この世をばいでて帰らず夜寝もせずボイジャーという見つめる者は
この世をば
いでて帰らず
ボイジャーという
見つめる者は
【筆者より】
ボイジャー(1号と2号)は1977年9月に打ち上げられ、当初の目標は木星と土星、その衛星や環の探査であったため、寿命は5年だったはずなのに、後の2012年8月下旬には太陽圏(太陽風の及ぶ領域)を超えて星間空間(恒星と恒星の間に広がる空間)の航行に入った。
ボイジャー1号がいでてから2024年で47年が経つ。電波が届くのに片道でさえ、約22時間半かかるという。
1977年。星の年。
初めて日本の静止気象衛星『ひまわり』が打ち上げられた。映画『スター・ウォーズ』が公開された。ボイジャーが旅に出た、ゴールドディスクを携えて。
ボイジャーが撮影した様々な写真は、かつて航海士たちが命懸けで海を越えた先に手に入れたスパイスのように刺激的で、滅多に手に入るものではなかった。
ここでもう、お気付きかもしれないが"Voyager"は[航海者]という意味合いを持つ。
航海は風を受けて進み、
ボイジャーはかつての航海者とは違うからポラリスの位置を探して進むことはないだろう。だって帰ってくることは前提にないのだから。
でもやっぱり、このボイジャーについて思うところがあるのは【放射性同位体熱電気転換器(RTG)】という電源(原子力電池)についてだ。温度差発電といってシンプルに言えばプルトニウムから発せらる熱を電気に変える(詳しい説明は他サイトの方が正確で分かりやすいと思う。強調すべきはスマホのバッテリーなどとはメカニズムが違うことだ)。
長年の航行で、この電池の温度が下がっているらしい。そのせいで、出力も低下しているという。
この温度が下がって、いずれは稼働停止してしまうだろうという因果関係が、人間そのもののようで、本当に切ない。
それでも見出せること。
強く永い孤独感が纏わり付いたとしても、きりりという張りを以って支えるものこそが、使命感なのだと。
ボイジャーと、その関係者に敬意を表して結びとす。
2024/06/01 上月祈
Voyager, Sleep tight. 上月祈 かみづきいのり @Arikimi
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