赤い夢に誘われて
作家朝井リョウは、「物語の魅力だけでなく、紙の本という場所を最大限遊び尽くすような面白さを教えてくれた作家」と、はやみねかおる氏の魅力を語っている。
「あらゆる方法で読者を楽しませてくれる、旺盛なサービス精神にいつもワクワクしていた。作家になれたら、こんなふうに読者の形帯を楽しませたいなと、そうう憧れを抱く対象でもあった」
思い入れのある作品に、名探偵夢水清志郎シリーズの第四作『魔女の隠れ里』をあげている。「ずっと関西弁だった人物が、級に標準語で話しはじめるシーンで抱いた恐怖を、いまでも鮮烈に覚えている」という。
関西弁を話している人がすべて関西人と思い込んでいた自分に愕然として以来、人物や出来事を「安易にわかったつもりにならないよう」心がけているという。
また、同シリーズの第六作『機巧館のかぞえ唄』は、難解かつ残酷に感じ、作者の意図を読み取ろうと何度も読み返したという。
「主な読者が小中学生だからといって、相手をなめることなく、れっきとして一人の読者として扱ってくれる姿勢が、とても嬉しかったのだ」
複数の視点から誰かやなにかを立体的に描く構造を持つ自作の初期作は、はやみね作品の影響を多大に受けているという。
過去に対談をしたときの印象を、「とにかく、ものすごく腰が低かった。テーブルや椅子を動かす時には誰よりも早く動いて。本当に尊敬すべき人ほど全く偉ぶらない、と実感した」と話している。
◆誇りにしていること
昔、先輩作家に「君の作品は文学じゃない」と評されたことがあるという。
はやみね氏自身も、文学を書いているつもりはなく、むしろ職人近いと思っているという。
子供を楽しませ、驚かせる職人だ。
宇都宮市内の小学校が毎年一冊、「友だちに勧めたい本」を選ぶ『うつのみやこども賞』がある。
遠慮も忖度もない小学五、六年生の選定委員である子供たちが、年間四十冊の本を読んで議論し、純粋に「面白い」本を、六月から翌年三月まで、月間優秀作品を選んだのち、年間最優秀作品を決める。
はやみねかおる氏は、四回受賞している。
四十年の歴史がある中で、最多記録を保持している。
二〇〇〇年度(第十七回)を、松原秀行さんとの共著、『いつも心に好奇心!』で初受賞。
二〇〇三年度(第二十回)は、『ぼくと未来屋の夏』。
二〇〇九年度(第二十六回)は、『恐竜がくれた夏休み』。
二〇一八年度(第三十五回)は、『奇譚ルーム』。
三年後、六年後、九年後と、間隔を開けての受賞である。
次は十二年後、二〇三〇年度に五回目の受賞を狙っていると語る。
◆ペンネームの由来
中学時代のあだ名は「幽霊」。
怪我をしてもすぐ治るため、はじめは「不死身」と呼ばれていたが、「不死身なのは、実はもう死んでいて幽霊だから?」と友人が面白がって呼ぶようになったため。
「幽霊がおる」をもじって「勇嶺薫」。
小学校の教師をしていたときに作家デビューが決まるも、「子供が読めない」と編集者に指摘、迷わず筆名をひらがな「はやみねかおる」にして現在に至る。
「ひらがなにしたことで、読みやすく、覚えてもらいやすくなったので良かった」と話す。
しょっちゅう女性に間違えられたらしい。
夢水清志郎シリーズは女子中学生が語りだったため、なおさらそう思われたのかもしれない。
※中日新聞に掲載された、『作家はやみねかおる「赤い夢」の案内人』をはじめ、ネットに掲載されていた、『マスコミ研究会早稲田祭パンフレット・早稲田祭2020はやみねかおる先生ロングインタビュー』『ダ・ヴィンチ・はやみねかおるさんインタビュー』『東洋経済・はやみねかおるが「意地でも伝え続けたい」こと』などから抜粋し、まとめました。
はやみねかおるについて snowdrop @kasumin
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます