最終話 終わらない負のスパイラル

いつものように昼休憩に逢瀬を楽しんでいた。

お互いのパートナーとは違う相手…

元恋人同士は再び燃え上がるような時間を過ごしていた。


しかしながらそんな関係に終わりのようなものが訪れるとは…

まだ四人は知りもしない。


パートナーではない相手と逢瀬を楽しんだ後に慎重にホテルを抜けた。

僕ら私達に抜かりはない。

そう確信していた。

だが…



須藤家。

帰宅した夏菜と寛治が揃った時のことだった。

娘の凛桜は完全に傷ついた表情で二人に相対していた。


「ママは走くんのパパと仲良しなの?」


意味は分かっていないだろうが娘の凛桜は何処か傷ついた表情で問いかけている。


「えっと…何のこと?」


「パパは走くんのママと仲良しなの?」


続けて父親である寛治にも問いかけるようにして傷ついた表情を隠さない。


「何のことだ?」


「………友達のママが見たらしくて…」


「「何を?」」


夫婦はやましいことを隠すようにして同時に続きの言葉を待っていた。


「その…立派なホテルから出てくるのを見たって…

私の勘違い?友達の親が子供に嘘を吹き込んだの?

そんなのあり得ない…

パパとママは浮気をしているんでしょ?」


「「………」」


凛桜の言葉に二人は黙るとパートナーのことを見つめていた。


「凛桜。とりあえず今日は寝なさい。お父さんとお母さんは話し合うから」


「分かった…おやすみ」


凛桜はそのまま自室へと駆けていく。

残された寛治と夏菜は対面の席に腰掛けて話を始める。


「直美は元カノなんだ…偶然再会して想いが再燃した…」


寛治の告白に夏菜は驚きのあまり目を丸くしていた。


「最悪…って言いたいけど…

私も翔は元カレなの…同じ様に想いが再燃した…」


「そうだったのか…お互い偶然だな…」


「そうね…それで私達…どうしましょう」


「どうするって…凛桜がいるだろ…」


「そうね…お互いにもう火遊びはやめましょう」


「分かった。ちゃんと終わらせよう」


「えぇ」


そうして寛治と夏菜は火遊びの関係を終わらせようとお互いに誓うのであった。



郡道家。


「パパもママも最悪だよ…」


走は夕食の席で唐突にその様な言葉を口にした。


「何を言っている?」


父親の翔は眉根を寄せて問いかけていた。


「そうよ。急にどうしたの?」


やましいことを抱えている二人は思い当たることが多すぎて少しだけギクシャクしていた。


「聞いたよ。凛桜ちゃんのパパとママとデキているって…」


走はそう言うと泣きじゃくりながらリビングを後にする。

残された二人は突きつけられた事実に目を伏せることもなく話し合いを始めた。


「走の言葉は事実だ。夏菜は元カノなんだ…」


「偶然だけど…私もよ。寛治は元カレ…」


「そうか…僕らはどうしようか…」


「寛治との関係は終わりにするわ」


「僕もそうすると約束しよう」


「元通りに戻れるわよね?」


「お互いにそう努めよう」


二人はそこで頷く。

母親の直美は走の部屋へと向かいどうにか納得してもらえるように言い聞かせるのであった。




火遊びが終了して夏がやってきた頃。


凛桜と走の関係には変化が訪れていた。

お互いがお互いを避けるようにして過ごしている。

だが…


「もうさようならだね。僕ら家族は別の街に引っ越すんだ…」


「え…」


「またいつか…再会できることを信じているよ…」


「待って…」


「じゃあ…」



そうして十数年後…。

走と凛桜は再会するのだが…

お互いにはパートナーが居て…

しかしながら二人は…



それ以上は言わないでおこう。

言わなくとも二人の遺伝子を知っている読者の諸兄諸姉には全てを理解することができるだろう。



終わらない負の連鎖は螺旋状のように…

いつまでもいつまでも永遠に続くのであった。


               完

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元恋人と家族ぐるみの付き合いになってしまうとは…罪多き僕らの再会は正解だったのか… ALC @AliceCarp

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