カフェ・カプチーノの奇跡
@FatAndRound
第1話
「カフェ・カプチーノの奇跡」
1. 出会い
東京の片隅にある小さなカフェ「カフェ・カプチーノ」。ここは静かで落ち着いた雰囲気を持ち、本を読みながらコーヒーを楽しむ常連客が多い場所だった。その中でも特に目立つのが、常連の一人である平凡なサラリーマンの田中と、美術大学に通う学生の美咲だった。
田中は毎朝8時にカフェに来て、いつもの席に座り、ブラックコーヒーを注文しては村上春樹の小説を読みふけっていた。一方、美咲は午後3時頃に現れて、カプチーノを注文し、スケッチブックに絵を描いていた。二人はお互いの存在に気づいていたが、話しかける勇気はなかった。
2. 幸運のきっかけ
ある日、田中は会社で思わぬトラブルに巻き込まれ、いつもより遅い時間にカフェに来ることになった。彼が入ると、見慣れた顔がカプチーノを片手にスケッチブックを広げているのを見つけた。彼女はいつも通り美咲だった。田中はため息をつき、いつもの席に座った。
その日のカフェは混んでいて、美咲の隣しか空いていなかった。田中は意を決して隣に座り、彼女に話しかけた。
「こんにちは、いつもここで絵を描いていますね。」
美咲は驚いたように顔を上げ、にっこりと笑った。「ええ、そうなんです。あなたも毎日ここで本を読んでいますよね。村上春樹がお好きなんですか?」
田中は頷きながら、「そうです。彼の作品はいつも心に響くんです。あなたは絵を描くのが好きなんですね?」
「はい、美術大学で勉強しているんです。」と美咲は答えた。
3. 素敵な偶然
それから二人はカフェで会うたびに話すようになった。田中は美咲の絵について感心し、美咲は田中の読書の話を楽しんだ。そんなある日、美咲は意を決して一枚の絵を田中に見せた。それは、カフェの一角で本を読む田中の姿を描いたものだった。
「これはあなたです。いつも真剣に本を読んでいる姿がとても素敵だと思って、描いてみました。」美咲は恥ずかしそうに言った。
田中は驚きと喜びで胸がいっぱいになった。「ありがとう、美咲さん。こんなに素晴らしい絵を描いてくれるなんて、本当に嬉しいです。」
その後、二人はますます親しくなり、カフェ・カプチーノは彼らの特別な場所となった。
4. 意外な結末
ある日、田中は美咲にディナーに誘おうと決意した。しかし、彼がカフェに到着すると、美咲の姿がなかった。カフェのオーナーである中村さんが彼に声をかけた。
「田中さん、美咲さんからこれを預かっています。」中村さんは小さな封筒を手渡した。
田中は封筒を開けると、中には手紙ともう一枚の絵が入っていた。手紙にはこう書かれていた。
「田中さんへ、
今までお話できてとても楽しかったです。実は、私は留学のためにフランスに行くことになりました。これからもあなたの素敵な時間が続くことを願っています。
美咲」
そしてもう一枚の絵には、カフェで二人が笑顔で話している姿が描かれていた。
田中は少し寂しさを感じながらも、微笑んだ。彼は美咲との思い出を胸に、新たな一歩を踏み出すことを決意した。
5. 新たな始まり
それから数ヶ月が過ぎ、田中は相変わらずカフェ・カプチーノに通い続けた。ある日、新しい常連客が現れた。彼女は日本語学校の教師で、フランス文学に詳しい女性だった。彼女は田中の隣の席に座り、村上春樹の本について話しかけてきた。
「こんにちは、その本、私も好きです。特に『ノルウェイの森』が好きなんです。」
田中は微笑みながら答えた。「本当に?僕もその本が大好きです。」
こうして、カフェ・カプチーノでの新たな出会いが始まった。田中は過去の思い出を胸に抱きながらも、新しい未来に向けて進んでいくのだった。
カフェ・カプチーノの奇跡 @FatAndRound
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます