暴走族に入りたい
不登校でも夏休みは特別な感じがした
毎日ゲームして漫画読んで笑っていいとも見て・・・
は変わらなかったが、新しく気になることがあった
その頃、ジュニアヤングオートと
ティーンズロードという割と若者向けの雑誌が売ってあり
両方ともバイクに関する雑誌であることに変わりはないが
ティーンズロードは暴走族に関する情報や今でいう
ストリートスナップのような特集がなされており
僕はティーンズロードを愛読していた
とはいえ
ヤンキーだったかと言われるとそうではない
ただ暴走族が好きだったのだ
派手に改造したバイクに憧れていたのである
高校デビューを夢見ていた
全国各地に存在する暴走族のメンバーのプロフィールによると
彼らの多くは我々と同じ中学生か少し年上の高校生だった
高校には行かずに日中は仕事をして夜は暴走族の活動に
勤しんでいるメンバーも存在したようだが
高校に行かないと言うと母が悲しむ
高校生になってから母に
「アルバイトをしたい」と言った
母はものすごく怖い顔で
「何に使うお金が欲しいの一体?」
と聞いてきた
バイクに関する雑誌など読んでいたので多分薄々
勘づいていたのだろう
うちには歳の離れた兄がいる
彼は高校に進学せずに工場でアルバイトをしながら
暴走活動に勤しんでいた
もう一人兄がいたが
彼も暴走族に所属していたものの
16歳になる前にシンナーによる幻覚か
マンションの高層階から飛び降りて死んでしまった
祖父もバイクに乗っていたし
叔父もバイクに乗っていた
これは何かの血筋なのかもしれない
「免許をとってバイクに乗りたい」
と正直に母に話すと
彼女は烈火の如く怒り
そんなことのためならアルバイトはしてはいけないと言い放ち
祖母に電話をかけ
「うちの子供たちはどれもこれも暴走族に入りたがる
私の教育が間違っていたのだろうか」と愚痴り始めた
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1990 西宮今日子 @kyouakustardust
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