第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト短歌の部

茅花

【短歌】二十首連作部門

君がその恋と呼んでる薄着では 日焼けするだけ 冬は越せない  


お気に入りマフラー最近見当たらず 諦める朝 誕生日 雨


土砂降りの ガードレールに巻かれてる 派手なマフラー、あれ私のじゃん


工場の煙るオレンジ 忘れてく スチームパンク 舞う雪が道


物言わず 吹雪の中で 海の塔 青のまばゆき 間接照明


語る未来 贈ってくれた 約束も 降るたび溶けた 散り淡雪


蝉よりも君は儚きキリギリス 先を見ず今 陰に彷徨う


君がその首に巻いてる 蜘蛛の糸 自分で吐いた 甘い言の葉


午後休のベンチから見る海の塔  ひとり 果て無く遠のき麓


来ない未来 守るつもりのない誓い 知ってるよ この冬は明けない


いつまでも咲かない桜 待ちぼうけ  ふたり 枝垂れる 氷点下の春


一日ついたちの 朝のサイレン 犬の鳴く 減った連絡 増える沈黙


雨上がり 君は何度も振り返る 視線の先には新しい ひと


背中向け あたかも脱兎 霧の中 すぐ見失った 後ろ姿を


赤い目で被害者のようにウサギさん 心配しないで 追いかけないから


罪悪感?他に言葉を知らないの? 自分を守る呪文残して


ねえ君は ほんとに僕を好きだった? 届かなかった 最後の質問


さよならも告げずに消えた君はもう あの夜冬の中だけに


掠れゆく 君の面影 砂埃 通り過ぎるは 運ぶ春風


境界に ただ往き交いしる冬の 君と出会った すれ違うため

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第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト短歌の部 茅花 @chibana-s

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