第3話子供同士もなにやら…
須藤家。
「走くんがね…今度お泊りしないかって…」
娘の凛桜は母親である夏菜にねだるような形で問いかけている。
「パパに聞いてみないと」
母親である夏菜は父親である寛治の事を話題に出して苦笑して見せる。
「パパが許してくれると思う?」
娘の凛桜は少しだけ困ったような表情で母親に文句のような言葉を口にしていた。
「どうして?
親友の家に泊まりに行くだけでしょ?
何も怒られるようなことしてないでしょ?」
「そうだけど…なんとなく…相手が男の子だから…」
「だから?」
「パパ的には心配だと思って…」
「どうして?」
「どうしてか…わからないけれど…走くんと仲良くしていると…
女の子の友達が気を付けなって言ってくるから…
なんとなくいけないことしているような気がして…」
「なんで?悪い事しているわけじゃないでしょ?
そんな言葉は気にしないでいいわよ」
「そうだよね。パパが帰ってきたら聞いてみる」
「そうしなさい」
母親と娘の何気ないやり取りとコミニュケーションで二人の間には見えないけれど確かな絆のようなものを感じられていた。
二人は少しだけぎこちないがにこやかに微笑む。
娘はリビングに戻ると流行りのゲームを起動させて遊んでいるのであった。
帰宅してきた父親に娘は先程と同じ様にねだるような形で問いかけていた。
「あぁー。別に構わないよ。相手方の両親に迷惑かけないようにね。
当日はお父さんが送っていくよ」
「パパありがとう!大好き!」
そんな言葉を受けて父親は笑顔で返し風呂場へと向かうのであった。
郡道家。
「凛桜ちゃんを泊まりに誘ったんだけど…」
息子の走は母親の直美に頼み込むように、けれど少しだけ気まずそうに口を開いた。
「ふぅーん。須藤さんの両親が良いって言えば良いんじゃない?」
「ホント?パパも許してくれる?」
「なんで?子供同士なんだから何も気にしないでしょ」
「そうなの?」
「そうよ。そんな事気にしないで大丈夫よ」
「分かった。じゃあママから言っておいて」
「分かったわ」
そうして息子は頼りになる母親に感謝の念を抱きながらリビングへと向かう。
そのまま流行りのゲームをしながら長閑な時間を過ごすのであった。
「そういうわけで今度の休みに凛桜ちゃんが泊まりに来るから」
「分かった。須藤さんは?なんて言っている?」
「ん?さっき連絡してみたけど。お世話になりますって」
「分かった。そのうち家族皆で旅行にでも行こう。
もう少し僕ら親も仲良くなっておいたほうが良いだろ」
「そうね。子供同士は親友なんだからね」
二人はそこで意味深に微笑み合うと頷いていた。
父親である翔はそのまま風呂場に向かい一日の疲れを癒やすのであった。
後日。
郡道家。
「お邪魔します」
凛桜は玄関の中へと入っていきそのまま走の部屋へと向かう。
車で娘を送ってきた寛治は相手の両親に申し訳無さそうに微笑んでお茶菓子を渡した。
「須藤さん。急に申し訳ありません。子供同士の口約束でしたが…
お許し頂き誠に感謝いたします」
「いえいえ。走も今日を楽しみにしていましたから。
ご丁寧にどうも」
父親である郡道翔はお茶菓子を受け取ると呑気にも笑顔を浮かべていた。
「では私はここで。娘をよろしくお願いします」
丁寧に頭を下げた寛治に須藤の両親は笑顔を向けて見送るのであった。
帰宅してきた寛治のスマホに通知が届いている。
「すぐに帰っちゃったね…寂しい」
相手はもちろん郡道直美だった。
「当たり前だ。旦那がいただろ…」
「でも…お茶ぐらいしていけばよかったじゃん」
「また今度の機会にな。まだ普通に気まずい」
「それはそうだけど…」
「また今度な。今日は夏菜がいるんだ」
「そうだろうけど…少しぐらい付き合ってくれてもいいでしょ?」
「それはまた今度な。昼休憩にでも抜け出して会えるから」
「分かったわ。じゃあまた今度ね」
二人はそこでやり取りを終えると本日は自分の本来のパートナーと過ごすのであった。
走と凛桜はここのところ少しだけませてきていた。
「キスをすると結婚できるらしいよ」
凛桜の何気ない一言に走は少しだけ戸惑いの表情を浮かべている。
「僕と…結婚したいの?」
お互いに子どもならではの勘違いに二人は少しだけ戸惑いつつある。
「でも成人しないと結婚できないって聞いたけど…」
「え?そうなの?」
二人はその様なやり取りをしてゲームのロード画面を眺めている。
ロードが完了してゲームが開始すると二人は話題を切り替えていた。
「これ負けたほうが罰ゲームね」
凛桜の言葉に走は少しだけ戸惑いながら全力でゲームに集中するのであった。
結果は走が勝利して罰ゲームの内容は凛桜のお菓子を一つもらうことだった。
少しだけ不機嫌そうな凛桜の表情を確認しても意味がわからない走は少しだけ戸惑っているだけなのであった。
須藤家。
二人きりになるのは久しぶりだった。
何処か気まずいような雰囲気の二人は映画を流しながら会話を強制的に止めていた。
娘の存在を感じない一日は本当に久しぶりだった。
パートナーと二人きりなのにどうにも気まずいのはお互いに罪を背負っているからだろう。
しかしながらそれをカミングアウトすることもなく。
二人はただただ一日中無言で気まずく過ごしているのであった。
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