ヤンキーっぽい男子生徒と、彼に惚れているお嬢様系生徒のお昼ご飯

尾道カケル=ジャン

お昼に二人で

 私の想い人である千尋は、とってもモテる。

 本人に自覚はないっぽいけど、今も女の子たちがチラチラ見てはため息をついている。むぅ、ちょっと前までヤンキーだからと怯えていたくせに。


「どうしたコズエ、具合悪いのか」

「え? うぅん、大丈夫だよ」

「ならとっとと食え、午後からの授業もあるんだしよ」


 そういう千尋はパクパクと山盛りの親子丼を頬張っている。

 時折、ジョッキに注がれたカフェオレをゴクッゴクと飲んでいて……薄い肌に上下する喉仏に、私は魅了されていた。


「ぷはっ。おい、腹の調子悪いんだったらムリすんな」

「あ、う、うん」

「もう食い終わっちまうぞ。そしたら、一人で教室に戻らねぇとな」

「むぅ……」


 そこまで言われたら、いい加減食べないと。

 今日のお昼ご飯はお魚の定食……本当はスタミナ丼を食べたかったんだけど、千尋と同席することになって、ね?


「いつも丼物食ってるくせに」

「むぐっ!? んぐっ、ごくん……だって、恥ずかしいじゃない」

「今さらオレに遠慮すんな。ほれ、あーん」

「え、あむっ」


 唐突に差し出されたレンゲを頬張ってしまう。


「抜くぞ」


 そしてレンゲが抜かれて、口の中には親子丼だけが残された。

 卵とお米の甘さ、お出汁の風味が口いっぱいに広がって、もぐもぐ咀嚼すれば鶏肉のプリプリとした食感が楽しい。

 ごくんっと飲み込めば、お腹が満たされていく感覚が心地よくて……は!


「き、急になにするのっ」

「へへ、いい食いっぷりだったぜ」

「もぉ……あ」

「ん、どうした」

「間接キスしちゃったね」


 なんて、口元を抑えて笑うんだけれど。千尋は「はんっ」と口の端を吊り上げた。


「顔、真っ赤だぜ」

「え」

「この程度で恥ずかしがるたぁ、恋人できたら大変だろうな」

「……っ、ばか!」


 そう叫んで、アタシはお昼ご飯をもりもり食べていく。

 もう、次は女の子ぶらないもん。千尋の前でもにんにくマシマシの丼物食べてやるんだからっ。


「やっぱり、いっぱい食う女の子は好きだな」

「んぐっ、もぐ、もぐもぐ……」

「米粒ついてんぞ」

「んぐぅ!?」


 止めて! そう声のない抵抗をぶつけたのに、千尋は手を伸ばして私の唇に触れた。

 カサカサ乾燥した指が、熱だけを残して離れていき……千尋は米粒を口に含んだ。


「ん、ごちそうさん」

「…………」

「おーい、コズエ? どうしっおい!?」


 あれ、なんだか、意識がとおくに……

 千尋の匂いにつつまれて、なんだか、おなかいっぱいだぁ……






「この程度で気絶されたら、告白とか、その先も、できねぇだろうがよぉ……」

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ヤンキーっぽい男子生徒と、彼に惚れているお嬢様系生徒のお昼ご飯 尾道カケル=ジャン @OKJ_SYOSETU

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