第2話     天国の夢 後編

 最初に生まれるのを立候補した姉は、その場で皆とは違う部屋に案内されました。今すぐ生まれ変わる為です。長方形の扉が開き、空の上から下を覗き込むと、家が沢山見える地上が見えて、良く晴れ渡ったとてもいい旅たちの日だった。姉は下で皆が来るのを待ってるからねって言い残すと、小さい羽根を広げ、下界へと下りて行きました。残りの三人は時が来るまで丸いカプセルに入ってスリープ状態になります。

 入る前に三番目に生まれる予定の子に言われたのが。

「私は、思う存分にお父さんお母さんに甘えたいから、ゆっくり来てよね」

 そう釘を刺されました。

 その後5年後に生を受け、生まれて数か月後。私に向って、姉は言いました。

「生まれてくるのが早すぎなのよ」

 って、怒られてましたが(夢か現実か覚えてないけど、言われたのは確か)

 話を戻して、私はカプセルの中で10年以上も眠る事に…散々罰でさっきまで、100年も眠りについていたのに、またここでも再度眠りについていたのですね。ww


 それから年月が過ぎ、やっと自分が産まれる順番が来ました。他のカプセルを見ると、物抜けの殻だった。

 天使様に誘導されて、皆が降りて行ったあの長方形の扉の前に立つと、ゆっくりと扉が開き、綺麗な街並みを空から見ている。やはり本能で知ってて、降りる為の羽根を背中の中から引きだした。

 その時天使様が、説明をしてきました。

「下に飛び降りたら、この扉は閉まります。閉まった瞬間。もう二度と帰れませんからね。その後翼はもぎ取られて翼を無くします。その後は自力では飛べないので、今度は透明なシャボン玉に包まれて、生まれる家に自動で連れて行ってくれるので安心してくださいね」

 と、もぎ取られ…何と恐ろしい言い回しと思いながら、取りあえず納得すると、羽を広げて、下に降りました。言われた通り、空に浮いていたら、長方形の扉がゆっくりと閉まって行きます。完全に閉まり本当にもう開かないのかなって思って、コンコンと扉をノックするが、中からは無反応その内。透ける様に扉が消えていきました。消えちゃったと思った瞬間。突然背中に激痛が走り、背中を見ると、真っ白い羽根が背中からまさにもぎ取られていくのが見えました。その羽さえも消えて無くなり、痛いッーーーと悶絶していたら、透明なシャボン玉に包まれて、ゆっくりと下界に降りて行きました。


 次に意識を戻してみれば、視線の先は暗闇。横を見ても真っ暗。真の闇が何処までも続いてます。なにここ何処?と思っていたら、目線を正面に向ければ、そこだけぼんやりと明るくなり、やっと何か見えてきたと思ったら、そこには戦時中か戦後まもない?そんな感じのする薄汚れた服を着た男女の子供達が遊んでました。一人の女の子は、手毬を付いてます。一人は縄跳びで遊んでる。男の子たちはキャッチボールをしたり、バットを振っている子もいて、それぞれに遊んでました。私は何もなかったので、後ろに見えたゴツゴツとした石壁が現れたので、その上に座りその子供達を暇そうに見下ろしていたら、その内何処からともなく声が聞こえてきました。あれ?何処から聞こえるのと耳を澄ませると、上の方から聞こえて来ます。何気に上を見上げると、小さい点ですが光が差している場所があるではないか。

なんだなんだというように、上に飛んでいくと、その光る穴は徐々に大きくなり、光の前に立つとちょうど頭が一つ通れるくらいの丸い穴だった。ここまでくれば何を言っているのかが分かる。お経みたいだ。でも声が気になったから、躊躇せずに覗き込んだら、女性と思わず視線があって驚いてしまった。相手もポカーンとした顔をしている。慌てて頭を引っ込めると、ビックリした〜と、心を落ち着かせていると、またお経が聞こえてきた。今度は焦らずその人と明るい世界を見たさで、ゆっくりと顔を出したら今度は微笑みながらその人が手招きをしてくれて、私はどうしようかと悩んでました。明るい世界で手招きしている女性と、顔を出している穴の中に一旦戻って下の方を見ると、暗闇の中遊んでいる子供達どっちを選ぶかだ。しかし下に降りても1人だし暇だしと、暫く明るい世界を見たり、暗闇の世界を見たりと交互に見てたが、勇気を出してフラフラと明るい世界の女性の元へ。懐に抱きつくように座ると、なんか安心感に浸り、先程の野球をやっていたのが楽しそうで今度は男の子が良いなっとも思ったけど、やはり次も女の子が良いと思った瞬間に夢から覚めました。




 私が確か小学4年生の頃だったか定かではないけれど、ただひたすらこの先。生きて行くのが物凄く怖い時期がありました。不安と恐怖です。何故なのかと、悶々とした時期を20代前半まで過ごしていた時、あるテレビ番組で夏の定番番組お昼に始まるホラー系の番組を観ていたのです。その時母も好きな番組だったので、一緒に観てました。その中で霊能者が生に対しての説明をしていて、そこで今まで抱えていた不安が何なのか、一気に納得してしまって、そこから不安が消えました。その言葉が何だったのかといえば。

「現在生きている中で、この先の不安や恐怖。生きてて良いのかと考えてしまうのは誰にも起こります。何も感じないわって人は前世で、人生を全うして亡くなっている為。経験値を積んだ人。だから魂がそれを覚えていて、この時代に生きていても、生きるのに不安がないのです。その一方で、不安と怖さを抱えた人は、それになった年齢に関係があります。前世でその年齢で亡くなっているため、この先を生きていないのです。だから魂が経験していないので、怖いのは当たり前です。ですから来世の為に、一杯楽しんで、綺麗な物を見てこの世界で経験を沢山積んで人生を全うしてくださいね」

 その言葉で報われました。それじゃ私は前世では10歳くらいで死んだんだなっと、夢の中でも子供の頃に死んでいると言ってましたし。

 やはり前世からの繋がりか?その10歳になった年に、幼稚園からずっと学校でいじめに遭っていたのに、その年だけ10歳になった1年だけ無性に死にたいと思った事が多々ありました。その年齢を通り過ぎたら、死にたいと思わなくなりましたよ。不思議だ出来事です。今は生きてて幸せです。


 そんな時ふっと何を思ったのか、母が言いました。

「そういえば、あなたが生まれる少し前に、不思議な事があったのよ」

 と、話を聞けば、

「お母さんがいつものように、お仏壇に向かってお経を唱えていたらね。お経の書かれた位置から、可愛い子供がひょっこと顔を出して来たのよ」

 あれ?なんか何処かで見た夢のよう……。更に

「お互いビックリした顔をしていたんでしょうね。その子供またお仏壇の後ろに隠れちゃったのよ」

 あれあれ〜。

「もう一度心を沈めてお経を唱えたら、その声に釣られたのか、またその子が顔を出して来て、今度は焦らずにおいでおいでって手招きしたの」

 困惑…。

「その子ね何度かお仏壇の中とこっちを交互に見ていたんだけど、お母さんの所にユラユラと飛んできて、座っている私の膝に横向きで座って来て、抱きしめてあげたら、安心した様な顔をして消えちゃった」

 怖がるどころか、明るく言ってきた。元々母は多少霊感が有ったので、見えたのでしょう。

 はぁ!

「そうしたらね。数ヶ月後に体調が悪くって病院行ったら、妊娠6ヶ月目だって言われたのよ。いままで、赤ちゃんに良くない食べ物ばっかり食べていたから、焦ったわよ」

 だってーー。夢だと思っていたけど、夢が現実を見せる事もあるんだなっと、もしかして100年間お釈迦様の指先で眠っていた事も、天国で会った3人の前世の話しも本当の話しなんじゃないかと思えて来た。今の姉達の性格を見ていると…その時に思ったのは、待合室で会った子供達の顔が姉達の幼少期の顔だった。


 数日後母に以前にお母さんが体験した内容を、夢でそのまま同じのを見てたと話したら、あの子はあんただったの?と、驚いてましたよ。そりゃそうだ。その直後…。

「丁度昨日お母さんね。また不思議な夢を見たのよ」

 何だと聞いてみると。

「凄い大きなお釈迦様が現れてね。あの子は前世で凄くいじめられて、辛い思いをして自殺をした可哀そうな子です。あの子をこの時代では可愛がってあげてくださいね。って、言われたのよ」

………もう何も言うまい……


 そしてそれからウン十年後の現在。天使様に言われた通り、美味しい物を散々味わったあと、この年齢で卵アレルギーになっとる…。ちょっとなるにはまだ早いよー。     

 それと同時に、自分の死に方もその時に聞いたけど、アレルギーが当たったんなら、今はそれは黙ってる。今はまだ生きてるから。あの時嫌だと言っておけば良かったかな。

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天国の夢 佐伯瑠鹿 @nyankonyanko

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