黒字を赤字に!

CHOPI

黒字を赤字に!

 GW明け。日に日に暑さに拍車がかかりつつも、まだまだ朝晩は気温が下がってくれるから体力の回復は比較的しやすい、なんて思う。これから梅雨に入って、それから夏に向かっていけば、熱帯夜に悩まされる毎日になるのは明白で、だから無理だとはわかっていても『これくらいの過ごしやすい気候が続いてくれればいいのに……』なんて願わずに入られない、そんな5月のとある日のこと。


 通勤電車からいつものように見上げた空は、はるか遠くまで奇麗な青空が広がっていて雲ひとつ見当たらなかった。こんな良く晴れた日に会社に箱詰めにされる我等社会人の辛さたるや……、なんて少々悲観的になりながら、まぁそれでも今日は特に大変な作業も無いしなぁと自分に言い聞かせて、『まぁ、1日とりあえず乗り切ろう!』と心の中で自身を鼓舞する。そうこうしていると少しずつ降りる駅が近づいてきて、どことなく戦闘モードに入る。


 プシューッ


 いよいよ目的の駅にたどり着き、改札口まで早歩きで向かう。ふとパスケースを取り出そうとして、家を出る際にいつも持ってきている緑茶入りのマイボトルを忘れていたことに気が付いた。慌てて腕時計で時間を確認すると、会社へ向かう途中でコンビニに寄るくらいの時間はありそうでホッとした。この時期から熱中症対策を叫ばれるご時世だ。室内作業とはいえ、対策するに越したことはない。


 コンビニに寄って適当な緑茶を手に取って会計に向かう。セルフレジが空いていてありがたかった。お茶の代金を電子マネーで支払って、それからコンビニをさっさと出る。


 会社についてすぐにノートPCを起動する。やや古めのそのPCの起動待ちの間に羽織っていたスーツを脱いで椅子に掛けると、横から「スーツ暑くない?」と声をかけられた。そちらを見ると暑そうに扇子で顔を仰いでいる同僚の姿。「……いやでもうちの会社、クールビズって6月からじゃないっけ?」と言うと「そうなんだよなー……。もはやスーツ着用を止めて欲しい」と返ってくる。……まぁ、気持ちはわからんでもないんだけど。


 ふぅ、と息を吐きながら椅子に座り、デスク上に置いてある、要らない資料の裏紙に雑多に今日のタスクを一通りまとめて書き出す。そうして目の前にかけてあるカレンダーに目を移し、仕事の期日やこれからの流れを脳内で組み立て確認する。その頃には自分の使いこんだノートPCも起動しているから、まずはメールの確認から。これが自分なりのルーティンで、だから自然と脳も仕事モードへと切り替わっていく。……んだけども。


 目の前にかけてあるカレンダー。GW明け、そして翌月の6月まで。黒い数字が一つも赤色になる個所が無く。


「……6月、祝日くれよー……」

 漏れ出た本音。それに対して横から聞こえる「毎日同じこと言うなよ」と苦笑交じりの声。


 あぁ、神様、仏様、お国のお偉い様方へ。

 6月にも赤字しゅくじつ、作りませんか?

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