第12話 グラビアを探せ

屋上、確かにいる可能性はありそうだ。

私たちは飛鳥の提案で屋上に向かった。

「屋上って困ったときに駆け込むような場所だって思うなぁ。考え事したくなったときとか。どうかなぁ。」

保険をかける飛鳥。石橋を叩いて渡るタイプね。

屋上にいるのかな、どうだろ。


屋上に向かうなかでふと考えてみる。もし私がそのグラビアさんならどうするか。

 一つ目、何事もない場合。私だったら家か安全な宿泊施設、またはゾンビの目撃情報がない離れたところに移動したいと思う。

 二つ目、ゾンビになっていた場合。意思疎通ができるかどうかにもよるけど、出来ない場合は成す術はなし。意識があれば、ゾンビの生体上日中に移動ができないので遠くには行けないはず、現実を受け入れられずその場にとどまる気がする。

もちろん私たちは人間でいてほしいと思う。ただあの日の曇っていた顔が、私の脳裏をちらつく。

二つ目であり、なおかつ意識がある場合。おせっかいかもしれないけど、一人でいるよりは誰かといたいと思うんだ。


「聖那、もうすぐ屋上につくぞ。」

「ほんとだ、扉開けるよ。」


ぎぃぃぃぃ


年季の入った音を立てて、扉が開いた。


「いい景色だねぇ。」


外を眺め、うれしそうな飛鳥。


「じゃなくて、本来の目的思い出して。」

「えっと、何かなぁ。」

「グラビアさん探しに来たんじゃん!」

「そうだったそうだった。」

「忘れないでよー。」


飛鳥は久しぶりに高いところに上ったこともあって少し名残惜しそうにしているが、目的は終わったのだ。

もう少し居たいという飛鳥を連れて、屋上から降り、1階に戻る。


「飛鳥の予想はずれたなー。」

紀伊が嘆く。

「ご、ごめんねぇ。」

「ちょっと紀伊、飛鳥を責めないで。」

「責めてないって。てかそんな風に見えたの?」

「うん、飛鳥もそうだよね?」

「え、えっと、まあ、少しだけ。」

「ショックだな、紀伊はショックだよ!」

プンスカ怒る紀伊。


その時だった。


カサカサ


物音がした。

振り返ってみると、誰もいないけど遠ざかる足音。


「追うよ!」

「「うん!」」

紀伊の声に呼応し、私たちも足音を追った。

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