もう誰も助けてくれない

第1話

「おい、聖菜オレの靴舐めろよな」

クラスの不良グループ（悪名拡散）

のリーダー不破が授業中に美穂聖菜に命令した。

　教師も知らん顔だ。

　聖菜は地味で目立たない暗ーい子だった。

顔は美人でイケてるがどこか暗い影が

つきまとっていた。

「えっ、でっ、でも」

聖菜がモタモタと答える。

「えっ、なに、聴こえない」

不破がわざとらしく、耳に手を当てがって

聴く真似をした。

「ハッキリ言えよ」

「不破くん、わたしそんなことできません」

「不破くんだって聴いたかよ、みんな」

不破がクラスのみんなに伺いを立てた。

「オラオラオラァ」

不破が土下座していた聖菜の後頭部に

靴底を押しつけた。

「やめて、やめてください」

聖菜が涙ながらに懇願する。

クラスメートたちも苦笑した。