第56話 宴


「日が傾いてきたな。そろそろ、セベシュ村へ帰ろうか。」

「は~い!」


九郎がランクルの運転席に座って、花梨が助手席に座った。

俺は後部座席でひと眠りしたかったんだけど、

2列目の真ん中に座らされた。

左はサポネで、右はパメラだ。


ランクルが動き出すと、ひどく滑らかにグングン加速していく。


「・・・なあ、全く振動がないんだけど、また、花梨がなんかしたの?」

「ナニソレ?快適になったのに、文句言うワケ?」

花梨が行儀悪く、後ろ向きに膝立ちして、俺をにらんだ。

「いや、もうなんていうか・・・」


花梨は一転して、得意げな笑顔を浮かべた。

「ウッシッシ!アッシの新魔法、「ハイウェイスター!」」

「ハイウェイスター?」

「そう!地面の10センチ上で車が走っていく所の空気を

オートで固定しているんだ。」

「凸凹を埋めるんじゃなく、高架の上を通っているってことか!

凄すぎる!」


「「「「天才か~!!!!」」」」

九郎、花梨、サポネが俺と一緒に叫んだ!

「「「「「「「アハハハハハハハハハハ!!!」」」」」」

みんなと一緒に笑いながらサポネがハモッた喜びのガッツポーズをしていた。

可愛い。

抱きしめたい。けど、止めておこう。


「100キロくらい出せるから1時間くらいでセベシュ村に到着するよ。」

「ホント、凄いわ・・・

そういえば、俺って何日、あそこにいたの?」

「丸2日ですね、はい、三蔵さん、お茶をどうぞ。」

右隣に座っているパメラがお茶のペットボトルを渡してくれた。

「ありがとう!ゴクゴクゴク!うま~!」


「サニィ、あの中で何か食べたにゃ?」

「いや、水飲んだだけ。」

「にゃにゃ!お腹すいてる時はプリンにゃ!

・・・サポが食べさせてあげるにゃ!」

サポネは恥ずかしそうにしながら、スプーンにプリンを載せた。

「おおっ!あり・・・」

お礼を言おうとして、ふとバックミラーに映る九郎と視線があってしまった!

九郎の目が怖い!超怖い!


「サポネ、ありがとう。だけど、こぼしちゃいけないから自分で食べるね。」

「・・・はいにゃ。」

サポネは残念そうにプリンとスプーンを渡してくれた。

「うん、美味い!もう、最高だな、これ!」

サポネに向かって大げさな感想を言いながらプリンを食べ終わった。


すると、またパメラが話しかけてきた。

「三蔵さん、寂しくて痛い時間が長くなってごめんなさい。」

「全然だよ!助けてもらって最高だよ!」

「ベハルカ村の冒険者どもが、ヒュドラは東に行ったって言うから、

まず東を探したんです。」

珍しく、パメラが毒のある口調だった。


「サポは北が良いって言ったにゃ!」

「そうなんです!東を探してみたらいなくって1日、無駄にしてしまいました。

それに、やっぱり1時間に1回は浄化をしないといけなかったこともあって

時間がかかっちゃったんです。ごめんなさい。」

パメラが申し訳なさそうに目を伏せた。


「あんな毒の大地の真ん中に助けに来てくれたことだけで、

もう最高にうれしいよ。」

「ホントに、三蔵は馬鹿みたいに前向きなんだから。」

「おいおい、馬鹿って。」

「「「アハハハハハハハハハハ。」」」



セベシュ村に戻った。戻ってきたよ。

たった2日間、いなかっただけなのに、村の中に入ったら泣きそうになった。


いつもの温泉旅館建設予定地には200人以上が待っていた。

俺の帰りを!


「兄貴!よかった!ホントによかった!」

俺が車から降りるなり、真っ赤な目をしたウォーレンに抱きしめられ、

背中をバンバン叩かれ、感激した。

「ありがとう。心配してくれて。」


そして、スラティナ村の人たちから一斉に

「お帰り~!」

と声を掛けられた。嬉し涙がこぼれちゃったよ。


ウォーレンがのくと、カスパーが微笑んでいた。

「ダメですよ、心配かけちゃ。

トーエンのみんな、火が消えたみたいだったんだから。」

「うん、反省したわ。」

「伝説の魔獣を倒すとか!流石っす!」

ライナーが親指をぐっと立ててくれ、

ルイはにっこり笑いながら、力強く、手を握ってきた。


こいつら、いいやつだ。

もう、舎弟とすべきだろうか?


そんな中、九郎が温泉旅館をリアル化すると、

たちまち村人たちは温泉旅館に吸い込まれていった・・・


俺を待っていたのではなく、温泉旅館がリアル化するのを待っていたのかよ!


ガックリきていた俺だが、空気の読めないウォーレンがハイテンションで、

そっくりな二人の男の子を押し出してきた。

「兄貴、兄貴!俺たちの新しい仲間、マーズとヒューズだ!」


その顔立ちは、シベリアンハスキーを想像させて、子どもなのにワイルド系だ。

この子たちは確か、アクエルと一緒に来た孤児院の子で犬人と人のハーフの双子だ。


「「僕、マーズ(ヒューズ)です。

ちょっと前に魔術師(神官)のジョブをもらったんだ。」」

笑顔の二人が同時に話し出すと、見事にハモッていた。凄い。


うん、だけど、なんで今頃、こんな話をするんだ?

俺はお腹が空いているんだ!


だけど、ニコニコ笑顔で対応し続けた。

「そうなんだ、おめでとう。」


「「それで、ウォーレンさんに、オポチュニティズに入るようスカウトされて、

そのことをトーエンに伝えに行ったらね、

ちょうど、三蔵さんがヒュドラを倒しに行ったすぐ後で、

花梨さんに、しばらくトーエンに入れって言われたんだ。」」


ここまでずっと、ハモッっている~!凄すぎ!

えっ、双子ちゃんってこういうものなの?


「ほうほう。」

「「そうしたらね、突然、二つ名【ジェミニ・サン(ムーン)】をもらったんだ!

それに、スキルがいっぱい増えたんだよ!

収納(回復(中)でしょ、光魔法(解毒)でしょ、土魔法(加護)でしょ・・・」」

楽しそうに指折りハモッて数える双子ちゃんを遮って絶叫した。

「ちょっと待った~!」


「俺!俺!ヒュドラを倒したの俺なのに、何にもなかったぞ!」

「あのデカイ奴で倒したんだろ?」

アルテが冷静にツッコんできたので、頭が一気に冷えた。

「ああ、そうだ。」


「あれは九郎の魔道具だよな?

一番、分かりやすく言うと、九郎が矢を放った。

遠い遠い所で当たって、ヒュドラが死んだ。

だから、矢を放った九郎の周りのパーティメンバーだけ、成長したんだ。」

常識だろ?ってアルテが肩をすくめた。


だけど、俺は納得がいかなかった。

全く!これっぽっちも!


「俺!俺!俺がこの手でヒュドラを殺したのに!

死にそうになったのに!

なんにもないって、ひでえ!」


跪いて地面をたたく俺をアルテが冷然と見下ろした。

「何、言ってんだ?助けてもらって最高だとか言ってただろ?」

「いや、そうなんだけど!だけど!だけど!」

悔しくて吠え続ける俺をみんなは呆れたように見下ろしていた。


そんな中、サポネが跳ねるような足取りで近寄ってきた。

「サニィ~!今晩は特別に、トーエンだけでバーベキューだにゃ~!」


「「やった!僕たちもトーエンだから一緒にいいよね!」」

マーズとヒューズが歓声をあげて、温泉旅館へ向かって走りだした。

鏡に写っているかのように同じ動きだ!凄い!


「お前らはオポチュニティズだ!

だけど、俺たちも元トーエンだからご相伴に与ろう!」

ウォーレンが双子を叱ったあと、ニコニコしながら追いかけ、

カスパー、ライナー、ルイも涎をたらさんばかりの表情でついていった。

オポチュニティズ!また今度、〆てやる!


「三蔵さん、もう気を取り直して、バーベキューを楽しみましょう!」

笑顔を浮かべたパメラが手を差し出してくれた。


「サニィ、困った時はサポが助けてあげるにゃ。」

サポネがぴょんとはねて、上目づかいで俺を見つめた。

「・・・ありがとう、パメラ、サポネ。」


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


その後、子どもたちを寝かしつけてから、

俺、九郎、花梨、アルテ、グレイスだけで2次会のワインパーティが始まった。


「スパークリング、ロゼ、赤、白の順番でいくじゃん!」

「「おおぉ~!!」」


「「「「ヒュドラ退治と三蔵が帰ってきたことに、乾杯!」」」」

「ありがとう、みんな!」

5人でグラスを掲げて乾杯し、スパークリングワインを飲み干した。


「これ、本当に美味しいな!」

「ええっ、シュワシュワ、最高です!」


「ロゼも飲んでみるじゃん?」

「おおっ、ロゼも美味しいな!」

アルテ、グレイス、花梨がガンガン飲んでいく。


俺と九郎はついていけないのだが、

三人とも楽しいお酒だったから、

適当に話をしながら、チビチビと色んなワインを味見していた。


そして、気が付いたら身動き取れなくなっていた。

少しずつ、両隣が接近してきて、ついに、

左にアルテが、右にはグレイスが俺にしなだれかかってきたのだ!


両隣からいい匂いが・・・おう、桃源郷はここにある!


だが、正面の視線がうっとりすることを許してくれない。

正面には目が座っている花梨が、

その隣には、さっき、騒がしすぎると起きてきたパメラが

並んで俺を睨みつけていた。


ちなみに、九郎はいつの間にかいなくなっていた。


「三蔵~、聞きましたよ~、年上の色っぽい女が好きなんでしょ~、

私のおっぱいとか、お尻に釘付けだもんね~

ねえ、こっそりと触ってみる?」

上機嫌のグレイスが耳元で甘い吐息とともに危険なセリフを囁いた。


「ホント・・・いてて!」

左のほっぺがアルテにぎゅーぎゅーにつねられた!

「子持ちに手を出したらダメだ!

それより、何より、パメラ様はまだ子どもなんだ!

絶対に手を出したらダメだぞ!

分かったな!」


ここまで大きな声だったアルテが声を潜めた。

「まあ?我慢が難しいときは私に相談するがいい・・・」

ぐはっ!キタ!ツンデレ!超可愛い!

いつか「くっ殺」って言わせてやる~!


ギン!目の前の視線の殺気が尋常じゃないレベルに達した!

怖すぎる!


花梨がビシッと俺を指さした。

「三蔵~、アンタ、ハーレムなんて100年早い!

それより先に、身長175センチになるじゃん!」

この前は確か、29センチ伸ばしたら・・・だったから、

4センチ分、好感度上がったけど、高2から25センチ背を伸ばすって無理だろ?


「ハーレム!」

パメラはそう大きな声を出すと、俺のグラスを奪って、白ワインを一気飲みした!

「パメラ!一気飲みは危ないんだよ!」


パメラにジト目で見られた。

「・・・先代の聖女は、転移者の一番功績が大きかった人と結婚したそうです!

もちろん、一夫一妻です。」

「ハーレムなんてダメです!」

「ああ、ダメに決まっている!」

甘い雰囲気が消し飛んでしまい、一歩間違えれば死って感じになった。

四面楚歌ってこんなカンジ?

怖い!


だけど、日和るワケにはいかない!

スマン、九郎。

お前も巻き添えになってもらう。

「はっはっは!だが、九郎はロリ・ハーレムを!

俺はお姉さんハーレムを作るんだ!」

「下種!」

「最低!」

「ぐほぁ!」

両隣からキッツイ肘鉄を食らって悶絶した。


「チビ!」

「お姉さんって!」

土下座の姿勢で苦しむ俺の背中を花梨とパメラが踏みつけた。

「ぐえぇ~。」

「明日も早いし、そろそろお開きにしようか?」

「「「「賛成~!」」」

女子4人は仲良く寝室に戻っていった。

ホントに怖いわ!


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

人気がないので打ち切りです。無念。


この後は、お姉さんと少女と出会い、その人たちを守るために遠征する。


そのころ、ちょうど異世界転移して1年経って、

イリス教国に他の3人の聖女たちがあつまり、

パメラが圧倒的にトップなことがバレる。


パメラを殺せと命じられた同級生や、

三蔵たちを殺してパメラを傀儡にしようとする同級生と戦う、

予定でしたが・・・


読んいだだき、ありがとうございました。

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異世界で俺は年上ハーレムを、親友はロリハーレムを作ってみせる!同級生は・・・「どうぞ、どうぞ。」 南北足利 @nanbokuashi

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