第一志望校に俺はいらないらしいので遥か上のランクの大学目指します  ~一年間のアドバンテージがあるので楽勝です~

浪速 千尋

第1話 高校生、崖っぷちに立つ

 「は?」

 最初に出てきたのは悲しみよりも怒りだった。

 国公立大学前期の合格発表の日、俺は自分の番号がないことに憤慨した。

 なぜこの俺が第一志望校に落ちたんだ!? 

 俺より良い点数を取ったやつが何十人もいるはずがない!

 やり切れない気持ちと共に俺は部活を引退してからの苦難の受験生活を振り返っていた…。



 部活の最後の大会で一回戦は突破したが、二回戦で惜しくも敗れてしまった俺。

 ちなみに俺がやっていた硬式テニスでは幼いころからテニスをしてきた連中がゴロゴロいるので別に二回戦で負けたからと言って俺が雑魚である証明にはならない。断じてならない。

 そういうわけで今までの努力を出し切り、有終の美を飾った俺は気持ちを入れ替え受験勉強へとシフトしていった。

 もちろん最初は解けない問題ばっかりだったし、模試での判定もE判定ばかりだった。だが俺はそのようなことで落ち込むそこらの凡百どもとは違う。

 現役生、特に運動部に所属していた生徒は体力も集中力もあり、スポーツへの情熱をそのまま勉強に注ぐのでグングン伸びるという先生方のありがたい甘言ゴホッゴホッ格言を信じて日々8時間勉強に励んできた。


 夏休み(一週間)には照り付ける日差しと、目の前で手をつないでやがる男と女から発せられる甘ったるい空気、そしてどこまでも青く穏やかな海とは裏腹に高まる俺の赤く荒れ狂う海への渇望ら(なんて文学的な表現!俺には実は文学の才能があるのではなかろうか?だとしたら俺が200点中100点しか取れなかった国語のマーク模試の方がおかしいことになる。)にも負けず、俺は旅行先でも勉強するという学生の手本となるような姿を家族にお披露目した。

 以下その時の会話の抜粋である。

 「お父さんが休みとれたのがここしかなかったから旅行に来たけど、あんたは連れてこなかったほうがよかったかしらねぇ?」

 「何言ってんだい母さん。俺は終業式の後も課外やらで学校に行きっぱなしだったんだ。だから疲れもたまってるし、そのまま家に残って勉強してても返って効率が悪いよ。」

 「お兄ちゃん家で勉強してないもんね。」

 「ハハハ、何言ってるんだ妹よ。俺が毎日机に向かって一心不乱に勉強している姿を見てないのか?」

 「机には向かっていても集中してないから実質的な勉強時間はほぼ0じゃない。」

 「口を慎め、お前は今的確に地雷を踏みぬいた。それも特別高威力のやつ。今の発言はナイチンゲールでも空気注射するレベルだ。お詫びして訂正しろ。」

 「空気注射ってお兄ちゃんには輸血みたいなもんじゃん。お詫びも訂正も必要ないよ。」

 「それは俺の存在感が空気みたいなもんってことか?い、言っておくが俺にも友達ぐらいおるんやぞ!。」

 「そりゃ、友達と二人きりならいいかもしれないけど大きなグループの中では存在感空気でしょ。」

 「アッアッ」

 「そもそもお兄ちゃん友達の絶対的な数が少ないんだよね。多分。だから特定の友達とベッタリでその人以外がいる場所だと何もできないんでしょ。」

 「アッアッアッ」

以上。

 まさか実の妹にメンタルをやられるとは思わなかった。こんな身近な人に裏切られるとは…。気分はまるで織田信長だ。

 だが待てよ?俺が信長ということはあいつは光秀。つまりあと数日もすればあいつも俺と同じように陰キャの仲間入りということに……、ならないか。あいつインスタのフォロワー1000人いきそうって言ってたし。

 え、俺?

 そもそもインスタやってねえよ。

 



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