鬼の手にも菫

街外れの屋敷にひっそりと暮らす娘は、白い髪に白い肌、緋色の瞳を持っており、その容貌は人々に畏れを抱かせた。
あるとき、都を追われた鬼が紛れ込んだとの噂が町に流れる。

「鬼は人の世に紛れた我が子を探している」

誰も彼も怪しい御者の言葉を疑わなかった。
誰も彼も同じ人物の姿を思い浮かべていた。

鬼を恐れた町人たちに担ぎ上げられ、足跡の追儺の儀式によって、娘は鬼の元へと送られるのだった。