第九二話 エロゲのヒロインと化した主人公達
纏装姫士リベリオンライフの世界観は、現代ファンタジーそのものである。
ゆえにその生活様式は、現代日本におけるそれとほとんど変わりがない。
よって朝の目覚めは、携帯端末のアラームによるものとなっていた。
事前にカエデから渡されていたそれが、けたたましい音を鳴らし、こちらの意識を無理やり覚醒へと導いてくる。
「…………」
瞼を閉じたまま、俺はアラームを止めるべく、枕元にある携帯端末へ手を――
伸ばす途中。
むにゅり、と。
柔らかな感触が、手の甲から伝わってきた。
……朝方ゆえに、脳がまともに働いていなかったのだろう。
俺は無意識のうちに、その感触を追い求め……
気付いた頃には既に、それを揉みしだいていた。
「んぁっ……♥」
小さな喘ぎ声を発したのは、キリカ……ではなかった。
そもそも彼女の乳房はこんなにも豊かではない。
では、我が妻達の誰かが夜半に合流し、シーツの中に潜り込んできたのかと言えば……それもまた、否であろう。
この重量感と柔らかさは、こちらの記憶にないものだった。
もにゅん、もにゅん、と。
乳房を揉み続けながら、俺は瞼を開けて、相手の姿を目にする。
果たして、この柔らかな爆乳の持ち主は、
「んんっ……♥ この、遠慮のない手つき……♥ ますます気に入ったで、アルヴァート……♥」
時雨アスカ。
薄手の寝間着を纏う彼女の乳房は、下着に覆われてはおらず、ゆえにナマの感触を掌に伝えてくる。
「ふふ……♥ 現状を把握しても、手を止めへんとは……♥ ホンマ、剛毅な奴やなぁ、アンタ……♥」
以前までの自分であれば、すぐさまに手を離していただろう。
異性と深い関係性を持つことに対して、消極的だったからだ。
しかし今。
幾人もの異性と肉体関係を結んだからか、人格面に大きな変化が現れている。
即ち……
据え膳は、食わねば損である、と。
「ふぁっ……♥ この攻め方……♥ ずいぶん、手慣れてるみたいやなぁ……♥」
揉み捏ねていた乳房の先端に対し、アプローチをかける。
そうしていると、朝方特有の生理現象が、一層強いものへと高まっていき……
「うわ……♥ なんやこれ、ごつ過ぎやろ……♥」
シーツの内側にて。
アスカの手が、動作する。
「男性経験なんて、一回もあらへんけど……それでも、アンタが男として規格外なのは、十分わかる……♥」
シーツの一部が上下に揺れ動く。
そうして、アスカは艶めいた吐息を漏らしながら。
「アンタとやったら、ウチ……♥」
本格的に、そういった行為が始まる……
直前。
「なぁあああああああにやってんのよぉおおおおおおおおおおおおッッ!」
同居人であるキリカが、現状に気付いたらしい。
ベッドのすぐ傍にて、彼女は仁王立ちの状態でこちらを睨み据えており、
「あ、あああ、あたしの部屋で! い、いいい、いかがわしいこと、するだなんて!」
「なんやキリカ、混ざりたいんか? せやったら――」
「んなわけないでしょ、このクソ馬鹿ぁあああああああああああああああッ!」
頬を真っ赤にして叫びつつ、アスカへと飛びかかる。
そうしてキリカは無理やり、彼女をベッドから引き摺り下ろすと、
「そもそもっ! なんであんたがここに居んのっ!?」
「いやぁ~、アルヴァートのことが気になってなぁ~。せやから夜中に部屋へ忍び込んだってわけや」
「意味わかんない! そこに至るまでのプロセスがまったく理解出来ない!」
「あはははは。それほどでも~」
「褒めてないわよっ! むしろけなしてんだけどっ!」
叫びつつ、アスカを部屋の外へ追い出そうとするキリカ。
それに従いつつ……
アスカは流し目でこちらを見やり、一言。
「ほなな、ダーリン♥」
彼女の視線に込められた熱意は、実に強いものだった。
……どうやら、こちらがこの世界に介入したことによって、アスカはポジションチェンジを果たしたらしい。
主人公から、ヒロインへ。
だが、それは何も、彼女に限った話ではなかった。
「あんた――」
アスカを退室させた後。
激したままの様子で、こちらへ目をやるキリカ。
だが、その瞬間。
「ど、どどど、どうなってんのよ、それ……!?」
彼女の視線が、ある場所へと集中する。
「……見るのは、初めてか?」
「あ、あああ、当たり前でしょっ!」
さっきまでの激怒はどこへやら。
キリカの紅潮した頬の意味は今、完全に別物へと変わっていた。
「ね、ねぇ」
「なんだ?」
「そ、それ……小さくしないと、困るわよ、ね?」
「まぁ、そうだな」
「じゃ、じゃあ、さ……」
しばらく口をもごつかせてから。
キリカは、次の言葉を叫んだ。
「あ、あああ、あたしがっ! 小さくするの、手伝ってあげるからっ! か、感謝しなさいよねっ!」
以前までの俺だったなら。
彼女の提案を拒絶していただろう。
だが、今の俺は、据え膳をかっ食らうことに躊躇いがなかった。
ゆえにこそ。
自分の本意としては、彼女の行為を止めるつもりは、ない。
「うわっ……! ほ、ほんと、どうなってんのよ、これ……!」
こちらの目前にて座り込みながら、上目使いでそれを見つめるキリカ。
そんな彼女を見下ろしつつ、思う。
これもまた、選択の一つではなかろうか、と。
彼女を止めるか、否か。
本意としては、止めるつもりがない。
だが、正解を引かねば、キリカはこの世界ごと、凄惨な末路を遂げてしまう。
さて、どちらが正解なのか。
…………この世界は、アダルトゲームのそれである。
ならば、そこに規定されたシナリオもまた、そういう内容ではなかろうか。
であれば。
「ぬ、脱がす、わよ」
「あぁ」
キリカの行為を止めないのが、正しい選択である、と。
そのように結論付けたがゆえに。
「っ…………!」
生唾を飲み込むキリカ。
そうしてから。
「た、確か……本の中では、こうしてたわよ、ね……」
アダルトゲームの登場人物として、相応しい行為をし始め彼女の姿を、俺は静かに見守りつつ――
正解を引き当てたことに対して、安堵するのだった。
~~~~あとがき~~~~
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王国の闇を支配する最強最悪の貴族(陵辱系エロゲ主人公)に転生した俺、アブノーマルな展開は嫌いなので普通に穏やかな生活を……送ろうとしてたんだけど、気付いたら『ある意味』原作シナリオと同じ状態になってた 下等妙人 @katou555
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