第43話 ラーズグリーズの謀略
「なんですって?
そんなことダメに決まってるじゃない」
さすがにスクルドも気がついたようだ。
ラーズの計画は、ユグドラシル王国の第三王女、つまりラーズグリーズことイリアス王女が、魔王である俺のところに輿入れするという意味だ。
ラーズは澄まして言った。
「王国は第三王女を人質に出す代わりに魔王国という同盟国を得る。
魔王国から迎えに来たのは、魔族の王ではなく、勇者一行の一人。
国民は魔族に王が人族だった誤解する。
王女が嫁ぐ魔王国に親しみを感じる。
完璧な計画でしょ。」
と自慢げに言った。
「輿入れするのが第三王女じゃなくてもいいでしょ?」
とスクルドが抵抗するも
「よく考えなさい。第三王女が輿入れするのと、ここに私がいるのと、何も状況は何も変わらないでしょ?
じゃあ貴方が第三王子と結婚する?」
とラーズに言いくるめられた。
「筆頭、負けるとわかる戦いはしないものです。」
「レギン、女には負けると分かっていても戦わなければならない戦いがあるのよ。」
と食い下がった。
「これは独り言だけど、王国から嫁いできた王女と、部下の一人と結婚したとして、どちらが正室かしらね?」
とラーズが煽ると、スクルドは怒って
「ムッキーーーー!そんなの関係ない!
早い者勝ちだよ。襲ってでも既成事実を作ってしまえば勝ちだから!」
と言った。
キッと俺の方を見たその目は獲物を狙う戦士の目だった...
こいつらのじゃれあいは今に始まった事ではないが、俺も板挟みになるのは困りものだ。
ラーズの計画がどこまで本気かは分からないが、王国と国交を結ぶのは悪くないと思った。
「輿入れのことはおいといてだ。
王国と国交を結ぶのまでは異論はない。
知り合いも結構できたからな。仲良くできればそれが一番だろ。
となると、障害は教会と宗教国家か?」
と俺が呟くと、ラーズはうなづいた
「 では手始めに各部族をまわって支持を取り付けるのが先だな。」
という俺の意見に、スクルドが
「それではワーウルフの子供達を送っていきましょう。私もお供します。」
と言ってきた。
「そうだな、戦争の火種は早めに消したいしな。ワーウルフの村へ行こう。」
俺達は、ワーウルフの村へ子供達を送っていく事にした。
ワーウルフの村へは俺、スクルド、レギンで行く事にして、ラーズは同行を断った。
「私にはまだ国でやらなければならない事があります。
スクロールを用意してますので、魔王様の魔力を少しいただけますか。
私が必要な時にはいつでも召喚で呼んでください。」
とラーズは言った。
そして俺が、ラーズの取り出した瞬間移動のスクロールに魔力を注入すると、
「あっ、必要な時でなくても会いたくなったら呼んでくださいね。」
と言って王城に帰って行った。
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魔王の俺が勇者召喚に巻き込まれたんだが... 海野百合香 @yzfr699
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