第2話 彼は高校時代を回想する

 その後体育祭、文化祭と行事は続いたのだが長くなるので割愛。

 この様に書くとなにかハチャメチャな出来事があって、とてもじゃないが紹介しきれないのでは?と思われるかもしれない。

 だがそんなことではない。

 いや、別に面白いことが無かったわけではない。クラス全員にエナドリを差し入れたやつがいたり、それを飲んで皆で徹夜して準備したり、カフェインでハイになって全裸で廊下を走り抜けたネイキッド野郎がいたりしたが、それだけのことだ。

 そう、それだけのどこの高校にでもありそうな青春の出来事だ。

 完全に個性的なものなんて存在しない。どこの高校にも一人は笑いごとに出来る範囲で頭がおかしいことをやるやつは存在する。

 「うちの部活動には個性的なメンバーがたくさんそろっています!」

なんて紹介をする部活動を俺はいくらでも見てきた。そしてそれらの部活動全てが普通の部活動だった。そんなに個性的なメンバーを集めたいならただの人間なんかを集めず、それこそ宇宙人・未来人・異世界人・超能力者やらを集めるべきだと俺は思う。

 ただの人間だけを集めて個性的であろうなんて全くもっておこがましい。大抵の人間は”普通”であり、だからこそ人間社会は調和を取れているのだ。

 そもそもなぜ人間はそんなに普通を忌み嫌うのだろうか。”普通”とは大多数の人間と同じという意味であり、それこそ人間社会に適合出来ているという証明ではないか!

 この先あなたが誰かに

「なんか君って普通の人だね(笑)。」

と言われても何ら恥じる必要はない。その人はあなたの社会適応能力を褒めたたえてくれているのである!

 …はい、以上が個性的になろうとして失敗した負け犬の戯言でした。このまま続けると俺の黒歴史が白日の下に晒されるのでやめておく。どうでもいいが〝黒″歴史が‶白‟日の下にさらされるって黒と白のコントラストが美しいよね。

 まあ、体育祭・文化祭のまとめとしてそれぞれの準備期間中俺の勉強時間は0だったことを伝えておく。


 さて正月。我が家は例年祖父母の家に行き、親戚一同で集まるのが恒例なのだが共通テストが目前に迫っていることもあって家族全員我が家で年を越した。

 ちなみに我が家は年越しそばではなく年越しうどんを食べる。なぜなら俺がそばアレルギーだからだ。

 そう、そばアレルギー。

 アレルギーといってもそばだったらあんまり影響ないんじゃないのと言う人がいるかもしれないがそんなことはない。

 そばアレルギーは他のアレルギーと比べて重篤な症状が出る場合が多く、食べるものにかなり気を遣う。加えてお菓子にもそば粉を使っているものがあり、美味しそうと思っても食べられないことも多々ある。

 ある日のことだ。俺は友人とそばが美味しいと評判の店に行った。

 ちょっと待ってほしい。今確実に俺のことをヤバい奴だと思っただろう。これには深い理由がある。

 第一にその店はそばだけで無くうどんも美味しいと評判だったこと。

 第二にその友達というのが知り合ったばかりでかつグイグイくるタイプだったので断りづらかったこと。コミュ障にとって辛いのは誘うことより断ることである。

 さて、店に到達した俺は店員さんにこう尋ねた。

「そばとうどんは同じ鍋で茹でてますか?」

「はい!」

 俺は絶望した。

 というのもうどんとそばが同じ鍋で茹でられているとお湯を介してそば粉が入ってしまう場合があるからだ。こんなところで死にたくはない。せめてこんなグイグイくるまだ知り合いとしかいえない奴とじゃなくて、心の友と呼べる奴と死にたい。まあ俺に心の友がいるのかどうかが確かではないし、そもそもそばアレルギーで死ぬのは俺だけなのだが。

 そうして俺は悩みに悩んだ結果カツ丼を注文した。

 その結果↓

 俺のカツ丼だけ異様に来るのが遅かった。確かにわざわざ麺類が売りの店にまで来てカツ丼を頼むやつはいないだろう。なんなら俺たちより三組後ろのカップルのうどんの方が早く来た。てかデートでうどん屋って普通いくものなのか?店内家族連れとご老人しかいなかったぞ?それとも俺が知らないだけで近頃流行りのデートスポットはうどん屋なのか。まあ生まれてこのかた彼女のかの字もできたことないDTには分からない。

 「のどごしがいいね」と君が言ったから7月6日はうどん記念日

こんな感じ?違うか。

 俺の見立てでは店員は注文を受けてから肉を買いに行ったとみた。なんでかって?だって店員さんが一人店の外に慌てて出て行ったんだもん…。

 俺がカツ丼をお預けを食らった犬みたいに待っている間に友達(?)が

「ごめんな、お前が待ってるのに俺だけこんな傍で食べちゃって。蕎麦だけにってな!ハハハ」

と、小学生でも思いつきそうで、なおかつ小学生でも自制するであろうギャグともいえない醜悪な何かを発した。俺はそいつと縁を切った。正確に言うと俺に絶縁するだなんて相手に面と向かって言えるはずないので相手の目に入らない場所に隠れるようになっただけなのだが。

 ちなみにカツ丼の味は普通でした。多分二度とその店に行くことはないです。

 脱線したが話を戻そう。

 大みそかの夜、俺は年末恒例の歌番組を見ながら勉強に励んでいた。共通テストまで残り僅か。俺は最後の力を振り絞り、歌で元気をチャージしつつマークシートを塗りつぶしていた。

「あ、ようやく星君の出番だー。星君ってアイドルだけど歌も本職の歌手に負けないぐらい上手いし、何よりダンスが別格なんだよねー。」

「お前が星君とやらに夢中なのは結構だが、さっきからどいつもこいつも踊ってばっかで飽き飽きしてきた。踊るのはいいが俺らの心も踊らせてもらいたいものだな。」

「つまんなっ。」

これが年末年始で妹とした最初で最後の会話だった。どうやら妹はまだ思春期から抜け出していないらしい。

 まったく、兄と満足に会話もできないだなんて!


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