第4話 自己紹介

20代の若くてしっかりした後輩、30歳の私、30代後半の落ち着いた彼女……倫子さんの三人が揃った。

いまいち、可愛らしさや浮ついた感じにはならなかったが仕方ない。



高野が予約した居酒屋に行く。

おしゃれすぎず、安っぽすぎず、入りやすいお店だった。


お相手は、大手企業の営業。

高野は、ガタイのいい兄貴感のある男だった。

もう一人は、メガネの細身。

三人目は、ややぽっちゃりの優しい感じだった。


あちらはあちらで、キャラが被らないように組んでいる。



そこそこに挨拶をして、お酒を頼む。

料理はコースだ。


「じゃあ、今日はよろしくお願いします」


と、高野が言って、乾杯した。



由香里は緊張していた。

仕事でお客さんと話すのとは違う。

盛り上がる話とか、しなくちゃいけないんだろうけど、何を話していいかわからない。


別れた彼氏は、学生時代からの付き合いだったから話には困らなかったのだ。


と、心配していたが、さすが営業、そして倫子がうまく話を始めてくれた。



「俺が30歳で、彼が28歳」


高野が、メガネの彼を紹介した。


「年収は◯◯◯万円です」


勝手に人の年収バラしたよ!

メガネ君はケロッとしている。

きっと、合コンではいつもネタになっているのだろう。

年収で選んでほしくない……とか、思わないんだろうか。

そんな純愛?はやっぱり少女漫画の世界か……。



「あと、こちらの先生は34歳。とにかく優しいよ」


と、ぽっちゃりな彼を紹介した。

たしかにずっと菩薩のように穏やかな表情だ。



こちらも自己紹介をする。

私の後輩、私の同僚。

私の話術では、もうその程度しか情報はない。



「みなさん、どんな人がタイプなんですか?」


高野が言った。


どんなタイプ……。

イマイチわからない。


倫子は竹野内豊と答えた。

渋イケメンで、倫子のイメージにも合っている。


後輩は、アイドルを答えた。

本当は違う。

彼女はオタクなので、一番の推し彼は二次元だ。

が、三次元の中から選ぶくらいには分別がある。


話が盛り上がる中で、私は自分がなんで答えようか考えてしまい、なかなか話を楽しめない。



「由香里さんは?」


と、高野に言われて、ドギマギしながら答えた。


「いや、あんまり芸能人とか詳しくなくて……。お互いよく話せる人がいいな、っては思いますけど……」


「深いね」


と、高野が言った。


なんでこんな真面目回答なんだろう、私……。

心の中でため息をついた。

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コンカツ紀 千織 @katokaikou

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