第4話知らない二人
突然のことで申し訳ないのだが…
現在大衆居酒屋にて男性二人がお酒を酌み交わしている。
「郡道さんと飲むのは初めてですね。
この様な機会を設けて頂き感謝します」
須藤寛治は郡道翔に頭を下げながらジョッキを手にする。
「こちらこそです。誘いに乗って頂き嬉しい限りです」
郡道翔も同じ様にジョッキを手にすると乾杯とでも言わんばかりにお互いのジョッキをこつんと軽くあわせた。
そのまま二人はジョッキの中身を口に運んでいき軽快なトークは弾んでいく。
「仕事の方はどうですか?最近は忙しいでしょう?」
郡道翔は須藤寛治に笑顔を向けて世間話を広げていた。
「ですね。郡道さんも同じ様なものですか?」
「そうですね。今はどこも多忙でしょう。
新入社員は何かとすぐに辞めていきますから」
「そもそも入社を希望する人材が少なくなりましたね」
「ですね。今は自分一人の力でも活躍できる時代ですからね」
「そうですね。秀でた才能があれば個人で生きていける時代ですね」
「私達の時代では考えられなかった」
「もしかしたらそういう機会があったのかもしれませんが…
そこまでアンテナを張っていなかった。
今までもずっとそうだから自分もそうって何処か決めつけていました。
色々と見落としていたことでしょう」
「まぁでも今の生活も悪くないじゃないですか」
「そうですね。ところで家庭の方はどうですか?」
郡道翔はその質問に少しだけ悩んだような表情を浮かべて苦笑する。
「特にこれと言って何も無いですね。普通です」
「ですか。うちもです」
二人はその様な会話を繰り返しながら自分たちのペースでお酒を飲み進めるのであった。
須藤家。
夏菜は娘の凛桜と二人でサブスクのアニメを観ていた。
凛桜は何度もお気に入りの話数を観ては巻き戻しを繰り返していた。
「そろそろ次の話数にしない?」
凛桜に尋ねる夏菜だったが…
「やだ。この話数が一番好きなの」
「そうは言ってもね…お気に入りなのはわかるけど…」
「私は好きなものしか取り入れたくない」
「そんなこと言っていると走くんも離れていくよ?
男性は自由が大好きなんだから」
「え…?そうなの?」
「そうよ。あまり束縛すると離れていくよ」
「走くんでも?」
「誰だってそうよ。最初は心地よくても…
ある程度の距離感を保ってくれない人は受け入れてもらえないわよ」
「そうなんだ…気をつける」
「そうしなさい」
夏菜はまだ小学生の娘に何を言っているのだろうか…
などと自らに嘆息するとアニメの続きを楽しみに眺めるのであった。
郡道家。
「お父さんは?」
走は父親の存在を確かめるように母親に訪ねた。
「凛桜ちゃんのパパと飲みに行ったわよ」
「そうなんだ。どうして?」
「子供同士が仲良しだからでしょ?
お父さんも色々と考えてくれているんだよ」
「そっか…僕がなにかした訳じゃないよね?」
「なにか?悪いことしたの?」
「まさか。そんな事しないよ」
「そう。じゃあ心配しないの」
それに頷くと走は再び自室に戻り流行りのゲームをして過ごすのであった。
子供たち。
オンラインでゲームをしながら通話を繋いでいた。
「お父さんたちが飲みに行ったの知っている?」
走が先に話題を提供すると凛桜は相槌を打っていた。
「知ってるよ。仲良くなったの?」
「そうなんじゃない?僕たちが仲良しだから」
「もしかして…私達許嫁になるとか?」
「なにそれ?」
「将来結婚するって約束を親同士がしているってこと」
「そうなんだ…それはわからないな」
「そうであって欲しいな」
「そんなに僕と結婚したいの?この間もキスの話ししていたし…」
「したいよ?走くんはそうじゃないの?」
「それは…」
「考えておいてね?それでさ…」
そこから走と凛桜は雑談をしながら遅くまでゲームをして過ごすのであった。
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