5.協力者
翌日
今日もクリスティナとアッシュロードが店にやって来た。昨日依頼された派手に壊れてた魔法具を取りに来たのだ。
そして昨日と違うのは…クリスティナが銀髪の青年はを連れてきた事。
「紹介するねシェズ、彼は『キリア』
アタシの元同期…で良いのよね?同じ神殿に居たとはいえ、所属してた所が違うからたまに話したりしてたけど…合ってる?」
「あぁ 間違ってないな」
「って事で元聖職者だけど、取り敢えずイイ人よ」
「はぁ…ってことは私の事話したんだな?」
「少しだけね…」
「クリスティナの知り合いって聞いてもよ、ホントに信用出来るのか?」
確かにアッシュロードの言う通りだ、クリスティナが信じられる相手で元聖職者とは言え…赤の他人なのだ。ただ者ではないのは確かだが…下手したら魔女狩りに報告されてしまうかもしれない…
冒険者にも魔女狩りにも見えないが…帝国の騎士にも見えない…本当に一般人にしか見えない。
「まぁそうだな。改めて俺は『キリア=アルノルトス』、元聖職者で今は魔術師の師の元で修行をしてる」
「へ~ 冒険者じゃないのか」
「あぁ、その道も良いかと思ったが…聖職者になる前やりたかった事を選んだんだ」
「目的があるのは良いことよ、それで、実はね…えっとアタシから言って良いのかしら?」
「いや、俺から話した方が良い」
「じゃあ任せるわ」
「「……」」
アッシュロードは静かに驚いて固まっていた、シェズは会話を聞きながらも作業を続けていた。
会話を聞いてる間にアッシュロードの魔法具の確認作業が完了したようでクリスティナの確認作業に移っていた。
「俺は魔女の母と吸血鬼の父から生まれた」
「「!?!?」」
「だが…魔女の母は魔女狩りに捕まった…逃がされた俺が見たのは…複数の魔女狩りに捕まって路地裏に連れていかれる所だった…逃げてきた俺を見た父がすぐさま路地裏に行ったが、そこには衣服が乱れ、胸元にナイフが刺さったまま…血を流して冷たくなった母がいたそうだ…」
「酷いな…そんな昔から魔女狩りは外道だったのか…」
「昔に比べれば今は少しだけマシだ、昔は酷かった…そこらの若い娘を捕まえて性的暴力を加えたりしていた…魔女狩りじゃない人間も一緒になってやってたくらいだ…」
「!!」
「……」
魔女狩りの恐ろしさを知ってるからこそキリアはクリスティナの頼みを引き受けたのだろう。
「ん~…まぁ事情はわかった。えっとキリアだっけ?なんで【魔族】って呼ばれてる者達の血を流してるのに聖職者を?痛くて辛かったんじゃないのか?」
「いやそうでもなかった。もっと細かく言うと、人間と吸血鬼のハーフの父親、人間と魔女のハーフの母親なんだ。だから人間の血の方が濃いし多く流れてる、魔族の血は半分もいかないくらいだ」
「なるほど…それなら聖職者になれるし聖力にも苦しまないな。ってかハーフでも聖職者になれるんだな」
「俺の母は『光の魔女』の末裔だった、聖職者の素質は祖父母達にもあったんだ」
「あっ、聞いたことあるよ。魔女でありながらも聖職者や聖女と同じ聖力みたいなのが使える魔女の事よね!しかも聖力に耐性を持ってるとか」
「あぁ、だから混血の俺でも親族の血や素質のお陰で聖職者になれたんだ。
それもあってかクリスティナと神殿で知り合った。
俺の許可なく鑑定した時は怒り狂いそうになったがな」
「それはゴメンて!悪かったわよ!
でも、おかげでたまにしか話さない仲とは言え、知り合いになれたんだし。キリアが荷物を持って神殿を出てきたから昨日声をかけたの。
そしたら彼もブラック過ぎる環境が嫌すぎて辞めてきたんだって。
シェズはめちゃくちゃ強いから護衛とかいらないと思うけど、男除けは必要かな思ったのよ。魔女狩りや変な男に目をつけられたくないでしょ?あと従業員とかどう?仕事探してるみたいだからさ」
「悪いが従業員は間に合ってる、人手が必要な仕事はほとんど無い」
「でも受け付け係は必要じゃない?」
「まぁ…」
「……」
アッシュロードとシェズは目を合わせて困り果てた。
男性のアッシュロードでもシェズの強さはわかってる。男の答えとしてもシェズに男除けは必要そうで不必要にも感じる。
そんな事を思った時、クリスティナの圧を感じたのか…悩む演技をした。
「う、うぅん…そうだな…。シェズは自分で素材を採りに行ってるから買い出しはいらないしな…ぶっちゃけ…アンタはシェズより強いのか?それ次第だ」
「聖職者の中では一番強いと言われてた」
「ど、どうする?何か困ってる事とかあるか?」
「男を傍におくだけで魔女狩りを追い払えるのか?さっきの彼の過去のように子連れでも構わず母親を捕らえて性的暴行をする組織だぞ?」
「昔よりはマシになってる、男を連れてれば簡単には奴らも襲えないだろう」
「その証拠は?現に魔女狩りは一般人へと姿を変えて接触してきた。私が殺められるのも時間の問題だぞ?」
「「…(これは手強い)…」」
「(怖ぇ…)」
ごもっともな答えにキリアとクリスティナ、アッシュロードは黙ってしまった。
その通り…対策する前に既に魔女狩りアルゼフがシェズに接触してる…
同時にシェズもアルゼフが魔女狩りと気付いてる。
しかし今と昔は違う、魔女狩りでない男が魔女狩りと一緒になって魔女に暴行をすることはないが…密告はされる…。
確かにクリスティナの言う通り、子供や男が隣にいれば怪しい男に捕まる事はないだろう、
「ま、まぁ…取り敢えず、一回キリアを傍に置いてみない?いや、仕事が見つかるまで彼を此処に置いてあげてくれない?」
「従業員は間に合ってる」
「そこを何とか!魔女狩りのせいで上手く動けないでしょ?キリアがいれば何とかなるかもしれないわ!」
「……」
「あっ!なら一回試しにキリアと帝都歩いてみたらどうだ?それで効果があれば採用して、無かったら考えれば良いんじゃないか?何もやらないで決めつけるより、一回だけ体験すればわかる事だってあるはずだ」
「…そうだな」
「!!(良いこと言うじゃない!)」
「!!」
アッシュロードの発言に納得したシェズ、ガッツポーズするクリスティナ、静かに喜んでるキリアだった。
その後、シェズは店を一時的に閉店にしてキリアと帝都を歩く事にした。シェズが居ない間はクリスティナとアッシュロードが店を守ってくれるそうだ。
☆★☆★☆
昼前の帝都は人々で賑わっていた。
屋台で食べ物を買う者、出店でアクセサリーを見るカップル達…怪しい者もこの人混みを使って色々出来てしまうだろう…
そんな帝都をシェズとキリアは歩いていた。
認識妨害魔法を使ってるはずなのだが、人々は美男美女の2人を見てざわついたりヒソヒソと話したり、目を奪われてたりしていた。
「今の2人見た!?めっちゃ美形だった!」
「男の人めっちゃイケメンだった!」
「あんな彼氏欲しいなぁ~」
「見たか!?あんな美少女見たことねぇぞ!」
「クソー男がカッコ良すぎて文句言えねぇ~」
「男でも惚れちまう色男だったな」
「…君のせいだ」
「いや、君のせいでもあるな。認識を妨害してる魔法が全く役に立ってないぞ?」
「最近そうなんだ…」
「フム、もしかしたら魔女狩りや皇族のせいかもな、権力者や対抗する組織の力に君の魔法が弾かれてるか弱くなってしまってるかだ」
「厄介だな…」
そんな会話をしながらも様々な出店に足を運んだ。
「…嫌かもしれないが、これも対策になるかもしれない」
「何がだ?」
キリアは腕を差し出した。意味がわかったシェズはキリアを険悪な顔で見た。
「そこらのカップルを見てみろ、皆腕を組んでる」
「私達は違うだろ」
「フリだけでも効果はあるはずだ。どうだ?」
「チッ…」
シェズは渋々キリアの腕に自身の腕を絡ませた。本当に嫌そうだ…
…腕組の効果なのか、シェズとキリアを見る人々が減った気がした。カップルと勘違いしたのか…諦めたのか…残念そうにしていたのだった。
結論から言ってしまうと、キリアの行動は完璧だった。シェズの歩く速さに合わせて歩き、怪しい男に話しかけられた時には彼女を隠すように前に出たり…何より恋人のフリが上手かった。そのお陰か魔女狩りに捕まる事は無かった…のだが…
「!!」
店の前には依頼人の魔女狩りアルゼフがいた…。
店の中からアッシュロードとクリスティナは唸り声が聞こえてきそうな…険しい顔をしてアルゼフを睨んでいた。
無意識なのかシェズはキリアの腕を強く握っていた。それにすぐ気づいたキリアはシェズを守るように前に出た。
同時に…シェズとキリアを見たアルゼフは驚いた表情をしたが2人を睨み付けながら口を開いたのだった。
「仕事を放棄して男と出歩いてたのか?随分と余裕だな」
「……」
「それが人に頼む態度か?いや、違うな。昨日で今日だ。彼女に仕掛ける時間が全くないから焦ってるんだろ?
図々しくいやらしい奴だな、女性1人で店をやってるから何時でも狙えると思ってたんだろ」
「っ!!」
「(さっさと帰れ!ストーカー野郎!)」
「(キリア強ぇ…あんな男になりたいぜ)」
「話は聞いてたが、想像以上に面倒な奴に目をつけられたんだな…これは確かに1人では対処出来ないな」
「……」
一瞬だけ心が動揺したが…シェズは冷静だった。
「(こうなることはわかってたから依頼の品の修理は終わらせてある。慌てる必要は無い。
店に入って手続きをすればどうにかなるはずだ。最悪刺されても作戦があるから何とかなるはずだ)」
冷静なシェズはチラッといがみ合うキリアをアルゼフを見た…本当に面倒な男達に捕まってしまったと思ったシェズだった。
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