第3話 一回目の共通テスト第一日目

 さて、いよいよ受験の天王山である共通テストである。受験の天王山は夏?そんなん知ったこっちゃない。受験はいつだって天王山だ。

 幸いにして俺は同じ高校の奴らと同じ会場で受けられることになった。中には数人だけ同じ高校の生徒とは違った会場で受けさせられる羽目になった人もいたらしいのでその点俺は運が良かった。

 共通テスト一日目。

 俺は理系なので社会は一科目しか受けない。なので普段学校がある時よりも遅く起きられることはありがたかった。

 何せ前日の夜は不安と緊張で布団にはいってからも一時間は寝付けなかったからだ。このことでどれだけ努力を積み重ねてきても緊張は避けられないのだと俺は悟った。

 「努力してこなかった奴は今頃何の心配もせずに寝てるんだろうなぁ。」

俺はそうポツリとつぶやくと再び目を閉じた。

 翌朝。知らない間に寝てしまっていたらしい俺は、母の声で眠りから覚めた。

「もうそろそろ時間よ!さっさと起きなさい!」

 どうやら俺は共通テストの開始時間ごときでは十分な睡眠を得られないらしい。これは普段から補習やら模試やらで休日でも登校させ、生徒に疲労を蓄積させた高校のせいであろう。訴えたら勝てるかな?

 俺は眠気がぼんやりと残る中、試験会場へ向けて母の声援と共に戦いへと旅立った。

 試験室到着。試験室には同じ高校の人はあまりおらず、どちらかというとアウェイな雰囲気。

 だが、試験の時はだれしも一人である。俺は参考書を復習しながら試験開始の合図を待った。

 そしてマークシートが配られ受験科目にマークする際、俺はある問題に直面した。

 俺って地理A受けるんだったけ?それとも地理Bだったけ?

 確かに学校の先生から数学に関しては解く科目を間違えるなと何度も言われた。それは俺も認める。だが社会はどうだ?俺は自分がどっちを解くのか朧げにしか覚えていなかった。

 さんざん迷ったが、結局俺は地理Bにマークした。面白みがないって?流石にここでミスをするのはご都合主義というものだろう。

 何はともあれ地理である。ここでは端的に解いていた時の心情を書いておく。

 (いや、合ってんのかわかんねぇ…。)

 誇張抜きでこれが正解だと確信をもって答えられた問題が数問しか無かった。大体二択までにはしぼれるのだが、その先は勧に任せていた。ちなみに俺の勘の精度はバースの打率ぐらいである。まあ日本の歴代最高打率だから、これでいけないということは無かろう。俺は少なくとも6割は外すという事実から目を背けた。

 次は国語だ。

 特に言うことは無い。俺は自分の文学的センスを信じるのみ。ただ一つ気になることは、古文がやたらと色恋がらみの文章を出すことだ。日本の大学教授はそんなに頭がピンクなのだろうか?

 どうせ恋愛関係の話を出すならいっそBL展開にしてほしい。そうなったら俺が友達から誕プレで貰ったBLカップリング本が役に立つ。

 諸君、今の話で色々気になる点もあるだろう。だがこの件は話すと長くなるので割愛する。ちなみにその本によると俺は夜明けの腐女子らしい。何のことか分からないって?俺も分からない。

 次、英語リーディング。

 時間が足りない。感想はそれに尽きる。日本語でもあれだけの文を読んだら疲れるのにそれが英語でだなんてどうかしてる。そして嫌がらせのように時系列をぐちゃぐちゃにするな。日本語であんな文章書いたらキレられるだろ。

 果たしてあの試験で本当の英語力を測ることができるのだろうか?俺は塾講師が考えるような疑問を持った。しかし、かく言う俺は本当の英語力がどんなものなのか分からない。

 そもそも語学における力とは何だろうか。語学それ自体が力なのではないだろうか。あれこれ考えるが俺には考え付かない。何しろ自分に本当の日本語力があるのかどうかすら分からないのだから。

 最後はリスニングである。

 もうこの頃には疲労がピークに達していて、正直家に帰りたいとしか思ってなかった。そもそもリスニングのテスト前に何をすればいいのか分からない。前の席の浪人生はスマホで英文を聞いているが、俺たちの高校はたとえ共通テストの日でもスマホは厳禁である。本当にすることが無い。

 いざテストが始まっても集中は長く続かなかった。ほかの受験生がページを捲る音にも反応して音声に集中できなくなってしまう。もうこれは俺のせいではない。国のせいだ。きっとそうだ。俺は放心状態でテストを解き進めていった。

 ようやく終了。もう何もしたくない。家に帰ったらお風呂に入ってご飯食べて早く寝よう。明日のことは考えない。今日ぐらいは家族も温かく迎えてくれるだろう。俺は満身創痍の状態で家に帰った。

 

 俺、帰宅。すると家族は

「帰ってきたのね!?もうお母さんあまりに出来が悪くてあんたが帰ってこないんじゃないかって心配で心配で!」

「おう、お疲れ!まあ今日のことは仕方ない。明日切り替えていけよ!」

「お兄ちゃんお帰り!意外にメンタル強いんだね。見直した。」

と出迎えてくれた。


 

 ひどくない?

 

 

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第一志望校に俺はいらないらしいので遥か上のランクの大学目指します  ~一年間のアドバンテージがあるので楽勝です~ 浪速 千尋 @chihironaniwa

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