第33話 ただ斬るのみ

 外はまだチリチリと肌を焼く熱さが残る。分身の影は消え、迷葬魂セラフ・ゴーストも熱線にやられてしばらくは出てこないだろう。



 二つの脅威が消え、残った圧倒的脅威と対峙する。



 白銀の竜は静かにこちらを見つめている。緋色の眼光からは突き刺すような視線を放ち、一歩でも動けばたちまち喰われてしまいそうだ。


 人間の10倍以上の体躯を持つ竜を相手取るのは、果たして不滅のゴーストや1000を超える仮面の男たちと戦うよりも得策だったと言えるのだろうか。



 その答えは、これからわかる。



 アリサは俺を構えると、竜が動き出すより早く踏み出す。あの火力のブレスはしばらく放てないだろう、再度魔力障壁を展開しても持ちこたえられるかわからない。故に迅速に一撃で仕留める、というアリサの意思が握った柄から伝わってくる。


 瞬く間に竜の足元まで接近したアリサは、神速の一撃を繰り出す。



「『白閃』!」



 一瞬の斬撃に合わせ白い閃光が飛び散る。そして、鱗と一緒に緑の血液らしきものが噴き出す。


 竜の足は確かに斬れた。だが、分厚い皮膚の表面だけだ。剣は深くまで届かず、機能するには十分すぎるほどの傷をつけたにとどまった。


 竜は足元に這いよってきたアリサを睨む。アリサは素早く状況を分析し、次の一手のため俺を鞘に納める。



「――『牙天がてんの太刀』!」



 先ほどよりも大振りで広範囲に、竜の前足を切断するように剣を振るう。



「グオオオオオオオオオ!」



 目論見通り、竜の足はその身から離れる。悲痛の叫びとともに大量の緑の液体が切断面からあふれ出している。


 痛みからか竜は前足を上にあげる。そして、そのまま踏み下ろす。



「……マジですか」



 竜の足は完治していた。そっくり同じ足が生えており、元の通りに動いている。


 この巨体で再生能力まで持ってるのか!



「アリサ、頭を狙うんじゃ!」



 ステラシアの声に反応し、アリサは生えてきた足を伝って竜の上部に移動しようとする。


 が、竜は足を大きく払い、アリサを退ける。



「登るのは難しそうですね」

「遠距離での攻撃はダメなのか。さっきみたいなやつとか」

「当てられはするんですが、いかんせん威力が弱いので再生されておしまいですね」

「じゃあどうするのじゃ。これじゃあ逃げ出すにも逃げ出せんぞ」

「一つ、考えがあります」

「……なんじゃ」



 クラムとステラシアは顔を近づける。アリサが提示したのは、いたってシンプルな作戦だった。



「飛行魔術を使います」


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聖剣俺、剣が好き過ぎる激ヤバ女に抜かれてしまった件 仁香荷カニ @zarigani-333

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