私は、人間のエゴ全部を飲み込めやしないアルね!
私と美津葉は秋葉原駅に着いた。
「うーん、『猫の穴』いう店はどっちアルか?」
上海の地下鉄も複雑だけど、日本の駅も十分に複雑だ。
と言うのも、分かりにくい。
何と言うか、標識は小さいし人は多いし、なになに口とかしか書いてないので目的の店の方向が分かりにくい。
「ミンメイ、こっちこっち」
「お、美津葉は知っているアルか? 助かるアルね!」
美津葉は私を引っ張って出口に向かう。
そして駅の出口を出ると、いきなりメイドさんたちがビラを配っていた。
「こ、これがメイド喫茶の呼び込みアルか!?」
うわー。
ほんとうに可愛い子たちばかりだ。
フリフリのコスプレみたいなメイド服に可愛らしい笑顔でビラを配っている。
私はその前をわざと通ってビラをもらおうとするも、何故か無視される。
悔しいのでその前を何度か行くと、流石にそのメイドさんがこちらを見て頬に一筋の汗を流す。
「あの、何か?」
「わ、私もそのビラ欲しいアルね! メイド喫茶行ってみたいアルね!!」
そう言うと、そのメイドさんは困ったような顔をして私を見てから美津葉を見る。
そしてそのビラを見せながら言う。
「ここは男性専門のお店よ? まさかあなたたちってそっち系?」
メイドさんがそう言うと、美津葉は真っ赤になって私の手を取り「すみません!」と言って向こうへ行く。
私は首を傾げ、美津葉に聞いてみる。
「なんで、だめアル?」
「あ、あのビラのお店は、そ、その男性専門で、そ、そう言うお店なの////////」
美津葉はそう言いながらずかずかと私を引っ張って行く。
「そう言うお店?」
しばし考えてみるも、なんかやたらとピンク色の看板がビルの上の方にある。
―― リラクゼーション喫茶、乙姫 ――
うーん、なんか看板からしていかがわしい。
私は仕方なしに美津葉に言う。
「それじゃぁ、まずは目的のお店に行くアル! 『猫の穴』に行って記念撮影してから欲しい薄い本買うアルね!!」
「はぁ~、ミンメイって何処でそう言った情報を手に入れるのよ?」
ため息を吐くも、美津葉は迷うことなくそのお店の前にまで行く。
ちなみに、休日は一部道路が通行止めになって歩行者天国になるので、いろいろな人がいる。
路上ライブみたいなことやったり、コスプレしたり、踊ったりと。
なので私たちがチャイナドレスでもあまり目立たない。
「うーん、やっぱり美津葉とコスプレした方が良かったアルか?」
「じょ、冗談じゃないわよ! この姿だって恥ずかしいと言うのに///////!」
美津葉は赤くなって抗議してくるも、目的のお店の前で記念撮影するとちゃんとポーズ取ってくれる。
私は大満足で早速お店の中に向かう。
「ふぉっ! 流石アルね! 八王子の比ではないアルよ!!」
目的のお店には薄い本だらけだった。
しかも階を上がれば年齢規定のモノがずらりと!!
「ちょ、ちょっとミンメイ。私はまだ17歳だから……」
「大丈夫アルね、私は18歳アルよ!」
モジモジする美津葉を引き連れてそちらのコーナーに行くけど、誰も私たちをとがめない。
むしろ私より幼く見えるお客だっている。
「これも、あれも、うぉっ! これは幻のやつアルねっ!!」
「ミ、ミンメイ、そんなあからさまのって////////」
私が伝説級の薄い本を手に取ると、美津葉は真っ赤になって手で口元を塞ぐ。
まぁ、これは完全にい服着ていない男性同士が抱き合っている表紙なので、誰が見ても刺激が強いモノだが、内容はもっと過激なはずだ。
私はほくほく顔でそれらと、美津葉に袖の端を握られてこっそり指さされた物を代理で買ってから店を出る。
「くっはぁー! 大量大漁アルネ! 満足ある!!」
「ううぅ、恥ずかしかったぁ~////////」
「何言ってるアルね、美津葉が買ったのだってかなりのモノだったアルよ?」
「ひっ! こ、声おおきぃっ////////!」
まったく、美津葉は恥ずかしがり屋なのだから。
見た目が完全に西欧人の彼女がそう言ったモノ買ったって、誰も気にしない。
むしろジャパンカルチャーの浸透として、周りの人は見て見ぬふりをしてくれる。
「っと、後はたのまれ物の買い出しもしなきゃアルね」
私はそう言って紙を引っ張り出し、スマホのナビにその目的地を打ち込む。
「どこ行くの?」
「うん、何やら父がパソコンのパーツを買って来てほしいと言うのだけど、私は詳しくないアルね」
そう言いながらナビによって着いたお店は何と言うか、もの凄くマニアックなお店だった。
そしてお店に入り父に言われた品物を店員さんに聞いて買い込む。
「何買ったの?」
「よくわからないアルが、最新のCPUとかアルらしいね。何に使うかは私分からないアルけど」
「ふーん、ミンメイのお父さんってパソコン詳しいんだ?」
「いや、全然ダメアルよ?」
「じゃあなんでそんな最新のパーツなんて買うの?」
「さあ、アルね? ただ、買って来たらお小遣い増やしてくれるって言われたアルね!」
二人して首をかしげるも、私たちは言われた物を買いまくった。
まぁ、小さなものばかりだからかさばらないで済むのは嬉しい。
そしてその後、ゴリラのカレーライス店で食事をしたり、スタジオズブリ直営店でドロロのグッズを買ったりと、アキハバラを十分に堪能した。
「はぁ~、楽しかったアル!」
「結構いろいろ買ったりしたね。あ、ご飯とかおごってもらってありがとうね」
「いいアルよ、私も父に頼まれた物とか買う代わりにお小遣いたくさんもらっているアルしね。それに美津葉がいたおかげで、薄い本も大量にゲット出来たアル!」
なんだかんだ言って、美津葉もいろいろ知っていた。
かなりレアな作品の薄い本とか売っている店まで知っていて、プレ値のそれもどこの店の方がお得だとかまで知っていた。
「さてと、最後にヨド〇シでブランドの品物買うアルね~」
「え? まだ買うの??」
私は懐からクレジットカードを引き出し、美津葉に言う。
「そうアルね! 母から頼まれた物も買うアル! 私この日の為にヨ〇バシの会員証作ってポイント貰えるようにしてあるね! これで母のモノ買えばすぐにポイント入ってそれでお買い物出来るアルね!!」
そう、ポイント分は自由に使っていい事になっている。
母から頼まれた物は結構いいお値段がするので、確認済みのそれを買うとちゃんとポイントが入るらしい。
そのポイントで任〇堂のス〇ッチを買うつもりなので、今からワクワクしている。
「はぁ~、ミンメイってどれだけ買い物するのよ?」
「全てアルね! アキハバラさいこーアルね!!」
買い物もできて、インスタ映えのする写真も取れて、アップしていいねも沢山もらえてフォロワーも増えたし、今日は本当に人生最良の日だ。
「さあ、次行くアルよ!」
元気にそう言う私に美津葉はため息を吐きながらも付き合ってくれるのだった。
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