二十首連作「追憶のスピカ」(第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト 短歌の部)
佐竹紫円
追憶のスピカ
行き先に君の停留所があったけれど見送る銀河鉄道
新月の夜はおそらく星たちと僕との距離がすこし縮まる
ぬくもりを思い出すときともに見た流星嵐がまたよみがえる
月のないこんな夜こそ相応しい儀式としての記憶の旅は
夜風にはかすかに君の残り香が混じって あれからもう三か月
この風も行ってしまうねどこまでも広がる夜の果てをさがして
運命はいつも囁く 遠くから誰かを照らす星のことばで
幾度も満ちては欠けてを繰り返し月が見届けてきた別れは
秒針の音だけ聴いて眠れない夜の長さは永遠に等しい
空の果てよりも遠くに君はいる、光の速さでも届かない
君が好きだったスピカは君のその清らかなたましいの色だね
かたわれを喪い闇に沈むときスピカは何を想うだろうか
五線紙を空に透かせば星たちが奏ではじめるいのちの組曲
ビブラフォンのゆらぎは星のため息でそれから君のまばたきだろう
レクイエムだったのだろう星空を海に選んだクジラのための
透明な月のピアノのきらめきはたしかに君が示した未来
君のためそっと奏でるノクターン 星としてまたいつか出逢おう
いのちとは誰にも支配できぬもの炎はいつも風に吹かれて
長い夜もいつかは明ける 永遠の存在はこの世にはないから
君のいない日々を生きるよ、僕を呼ぶ銀河鉄道には乗らないで
二十首連作「追憶のスピカ」(第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト 短歌の部) 佐竹紫円 @shienkotonoha
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