きみのこと【短歌/二十首連作部門】

海野夏

きみのこと

白い傘 白いワンピが似合うひと

蝶々を追ってふらふら迷子


ぼくが見る ど田舎の山

きみが見る 青々の木々 野辺のオジギソウ


かみなりが鳴るとにわかに活気づき

電気を消してカーテンをシャッ


まあるい目 栗色の髪 笑う口

鼻は低めでとてもかわいい


セミの音のさまざま 真似ているきみよ

それは知ってる それは知らない


三段のアイスクリーム

欲ばって食べきれないから

ぼくと分けっこ


暑いねと言いながらも楽しげに

影遊びしてバスを待ってる


せんぷうきの前を陣どり風をせき

「あー」と言わずにいられぬきみよ


きみのお気に入りコンビニアイスは

少しお高め 王道バニラ


新しい服を買ったらファッションショー

きみコレクション イン ぼくの部屋


意外にも一人映画も好きらしい

ネタバレ聞かされ 「次はきみとね」


勉強は昔から苦手なきみなのに

時々すごく博識になる


たい焼きを半分こする 2:1

悩んでくれた1のお頭


掃除中 すぐに目移り 「あっこれは」

卒アルを出すな ぼくを探すな


艶々のピアノの前に座る時

きみはぼくの知らない誰かだ


大人の味

いつか飲めるの期待してブラック無糖

今日も敗れる


ババ抜きは全戦全勝 ぼくとだけ

カードの位置は一目瞭然


シャワーより湯船が好きで

泡の出るお風呂はもっとテンション上がる


布団から出るのはぼくより遅いきみ

寝るのはぼくより早い


おはようも いってきますも おやすみも

きみの声が初めに聞こえる

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