第13話 追って追われてどこに行く
「待てぇええーーーーー!」
俊足を飛ばしターゲットとの距離を縮める紀伊。
逃げる足音。
「ああ、見失った!この近くにはいるんだけど。」
「やっと追いついたよー。早いよ紀伊。」
「聖那はもうちょっと痩せなよ……。」
「酷い!」
「飛鳥は……まあ許すよ。」
「さらに酷い!」
怒るよ?
「てか、どこに行ったんだろ?」
「もう遠くに行っちゃったとか。」
「それはない。」
明確に否定される。
「ここら辺探すかー。」
ここら辺は建物もないし、見つけやすそうなんだけどな。
へっくち!くちっ!
「飛鳥、くしゃみした?」
「私ではないですよぉ。」
「じゃあ……。」
ガサガサ
「草むらから音がする!」
紀伊が叫ぶ。
「誰かいますっ!」
飛鳥も叫ぶ。
そろりそろり、足音を立てずに近づく。
「誰かな~?」
そこにいたのは、私たちが撮影させてもらったグラビアさんだった。
「近づいたらダメ、私ゾンビだからダメっ!早く離れて!」
「お、落ち着いてください!」
「ダメなの!食べちゃうの!私人間を食べちゃうの!」
「え、えっと。私たちもゾンビです。」
「ダメなんです!ダメ……ふぇ?」
「私たちもゾンビですよ、だから大丈夫です。」
「えっと、うまくわからないな。逃げなくて大丈夫ってことなの?」
「はい。」
「あなたたちはどうしてゾンビに……?いつゾンビに?」
「私とこのおでこ出してる子、飛鳥はしばらく前。噛まれた記憶ないからよく分かんないです。で隣のぽっちゃりした子、聖那は私たちが噛みました。」
「ふ、複雑な関係ですね。」
「黙っててすみません。」
私も謝る。
「私は一昨日だった。噛まれた跡が既にあって誰からかはわからなかった。」
「誰かが家に侵入してるってこと?」
「それはないと思う。でも、こうやって意思疎通できるゾンビがいるのなら人間に紛れ込むのもあり得ない話じゃないって思う。」
「確かに。」
「なってしまったのはどうしようもないもの。だけど。」
そう言うと、グラビアさんの顔が曇った。
「昨日の事なんだけど、おいしそうな香りがして、香りがするほうに向かったの。そしたらその香りは人間のもので……。」
グラビアさんは大粒の涙をこぼし始めた。
「わたし、いつか人間を食べてしまうの!でもどうしたらいいかわからないの!ねえ!どうしたらいいと思う?教えてよ……。」
「……。」
どうしたらいいかなんてわからない。人間を食べてはいけないと思う。だけど、現時点で私たちが人間を食べずして生きることもできない。
私だって教えてほしいよ。
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私がゾンビになって、いつか人を喰らう日が。 こゆき @t_koyuki
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