わたしを摘んで。【第二回短歌・俳句コンテスト 短歌ニ十首連作】

蒼井 狐

わたしを摘んで。

 夏の日にきみが轢かれた逢う魔時外したリングどこか物憂げ

 日常の空気残したワンルーム一人でいると非日常だ

 夜になり就寝前に歯を磨く一つ余計な歯ブラシ捨てず

 ひと思いきみの元へと飛び立とう腕の傷あとわたしの弱さ

 服装もピアスの数も変わらないきみが育てたわたしを摘んで

 

 短冊に書いた願いを思い出すわたしは未だきみが恋しい

 枯れた葉をきみと二人で踏んだ秋今は一人でおとなげもなく

 街中できみに似た人見つけては心が揺れて視界グラつく

 きみが今地上を眺めているのなら空を眺めるわたしと目が合う

 カプチーノ朝の一口思い出すこのマグカップきみが使ってた


 ピアス痕風呂場の鏡でただ見てる心も体も少し寒くて

 銀世界男女が残す足跡にわたしときみを重ねてみたり

 オリオン座結んで褒めるお利口だきみに星座を教えてもらった

 霜のつく葉っぱに手を当てあたためるわたしの手にもそうしてくれた

 きみの背を追いかけていたいつまでも今は追っても追いつけないけど


 夜空見て綺麗に霞んだおぼろ月春の気候かわたしの涙

 きみ香る毛布に抱きつき泣きじゃくる匂いも声も忘れてないよ

 夢の中そこしかきみと交われない目が覚めるのはまるで服毒

 いつまでもきみが心に残るのは外したリングまたつけたから

 ラベンダー「あなたを待つ」が花言葉ここにはきみもわたしもいない

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