そうか、美津葉は百合を求めていたのかアル。それで、それを私は迷惑に感じて、美津葉をコスプレーヤーにしたんだなアル!
私が日本に来て、早三週間が過ぎようとしていた。
「ミンメイ、その、もうじき上海に帰っちゃうんだよね……」
「うん? そうアルね。短期留学は約三週間アル。本当は日本の四季をもっと見て見たかったアルね~」
まあ、観光で日本に来るのは可能なので今回は本当に日本と言う場所を感じる為に留学したようなものだ。
選択肢としてはこの後、大学に入った後にまたこちらに留学すると言う手もある。
色々資料を見ると、中国の大学に入学してから日本に留学する方が日本の大学を受験するより楽らしい。
「そう、なんだ…… ミンメイがいなくなっちゃうと寂しくなるね……」
「何言っているアル? 美津葉とはネットでいつでも会えるアルよ?
「それは! そう、なんだけど…… 私、ミンメイの温もりが欲しい////////」
「はぁアル?」
どうもここしばらく美津葉がおかしい。
やたらと私と手をつなぎたがったり、抱き着いたりと。
美津葉に比べればずっと小さい私の胸をいきなり揉んできたりと、やたらとスキンシップが多い。
私の貧相な胸を触って何が楽しいのやら。
いや、もしかして自分の優位性をその都度感じているのか!?
おにょれ美津葉、デカければいいというモノではないのだぞ!!
「ミンメイ~、いっそこっちに正式に高校から留学しちゃおうよ~」
「いやいやいや、流石にそうはいかないアル」
私は苦笑気味に美津葉にそう答える。
まあ、日本と言う所は確かにヤバい。
噂では聞いていたけど、人間をダメにするコンテンツが盛りだくさん。
特に娯楽の少ない中国に比べれば天国そのもの。
自由意志のお陰で、中国では絶対に手に入らない薄い本どころか外国人にやたらと優しいと言うのはわが国では考えられない。
「でもまぁ、大学行ったらまた考えるアルね。こっちも思っていた以上に良いところアルね!」
「で、でしょう! 私もドイツよりこっちの方がいいもん! だから、ミンメイもこっちにずっといなよ!!」
「はははは、流石にずっとは難しいアルね」
「だって、私!!」
そう言って美津葉はまた私に抱き着いてくる。
まあ、なんだかんだ言って日本にいる間は美津葉には世話になった。
ネットで知り合った間柄だけど、もう親友と言ってもいいだろう。
美津葉の方が私より色々と大きいので、抱き着いて来た勢いで、ベッドに倒れ込む。
この部屋とももうじきお別れ。
確かにちょっと寂しくも感じる。
「美津葉にはいろいろ世話になったアルね。何かお礼したいアルね?」
美津葉に何をお礼しようか?
彼女が望むモノとは何だろうか?
私のコスプレ衣装とか?
そんな事を考えていると、美津葉はにっこりと私の上で微笑む。
「お礼なんて、気にしなくていいのに……」
美津葉の顔がやたらと近い。
もう鼻と鼻がくっつきそうな程。
「美津葉、流石に近すぎアルよ? このままでは私のファーストキッスが美津葉になってしまうアル」
「ミンメイって、もしかしてキスした事無いの?」
「ないアルねぇ~。上海にいた時は進学やら塾やらで忙しい毎日だったアル」
実際に中国では日本の女子高生のような生活は漫画かアニメの中だけの話になる。
中国では勉学に励み、学生時代はしのぎにしのぎを削って、少しでもい良い成績を取り、先生のご機嫌を取って進学をしないと負け組になってしまう。
そうしなければ将来政府機関や国営企業などの安泰な職場につけず、一生負け組になってしまうからだ。
特に最近の若者の失業率は酷いもので、政府発表すら止まっている状態だ。
なので私も色々と方法を考えている。
その一つが海外留学で、博士号まで取得できれば政府機関からのスカウトも来る。
「鉄椀飯」と言う言葉が中国にはあり、鉄のお椀のような所へ就職すればぜったいに喰いっぱぐれないと言う意味だ。
流石に私の世代だと、少し上の世代のように老後の親の面倒を必ず見るという考えは薄くなってきた。
しかし、自分の安泰は考える。
等と考えていたら、美津葉がはぁはぁと赤い顔して私の鼻に美津葉の鼻をくっつけて来る。
「ミンメイって、良い匂い……」
「ちょ、ちょっと美津葉くすぐったいアルね! この匂い好きなら私がつけている香水をあげるアルよ?」
「ううぅん、私が欲しいのはミンメイよ♡」
「はいアルっ?」
何かの聞き間違えか、美津葉は今私を欲しいと言わなかったか?
いやいやいや、きっと聞き間違えだ。
「美津葉、そろそろ降りるアルよ。美津葉のその大きな胸に押しつぶされたら窒息死してしまうアルよ?」
「うふっ、ミンメイのちっちゃな胸だって魅力的よ♡」
「み、美津葉アル……」
え、えーと。
これってまさかのまさか??
「ミンメイ! 私もう我慢できない!! あなたが欲しいっ!!」
「ちょ、ちょっと待つアルね!! 美津葉、冷静になるアルよ!!」
「ダメ、もうすぐミンメイが上海に帰っちゃう! だから今ここで私のモノにするの!!」
「いやその、ちょ、私たち女同士アルね!」
「そんなのかまわない! ミンメイっ♡♡♡!!!!」
「うぎゃぁ―アルっ! 服脱がさないよろしアルっ!」
「ミンメイぃーっ♡♡♡!!!!」
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっアルぅ~~~~~っ!!!!」
◇ ◇ ◇
「ミンメイ、ずっと待っているからね♡」
数日後、上海に帰国する為に私は空港へ来ていた。
そして美津葉も見送りで空港まで来ていた。
「美津葉…… 美津葉のせいで私もイケない扉開かされてしまったアル。もうお嫁に行けない体にされたアル……」
「だから、私がちゃんと責任取ってあげるって♡」
「はぁ~アル……」
私は美津葉のせいで大切なものを失った。
しかし、この数日でそれでもかまわないと思うようにまで美津葉に調教された。
なので、上海で大学に受かってからこちらの大学に留学する約束をする。
中国では私が戻ってしばらくすると大学受験だ。
そして夏には卒業をする。
大学に受かれば、またここへ遊びに来る事を美津葉と約束した。
「まったく、こんな事どう親に話せばいいアルね?」
「その時はその時よ! ミンメイ、待ってるわね♡」
私は大きくため息を吐く。
とは言え、また日本行きたいと思う理由が出来てしまった。
「まったく、誰のせいアルね?」
「ん? なになに??」
「何でもないアル! 美津葉!!」
首をかしげる美津葉に私は、ばっと抱き着き美津葉の唇にキスをする。
美津葉は一瞬驚くも、私を優しく抱きしめる。
「んっ、ミンメイ。待ってるわ」
「分かっているアル。美津葉、再見!」
「なんか、お別れって寂しいよ~」
「大丈夫アル。再見は『再び会いましょう』って意味アル。お別れと違うアルよ?」
「ミンメイ…… うん♡!」
そしてもう一度キスしてから私はこの日本を離れるのだった。
「
日本、また来る日まで!!
―― 私、欲求不満アルネ!~林=明美の場合~ ――
おしまい
**************************************
あとがき:
……いや。
その。
まぁ、何がどうなったかは皆様のご想像にお任せします。
ただ一つ、ここに新たなカップルが生まれたとだけ言っておきましょう。
出張中で忙しくて無理矢理話をまとめたわけじゃございませんよ?
と言う事で、ここまで読んでいただいた方、お星様やハート、コメント等々いただいた方々に感謝をしながら、本作終了です。
……運営さんに何とか怒られずに済んだかな??
それではまた、何処かのお話でお会いしましょう!!
私、欲求不満アルネ!~林=明美の場合~ さいとう みさき @saitoumisaki
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