4.魔女を落とす?方法

 アッシュロードとクリスティナが店にいた時 


 同じ頃、別の場所



 黒い軍服を着た者達で溢れてる食堂、皆が朝食を食べていた。


 金髪の青年が1人で食べてると…隣に黒髪の男が許可無く座った。金髪の青年は何も言わなかった、この2人の仲なのか…

 そして黒髪の男が口を開いた。



「…女を落とす方法を知ってるか?」


「ん?恋愛のことか?それとも別の事?」


「…どっちもと言っておく」


「うぅん、そうだな~」



 意味ありげな質問に金髪の青年は困惑することなく、朝食を食べながら答えた。



「異性を落とす前提で言うと、意識してもらうのが前提でな、意識されてない状態で行動しても無駄になるだけだ。

 恋愛として言うと…好きの反対は無関心って言われてる、そこからマイナスな行動をすると嫌いになる。

 狩りも同じだな。ほら、獲物に敵意剥き出しの状態で狩ろうとすると反撃を食らったり逃げられたりするだろ。獲物に気付かれないように静かに近付いたり、あえて餌を与えてから狩るって方法もある。逆に与えすぎたり、薬を盛ったりすると勘づいたように食べなくなって逃げる。


 これを恋愛に当てはめると…最初は静かに、普通に接触して、気付かれないようにしながらアプローチして親密になる、相手の誕生日を覚えてたらちゃんと用意するとか、やりすぎるとマイナスになるから気を付けろよ」


「…お前の体験談か」


「違ぇよ!」


「詳しすぎるだろ」


「恋愛小説家の親のせいだ」


「はぁ…なるほど」


「信じてねぇな!?待ってろ!作品持ってきてやる!父親の作品に今言ったこと全部書いてあるから読めよ!」


「恋愛小説は興味ない」


「あー!めんどくさい!いいから読め!美女を落とすのか狩るのか知らねえがとにかく読め!!わかったな!」


「…頭に入れとく」


「よし、言ったな。逃げんなよ?じゃ先行くな」


「あぁ…」



 そう言って金髪の青年『ルゼル=ガルタスフ』は食器を片付けて食堂を去った。

 

 残った黒髪の男『アルゼフ=クライブ』は一人静かに朝食を食べた。



 この建物は帝国の軍事組織の拠点であり、魔女狩りの拠点でもある…。

 帝国軍の全員が魔女狩りではなく、一部の人間だけ…

 このアルゼフがシェズに接触してきた軍人…一般人に扮した…魔女狩りだ。

 そして彼と話していたルゼルは普通の軍人、帝国の軍人だ。



 此処が魔女狩りの拠点であると知ってるのは僅か、知ってても誰が魔女狩りなのかはわからない…。ルゼルはアルゼフが魔女狩りだと気付いていないようだ…


 現在ラナリア帝国には3つの組織がある、帝国軍隊、騎士団、そして(公認されてる)魔女狩り…最も嫌われてるのが魔女狩り、当たり前だ。一部の人間からは【女の敵】と呼ばれてたりする…


 何故魔女狩りが公認組織なのかは…皇族が繋がってると…皇族の誰かが魔女狩りと交渉したとか、繋がりを作ったとか。

 誰とまではわかってないが…一部の人間は『第三皇子』じゃないのかと言っている…



 ラナリア帝国の皇帝には皇后(正妃)と2人の側妃がいる…そして皇子が5人、皇女が4人が…その内の皇子2人は後継権の争いに巻き込まれ亡くなり、2人の皇女が売られる形で他国に嫁いでいった…

 なので現在は皇子3人、皇女2人だけが残ってる。皇后の子は現在皇子1人のみ…皇女が1人いたが顔が醜いと言われ…追い出される形で他国に嫁がされた…。


 クレアの婚約者である現皇太子が皇后の実子だ…



 ☆★☆★☆★


 話を戻して、アルゼフは自室に戻って着替えていた。

 軍人にも魔女狩りにも見えない普通の人間…一般人の格好をしていた。


 ルゼルに言われたら事を実行するためシェズの店に行くようだ。

 アルゼフの軍での階級は『少佐』とそれなり、魔女狩りではエリート組と呼ばれる【グラナティス】、魔女狩りでの名は『マーク潜む闇闇』…強いがトップクラスではないようだ…

(ちなみにアルゼフ=クライブは偽名)



 そんなアルゼフがシェズの店の前に着いた…が、目の前にはClose閉店の看板…シェズが去った後だった。



「………」



 驚いてるのか、店前で立ち止まってるアルゼフの後ろから誰かが声をかけた。



「アンタも店に用があったのか?残念だが、今日は休みみたいだな」


「!?…」



 声をかけられたアルゼフは後ろを見て声の主を見た。


 2色のグラデーションになった変わった瞳に銀髪…顔の整った背の高い青年だった。


 服装からして冒険者でも魔女狩りでもなさそうだ…



「知り合いに頼まれて来てみたんだが、休みみたいだな」


「……」



 流石に一般人に見られるのは良くないと思ったのか、アルゼフは渋々店の前から離れて去って行った。


 銀髪の青年は何も言わなかったが、店を見た。



「(に頼まれて来たが、店主が居なきゃ話が出来ないな…張り紙を読むと明日は普通に開店するみたいだな。俺も出直すか)」



 謎の青年も店を離れて行ったのだった。



「(しかし、あのクリスティナから頼まれ事をされるとはな…あの猫被りが解放されたからか本性をさらけ出して冒険者をしてるとはな…俺ももっと早く辞めとけば良かった)」



 …どうして人々は認識妨害魔法を使ってるシェズに集まってくるのだろうか…



 ★☆★☆★


 そしてシェズは…ツルハシを使って希少素材【イーデルの刻】、【テレズのしるし】を採掘していた。



 ★イーデルの刻 

 魔法具に使われる素材 硬く研磨がしずらいが丈夫で壊れにくい 本体の中身(中心部)に使われてる重要な素材

 採取する前から鉱石に魔法文字が刻まれてるのが特徴 

 魔鉱石ではないので何の効果はないはずなのだが、イーデルの刻を使った魔法具や装備は壊れにくく頑丈なモノになる。市場では高額で取引される品物



 ★テレズの印

 魔法具に使われる素材 柔らかく研磨がやりやすい 部品同士を繋げる導線や細かい部品として使われる重要な素材

 採取する前から魔法文字が刻まれてるのが特徴

 魔鉱石ではないので何の効果はないはずなのだが、テレズの印を使った魔法具や装備は攻撃を弾く効果を得るらしい…市場では高額で取引される品物



 ★イーテレズの刻印★

 かつてこの大陸を悪しき存在から守ったとされる英雄の遺骨。

 イーデルの刻とテレズの印を合成させると出来る…が、100%確実で出来るモノではないらしい。女神の慈悲で遺骨が各地に散りばめられ、後に2つの鉱石になったと言われている。追悼の意を込めて散りばめたと言われている…本当か?


 長い年月が経った事からそれぞれが別の存在となった事から…合成させると拒否反応のようなモノが発生するらしい。未だに謎に包まれてる物体、素材としてな使えるが、効果は未だに不明 


 もし見つけても使わず研究所や博物館に提供した方が良い…



 …また、イーデルの刻とテレズの印の両方を示す名でもある




「現代において、魔女に効くとされるモノは聖職者が持つ聖力のみとされてる。

 イーテルズの刻印にその効果があるかはわからないが、魔女狩りが使ってるって事はそれなりに結果を残してるって事か。

 全く、厄介なモノを自分で直す事になるとはな…」



 そんなことを言いながらも作業を続けること数時間、シェズは2つの鉱石を大量に採掘しアトリエに帰って行った。

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