日記 桃福 もも @momochoba

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