バスボールの出目金（でめきん）

第1話

バスボールと呼ばれる入浴剤の中で、シリコンかゴムのような柔らかくぷにぷにの出目金金魚は震えていたっ！

どうしよう、カラーは6色！

ぼくを手にした2歳の男の子は青が欲しいらしい！

でも、カプセルに守られたこの視界じゃ、入浴剤に覆われたこの球体の世界では！

自分の色がわからない！

ああ！　バスボールに釣られて子供達が次々に入浴していく！

3人きょうだいの内、1人はおもちゃの器で。

もう1人は洗面器で。

もう1人は浴槽でバスボールが発泡して溶け去るのを待っている！

ぺんぎんだ！　なにペンギンかな〜

ペンギン？！　ペンギンだと？　出目金のぼくはどうしたら……。

おれのやつも出てきた！　シークレットじゃなかった……

がっかりしている！　秘密の黒い「シークレット」のお出ましじゃなくてがっかりされている！

うう、なんだってぼくはバスボールに閉じ込められているんだ。

あ！　でてきた、でてきたよっ

！　ぼくか？！　ぼくの番か？　ああ、あったかいし視界が明るくぼやけて……っ

むらさきっ

紫？！　まさかの？！

ぼくは紫の出目金おもちゃだったのか！

ああ、カプセルに入ったままお湯にたゆたっているけれど、自分の目が飛び出ていて自分の姿がわからない。やがてカプセルから出されて指でぷにぷにされる……。

みんな、ぼくらが楽しみで。お風呂に入る前はビニールに包まれた入浴剤のにおいを

いいにおい！

と吸って楽しんでくれている……。

バスボールの中のおもちゃになれて……、よかった……。

おれ！　バスボールたのしみだから、おふろだいすき！！

遠くで誰かが言う。

わたしのペンギン、かおが絵とちがーう。

2歳の子は、お風呂から上がっても、ぼくを小さな手で包み込んでぷにぷにしている。

やがて、セクションケースに飾られて、バスボールコレクションの一員になった。

子供達がお風呂を楽しめますように。

バスボールのおまけに生まれて、しあわせだった。