6.ブチギレ修理士(魔女)

「何の用かはわからないが、取り敢えず中に入ろう」


「「……」」



 被害者なのに誰よりも冷静なシェズは看板をOpen開店に戻して中に入った。



「お前らは部外者だろ、出ていけ」


「なんでアンタの指示に従わなきゃいけないのよ!アタシ達だって客よ!」


「なんで偉そうなんだよ…」


「落ち着け、で?用件は?」


「品を取りに来た」


「受け取り予定日は来週のはずだ」


「急に必要になった」


「(チッ…やっぱり来たか、だが残念だったな)そうか、では今持ってくる」


「!…」



 彼女の発言を聞いたアルゼフは驚いた表情をした。いちゃもんを付けて処刑する気だったのだろう…残念だが対策済みだ。

 ただし、彼がどう動くかはアッシュロード達もわからない…。


 シェズに考えが有るとは言え、目の前で処刑は見たくない…。

 そして、アルゼフが人前で処刑を実行するような事はしないはずだ…やるとしたら小細工を使った卑怯なやり方だろう…


 シェズの認識妨害魔法の効果がイマイチなのはこの男が原因なのか…それとも別か…


 とにかく手続きを終わらせよう、書類と依頼の品を机に置いた…瞬間だった。



「「!!」」


「動かない方が良い、ホント、つくづく甘い奴だ」


「……」



 予想通り、金を置くのと同時に魔法具を手にして銃口をシェズに向けてた。

 クリスティナとアッシュロードはアルゼフに襲いかかろうとしたが、冷静なシェズに目で指示され動くのをやめた。

 キリアも目を見開いて驚いたが、冷静な彼女を見て落ち着いた。



「……」


「お前は1週間で終わらせた。よって魔女と判断し処刑を行う」


「はっ 白々しい。最初からこうする気だったんだろ?今私が渡せ無かったとしても同じような事を言っていただろ。教えてやる、確かに私は魔女だ」


「なら罰を受けろ!!」


「キャァ!」

「店を壊す気か!?」



 アルゼフが魔法銃を発砲させた瞬間、爆発し店内の一部が破壊された。

 銃口をシェズに向けて発砲した…シェズが呪文を唱える様子も無かった…


 煙が失くなると…アルゼフの目の前にのシェズが腕を組んで立っていた。



「!?!」

「えっ!?」


「…か、それで私を狩れると思ったのか?痛くも痒くもない。そよ風みたいだな」


「は!?ば、馬鹿な!?無傷だと!?」



 痛いのを我慢してる様子も避けた痕跡…回復魔法を使った痕も無い、攻撃を受けたが効いてないのだ。



「だが弁償をしてもらう、よくも店を壊してくれたな。帝国の軍人ならそれなりに稼いでるだろ、払って弁償してもらおうか!」


「ガッ!!」



 受付机を飛び越えるのと同時にアルゼフの後頭部を掴んで床に投げつけた。


 顔面から思いっきり頭を床にぶつけられたアルゼフ、流石最強の魔女狩り…まだ意識があった。


 しかし頭を上げた瞬間…シェズに前髪を乱暴に捕まれ、乱暴に引きずって店の外に投げ飛ばされた。

 それだけで終わればどれだけ良かったか…


 シェズは彼に襲われた事よりも、店を壊された事の怒りの方が強かったそうで…



「払ってくれるよなぁ?なぁ?魔女狩りは人様の店を勝手に壊して良いのか?」


「アガッ!…」


「魔法を使わないだけ有り難いと思え!これでも手加減はしてやってんだ、簡単にバテんなよ!!魔女狩りなら稼ぎが良いから払えるよなぁ!!」


「払う!払うからやめてくれ!」


「聞こえねぇなぁ!!」



「うわ…シェズブチギレじゃん…なんか取り立て屋に見えてきたわ…」

「店壊されたのがめちゃくちゃ許せないんだな…」

「……(彼女を怒らせないようにしよう。俺もあぁなりたくないからな…)



 とても女性…女性修理士とは思えない乱暴な口調、急所を外して永遠に苦痛を与え続ける体術でアルゼフを返り討ちにした。


 もう好青年の顔は傷だらけ、イケメンの面影は消えかけていた…

 刃物や魔法を使わないだけでまだ優しい…


 勢いが有りすぎるビンタ、気絶しかけてたら殴る蹴るで叩き起こす。

 更には…アルゼフが傷だらけになると回復魔法をかけて綺麗にしての…拷問の繰り返し。



 人がいないくてホントに良かった。

 ギャラリーが居たらもっと騒ぎになって魔女狩りも来ていたかもしれない…



 シェズの怒りが収まったのは夕方頃だった…なんと4時間近くアルゼフを拷問していた…。


 満足したシェズは気絶しあアルゼフにビンタをして叩き起こして前髪を掴んで顔を上げさせた。



「払ってもらおう、今有るなら出せ。お前が壊したのは店内5ヵ所と出入口、大事な物がある部分じゃ無かったから少しだけ負けてやる。だから50万ギルだ、ぼったくじゃないぞ」


「ご、50万だと!?」


「「(安くしてなかったら80万近くは行ってたんだろうな…)」」


「私の店の中は希少な素材で作られた物だ。床や壁、窓、そしてその他の装飾。そして建物自体を壊したのだから高額に決まってるだろ。小さな建物だが借り物だ、わかってるだろ?」


「……」


「払えるならこれで許してやる。ただしお前は出禁だ。来ても二度と依頼を受けない。今この場でその銃を二度と直せないくらいに壊す事も出来る。

 選べ、弁償するなら出禁だけで許してやる。しないならこの場でお前の武器と身体の全てを壊してお前を二度と戦うことも出来ない身体にしてやる」


「……払う…身体だけは困る」


「そうか、なら今用意しろ。

 喧嘩を売った相手が悪かったな、まさか目を付けた獲物に返り討ちにされるとは思ってなかっただろ。

 噂じゃ最強の魔女狩りみたいだが…だったか」


「……」



 全くその通りだ…最強の魔女狩りでも最強魔女ギデオンには及ばない…

 まさに相手が悪かった…魔女狩りといえ、一応帝国の軍人なので戦うことが出来ない身体になるのは嫌みたいだ。



 アッシュロードとキリアに拘束される形で支えられ、アルゼフは銀行に行き弁償代を引き落として持ってきた。


 ピッタリ50万ギル受け取ったシェズはアルゼフの頭に手を置き何かをした…。


 何かされたアルゼフは意識を失った。シェズは小さな魔法の鞄を身に付けさせ、そこに引き落とさせた50万ギルを入れた。


 そしてキリアに軍事組織の拠点近くに置いてくる捨ててくるよう頼んだ。



「カッコいい~あんなに散々弁償しろって言って払わせたのに最後はお金を返すとか」


「金は私ので間に合ってる。だがあぁいうのは実際にやらせてわからせるのが一番効果がある。


 奴は二度と私の店には来ない。奴から私の記憶を消したからな。依頼をしたことも忘れてる。襲撃したのは無関係な女冒険者って事にした」


「魔女って何でも出来るの?」


「蘇生以外なら何でも出来る、ただし私だけだがな」


「ヤバッ…流石 最強チート魔女ギデオン…」


「取り敢えず、これで魔女狩りの依頼は片付いたんだよな?シェズの痕跡を辿られる事とは大丈夫なのか?」


「問題ない。解除できるのは私だけだ。上書きすらも出来ない、だから奴の組織が私の前に現れる事はしばらくの間はないだろう」


「二度と無いっじゃなくて【しばらく】か…確かに永遠に解けないだと怪しまれて痕跡を辿られやすくなるな」


「……これで色々落ち着けば良いが…」



 これはまだ序の口だ…癖のある客は一人二人じゃ無い、彼のような依頼人が沢山来るだろう…有名になる前に離れなくては…移動が困難になる。



 こうして魔女狩りアルゼフの依頼と嫌がらせは解決した。


 シェズと帝国(の民)との戦いは始まったばかり…

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歯車の魔女 ~最強魔女の素材集めの旅~ 茜色 @Kalm

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