エピローグ

 あれから数ヶ月の時が過ぎ。

 俺はなんとか二年生に進級できた。


 俺自身が部活の合間に猛勉強し続けたのもあるが、日下はもちろん、稲本や岳志も時たま勉強を教えてくれたおかげだ。

 しかし進級できたとはいえ油断は禁物。ここで赤点を取ったら日下たちに合わせる顔がないので、バカなりに日々予習復習に四苦八苦している。


 園田さんは最高学年となり、最後の夏に向けて鍛錬の毎日を送っている。

 金子は陸上のスランプを乗り越えて、大会で結果を残しはじめているとのこと。岳志とも頻繁に出かけている。

 仁原に至っては途中入部にも関わらず、あっという間にレギュラーを奪い取り、部のエースにまで上り詰めてしまったとか。

 まったく、どこにそんな才能が眠っていたんだか……けど、やはり何事も成功経験があると楽しさが増し、更に頑張るようになる。奴は俺と同じく勉学の壁にぶち当たりながらもラグビー漬けの生活を楽しんでいる。


 俺はというと、【学生広場】で自身の個人情報を漏らしてしまったものだから、騒動後しばらくは面倒な展開になっていた。

 顔と名前が一致してしまったらしく、度々外で野郎から冷やかしのお声をかけられる事案が発生。

 特に実害はなかったので適当にあしらったけども、面白おかしく絡むのは遠慮してほしいぜ。こちとら道化じゃないんだよ。

 女の子からは一切お声がかからなかったのも切なかった。


 テニスは龍介や稲本を目指して左腕でラケットを振っている。最初は掴めなかった感覚も慣れというのは恐ろしいもので、一度コツを掴むとどんどん技術が向上していった。

 結局俺を苦しめた右肘の痛みの原因は分からずじまいだったが、過去は過去。今は自由に操れる左腕とともに結果を残すべく鍛錬あるのみだ。


    ▲▲▲


「ねぇ俊哉!」

「寒川くーん」


 二年生になって変わったことがもう一つ。

 岳志、稲本、そして日下とも同じクラスになった。

 おまけに日下とは出席番号が前後なのでなにかと絡む機会が増えた。


「今日テニスの練習付き合いなさいよ」

「勉強会、しよー?」

「あー……えー」

 しかし、その状況が必ずしも良いことばかりだとは限らない。


「「どっちを選ぶの!?」」


 事あるごとに、二人から難問を突きつけられるようになってしまった。

 二人とも可愛いし、性格だって悪くない。冷静に考えなくても両手に花の状況なのは分かってる。分かってるけども……。

「え、いやえっとぉ~……」

 なんでこーなっちゃうかなぁ!?

「あはっ。俊哉の奴動揺してるわ♪」

「普段ツンツンしてるのにかわいーんだ~♪」

「ふぐうぅッ……!」

 妙なところで意気投合する二人から半分オモチャにされる始末。

「た、岳志! 遠目から見てないでなんとかしてくれ!」

 その光景を微笑みながら眺め続ける岳志。頼むから助け船をくれ! 俺を救えるのはお前だけなんだ!

「人の恋路をなんちゃらかんちゃら」

「おい岳志!? おーい!? タケシィィーーッ!!」

 こんなところに馬いねーから!? 蹴られて死んじゃう危険性ゼロだから!

「くそっ、岳志も同じ目に遭えばいいのにっ!」

 俺よりも遥かに良い奴なんだ。岳志を魅力的だと感じている女の子はきっといるはずなんだぞ……!

 心の中で岳志のもとに女の子が集結する呪い(?)をかけつつ思う。

 進級前のあの頃。【学生広場】を拠り所にして他人への恨みつらみ、嫉妬や憎しみをぶちまけて鬱憤を晴らしていたあの頃の俺には二度と戻らない。


【学生広場】には今後ともお世話になる気満々だ。

 ただし、それはSNSの話じゃない。SNSの【学生広場】はもう必要ない。

 当たり前の事実を、二年生に上がってからようやく気がついたから。


 本当の学生広場とは、今まさに俺の眼前に広がっている光景なのだから。



 大変ながらも賑やかで楽しい一年が、はじまってゆく――――


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 読んでいただきまして、誠にありがとうございました!

 これにて本作は完結です。


 本作は2011年にプロットを作ったため、当初は携帯電話といえばスマホではなくガラケーが主体でした。

 なので掲示板という言葉が名残でちょいちょい出てきております。

 それにしても完結まで時間かかりすぎですね……他の作品と並行しておりこの有り様となってしまいました。申し訳ありません。

 10年以上の時を経て、ようやっと書ききった形となりました。

 起承転結を四章に分けて書いてみましたが、いやはや果たして起承転結しているのかどうか……。


 最後に、読んでくださった方に、再度深く感謝いたします!

 ありがとうございました!


 以上です!

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二つの人格 小鳥頼人 @ponkotu255

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