第42話 これからのこと

第四席は敵

ラーズが間違っているとも考えられない。

しかし、第四席が敵対するとは想像できなかった。

ラーズが説明できないということは、今は聞かない方がいいということだ。


「さて今までの経緯はわかってきたが。

これから俺たちがどうすべきか?だ。」


俺は俺の考えを皆んなに説明した。


「俺は魔族を守りたい。

そして人族とも敵対したくない。

まあ、できる範囲となるが、

今回もできる限り足掻きたいと、

そう思っている。」


3人は俺の話を静かに聞いてくれている。


「正直言って俺は、戦うことが大嫌いな魔族らしからぬヘタレだ。

前世ではお前たちに尽くしてもらったが、今世では俺の都合に巻き込ませるつもりはない。

皆んなには自由に生きてもらいたい。」


と俺が言うと、スクルドは


「この世もあの世もありません。

魔王と私は一連托生一心同体です。

 自由に生きろというなら魔王様の助けになるっていうのが私の願いです。」


と言った。

レギンは、スクルドの言葉に頷くと静かに語り始めた。


「私は、ダークエルフと吸血鬼族の混血です。

 永遠とも思われる寿命は、どちらの種族にも受け入れてもらえない私にとって呪いでしかありません。

 しかし、貴方様に仕えることで呪いとも思われていた孤独から解放されました。これ以上に理由が必要ですか?」


俺は二人の願いを聞いた。


「二人とも、ありがとう。」


そして最後にラーズに言った


「ラーズには温かい家族も、第三王女としての立場もある。

 元々人族のお前が、これから敵対する可能性がある俺の下にいる方が間違いだと思う。

 お前が望むなら眷族の繋がりも解除しよう。

 自分の意思で生きてほしい。」


俺の言葉にラーズは怒ったような顔で言った。


「はぁ、、何も分かっていませんね。

 そもそもですが、この状況を作ったのは私ですよ?今更降りるわけないじゃないですか!


 これからの事は安心して下さい。

 計画通り進んでいます。」


そういうとニヤリと笑った。


「わかったわかった、それじゃあ計画とやらを話してくれ。」


と俺がいうと、ラーズは計画を説明した。


「この計画には多少の小さな障害はありますが。それも想定済みです。

では、この計画の大きな流れを説明します。」


3人はラーズの言葉に集中した。


「第一段階ですが、今世でも魔族の王になってもらいます。」


スクルドは呆れた声で


「それは普通ね。私でも思いついたわ。」


というと、ラーズは


「そんなあなたで分かる底辺の話はしていないわ。

 私が言っているのは、魔王様を王とした正式な魔族の国家を作るの。その違いがお分かり?」


俺はラーズに考えが分かったが...


「それは小さな障害じゃないだろ。

 うちには何もかもが足りない。」


俺がいうとスクルドは分かってない様子で頭を傾げていた。

 レギンがラーズに言った。


「つまりこの国に政府を作り、統治するとそう言いたいのですね。」


「簡単に言うとそういうことね。

 具体的には魔王様が、各部族を支配してもらいます。

 足りない役人は各部族から集めましょう。」


「そんな簡単にはいかないだろ?

で、それが第一段階だと?

ということは第二、第三段階はあるのだろう?」


「そのとおりです!

 でも第二段階は、第一段階より簡単ですよ。

 第二段階は、王国と正式な国交を結ぶってことです。」


とラーズがいうと、スクルドは


「それが簡単なものかしら?」


と疑問をもった。俺も同意見だ。


「今の国王は魔族にも寛容よ。

 ワーウルフの子供達の件でも心を痛めていたわ。

 私が小さい頃からしっかり教えつけているから、魔族の関係はよく理解しているわ。」


それを聞いてレギンは呟いた


「私には小さい頃から親を教育していたように聞こえましたが...」


「教会に異端認定されないようにお父様を教育するのは苦労しましたわ。

 お父様に説明する証拠を集めに過去の文献を探すのも苦労しました。」


とラーズが説明すると、レギンは


「申し訳ありません魔王様。

 一部魔王城の書庫から書物を貸し出しました」

 

と謝った。


「そんなことはいいよ。

で王は理解してくれたの?」


「はい。王と兄弟たちは概ね私たちと同じ認識です。

ですが、それを公にするほど王族の力は強くありません。

 我が王朝は、魔王様が前王朝が治めていた王都を支配したことによって誕生しました。

 そして、その50年後に教会が召喚した勇者により王都を取り戻したという流れになっています。

 ですから、教会の力は非常に強く、王といえども迂闊に教義に反することは言えない。という訳です。」


「それでは、王国と国交を結ぶなんて難しいだろ?」


「王国内の教会に力の源は、隣国である宗教国家の影響なのです。

 国王が異端認定されれば、隣国から圧力がかかり、魔王領に面した王国は両面を敵に挟まれる形となるのです。」


「なるほどな。でも国民が納得するか?」


「それには秘策があるのです。聞きたいですか?」


とラーズは勿体ぶって言った。


「聞きたい。」


俺が素直にそういうと、ラーズは


「お父様の良政のおかげで、国は比較的安定しており、王家は国民から人気があります。

 そこで王家の者、具体的には第三王女をですが、国交を結ぶ代償として魔王国の王に輿入れさせます。」


とまるで他人事のように言った。





 


 






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