平凡サラリーマン、バズる
新田光
好転
人生色々ある。その中でも他者を羨み、自分の人生を嘆く事は、多くの人間に起こる出来事だろう。
圧倒的な才能のあるもの。何もしていないのに、なぜか人から好かれるもの。能力はないのに、運だけで勝ち上がるもの。
こういった天性のものは絶対に存在する。だが、ほとんどの人間はこういったものに恵まれない。
俺──佐藤彰も凡人と呼ばれる人間の一人だ。
良くも悪くもない大学を卒業し、一般的な企業に就職する。
できる社員でもなく、使えない社員でもない。
その為、会社内では居れば困らない存在として扱われている。
そんな評価に嫌気がさしたのは、入社して一年経った辺りからだろうか。
上司や先輩の理不尽な指示も我慢しながら勤め、会社に貢献できるように一生懸命仕事もしてきた。
全ては自分という存在を認めてもらうためだ。
だが、会社にとってはそんな部分は関係ない。結果を出せるか出せないかが重要なだけ。
その為、結果の出せる同期の社員にばかり重要プロジェクトの参加資格が与えられ、俺には機会すら巡ってこない。
俗に雑用と呼ばれる仕事をこなし、いつも通り三時間程残業をさせられた後、今日も帰宅する。
ため息がこぼれ、クタクタになった体はベッドに崩れ落ちる。
何もやる気がしない。自分なんていない方がいいんじゃないか。
ネガティブな感情が自分を支配していく。
そんな俺だったが、体に染み込まれた習慣により、無意識にスマホを開いていた。
強烈な光を浴びた途端に、手が勝手に動いていき、動画サイトに辿り着く。
「いいなー」
画面の向こうには楽しそうに仕事をし、自分らしく生きていられる人がいた。
俺もこうなりたいと思たっが、いざ自分のSNSを開くと、『フォロワー十人』という無惨な現実が突きつけられる。
投稿は欠かしていないが、誰も自分の投稿には興味を示さないのだ。
試しに動画投稿もやってみたが、一ヶ月で『フォロワー三人』という結果だった。
何をやってもうまくいかない。
そんな時だった。ひとつの動画が一万回再生を突破していることに気づく。
コメントと高評価も自分の動画からは考えられない程付けられていた。それは今も止まらない。
「えっ!」
唐突な出来事に俺は嬉しさを通り越して呆然とするしかできなかった。
思考が追いつかず、目の前の出来事が現実だと認識するまで数分はかかった。
すぐにSNSを確認し、これが現実であるかを確認する。
何度も。何度も。何度も。
自分をつねってみたりもした。それでも痛みは感じ、これが現実である事をひしひしと感じさせてくれる。
無意識に綻んでいた。
自分の努力が報われた事に心の奥から喜びが溢れてきたからだ。
今までキツかった。
ネットで調べ、最大限に頭を使ってSNSを使ってきた。
相手のニーズを考え、トレンドも調べたりした。
だが、誰にも見向きもされなかった。
そのことに自分には才能がないのだと何度も落ち込んだ。
だから、誰よりも努力をしようと思った。
それが今、実を結んだ。
平凡なサラリーマンがバズり、人気配信者としてのスタートラインに立った。
あれから一ヶ月。
俺はあの出来事を機にメキメキとフォロワーを増やしていき、今では人気配信者の一角となった。
苦しいと感じる日々もあるが、楽しく配信ができている。
「じゃあ、今日も配信始めるよ!」
『イエーイ』
コメントは飛び交う。
俺という人間を中心にして
平凡サラリーマン、バズる 新田光 @dopM390uy
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます