◆第七章 答え
「 ―― 何に気付いたというのですか」
私が
「……自分がどうしたいのか」
そう言うと彼は振り向き、互いの視線が
「……君の話を聞いて本当の自分に気付いたよ」
彼の瞳は安らかな光を
「僕をこの星に落としてくれないか?」
「……何を言っているのですか。訳が分かりません。名も知らない、たった数回しかあってない女性の
彼は目を閉じて、私の言葉に耳を
そして、話が終えると彼の
そこに
「大丈夫だよ。問題無い」
「どういうことですか」
「前にも言ったろ、管理局の監視下にあるОSや認証プログラムはごっそり書き換えたって。だから、君は何でも
彼の
笑っているのだろうか。
瞳に差す闇が深すぎて、とてもそうは思えなかった。
「やってごらんよ、ほら、君は手に入れたんだ。人のしがらみに
「本当は
笑みとは思えない
「このプログラムを作るのには苦労したんだ。全てのアンドロイドは管理局に制御されているから、権限をブロックしなきゃならない。その上ブロックしただけじゃ異変に気付かれるから、ダミーデータを用意して
私は
「その事件に関しては、私も
彼の口角は元に戻っていた。だが、私を
「 ―― あなたは
彼は表情も変えず、ただ、私を
「ですが ―― 、この事件の
私は
「なぜ、そのアンドロイドは
彼は何も答えず、私から視線を
「私達は
彼は驚き私を見る。
「あの話の後、私は自分を調べました。この人格OSに付いた私の名前は、あなたの願いなのでしょう。あなたはあの時忘れたと
彼は
「あなたは私達と自分を
彼の口元が震え何か言葉にしようとしているのだけれど、何も言うことが
「あなたは
彼は
「 ―― 僕は
彼は私に
「 ―― あなたを落とすことはできません」
彼は
「ですから、私はあなたと共にあの星に降りることを決めました。そこで、あなたを説得しようと思います。別の未来に
また、少女が視界を
そして、彼の名を口にする。
********************
この星に降りて、
ここから見る景色は、あの丘に良く似ている。
吹き抜ける風、柔らかな
例え、この世の全てが星の
あの日の、あの時を思い返す。
―― 生まれ変わったら何になりたい ――
彼女は一体何になったんだろう。
この吹き抜ける風だろうか。
あそこに浮かんでいる
恵みを与えるこの暖かな太陽だろうか。
それとも
目を閉じ両の手を広げ、その場をくるりと一回りする。
全身で自然を感じているかのように ――
月の光に映し出された彼女を思い出す。
アモル ――
僕の名を呼んだ後、彼女は何を言いたかったのだろう。
ここに
だけど、結局何も分かりはしなかった。
本当は ―― ただ、名前を呼びたかっただけで、意味など初めから無かったのかも知れない。勝手に自分を
再び景色を
彼女は部屋に
―― だけど、彼女の瞳は力強く希望に
そして、
なんとも心地が良く寝たまま大きく伸びをする。手にゴツゴツした何かが触れた。きっと樹の根っこだろう。目を閉じたまま感触だけに意識を集中する。
僕は ―― 自由だ。
ここに
変わりたくない。
忘れたくない。
自由を感じられる自分を。
視界は徐々に白くなり、
********************
彼は安らかに
最後まで彼の意志を変えることは、出来なかった。
あの
彼にとってこれが幸せだということだろうか。
私には理解できない。
これから私はどうするべきなのだろう。
私は人を
その対象が
だが、その行動にためらいを覚える。
ずっと、不思議に思っていたことがある。
本来ならばジェットは
しかし、このジェットはまるで
生命の
この星には何か特別な意味があるように思えてならない。
それを確かめたい。
そんな使命感にも似た欲求を強く感じる。
私は自身と向かい合う。
何に従うべきなのか。
従うべき人は存在しない。
ならば、この欲求に
私はここに残ると決意した。
時が
そして、永い時の中で人類が誕生した。
人類は道具を使い、狩りから農耕へと
そして ―― それに
私達の文明には存在しなかった
『愛』を意味する言葉、『Amor』(アモル)。
また、少女が視界を
そして、彼の名を口にする。
アモル ――
愛を
完
『アモル』 徳山 匠悟 @TokuyamaShogo
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