第十六巻 嘘つき姫と涙の理由完結編


 エピローグ 結局、主人公を決める人なんて居ないんだよな


 俺が意識を取り戻したのは、又も夏休み中の学校の屋上だった。

「よっ、寝坊助」

「ヒロキ……此処、学校の屋上か。いてて」

「おーい、ほらほら、皆も目え覚ませよー」

 よく見るとミサキ達もヒロキ以外意識を失っている様だ。

「起きろお前等!」

 ヒロキのバカでかい声が脳に響く。まるであの空間にいた後遺症の様にも感じられる。

「あれ、此処って、アキト、ヒロキ君、東条君とマリちゃんとユリアちゃんもっ! 私達無事に帰って来れたんだね!」

 ミサキは俺に抱きついてくる。ビバ、青春だ! 東条達も目を覚まし、マリとユリアは同時に顔を見合わせた。

「おっ、早速二人は気づいたか! 誰だこの人ってツッコミは後でなっ」

「お目覚めですね。皆様。今回の一件、ヒロキとアキトの力無くしては解決出来なかった様に思えます。私は冥界に帰りますが、ヒロキに聖剣の力を預けて行こうと思います」

 ペルが笑顔でそう告げた。

「ん? でもマリやユリアみたいに傍に居なくても聖剣の力とか使えるもんなのか?」

「この私の念を宿したキーホルダーを託しておきます。それに念じれば銃剣を、私の力を具現化出来るでしょう」

「呼ばれテ飛びデタ、ジャジャダーン。おマエ達、ヨくオルペウスを倒シてクレたダナ」

 マジか。こいつ今までなにしてたんだよ。

「ペルセポネは帰ルが、お前タチの聖剣の力は残シておこう。正直今回の事件ハ人間の助力ナくしてハ解決出来なかったダナ。又同じ事がオキないとも限らないダナ、お前タチは無茶な聖剣の力の扱イはしないダナ、それをシンジテるダナ」

 突如現れたヌイグルミ版の冥界の王は、言うだけ言ってシンバルを鳴らし消えた。割と無責任なのな。

「でわ、私も行きますね、ありがとうございました」

 ペルの身体から粒子が舞い、次第に姿を消した。

「マジか。つまり俺達の荒々しい青春は続くって事だよな?」

「ペルセポネだの、ヌイグルミの審判だのは、この際どうてもいいがな。しかしなんで貴様の様な雑魚が聖剣と契約出来たんだ? 解せん」

「おい、歩く七不思議……俺を甘く見ちゃ駄目だぞ? んでな、とりあえず皆に謝っとくけど、ごめんなっ!」

「遂に幽霊女と呼ぶ事に対する謝罪ですか」

「それを言うなら歩く七不思議もだ……冗談は兎も角、俺の肩と足を撃った事への謝罪か?」

「それもあっけどさ、皆を危険な目に合わせたのは確かだしさ」

 ヒロキは背伸びをし、朝日を屋上から眺めると言葉を紡いだ。

「今回はマジで嫌って程に思い知らされたよ」

 白い歯を見せて此方へと振り返り更に続けた。

「結局、主人公を決める人なんて居ないんだよな!」

「なにか悪いもんでも食ったか、この雑魚」

「なにを言い出すかと思えばそんな事でしたか、幽霊女呼びは続くのですね」

「あ、あれ、なんか私話についていけてないですう? でも……良かったです、こうしてまた笑いあえるんですねえ」

 マリはいつか我慢した涙を一筋流す。

「なーんか、アキトとヒロキ君は解ってる風で腹立つなあ」

 俺は立ち上がり、柵に背中を預けて笑いながら言う。


「あのヌイグルミの正体とかペルとか、纏めて後で説明するけどさ、まあ細かい事はいいんじゃないか。お前等皆して立派なストーリーテラーって事だよ!」


 そうさ。誰かが決めた主人公なんて居やしない。俺達は全員で主人公なんだ。誰かが流す涙にはきっと意味があってさ、時に間違えた道を歩んでしまっても人間なら誰でもやり直せるんだ。



 ▽あとがき▽


 之にて天然聖剣と冥界の王は打ち切り完結となります。何故打ち切りなのか?っと言う部分は「近況ノート」にて説明させて頂いております。今までのご愛読ありがとう御座いました。




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天然聖剣と冥界の王 こみかるんch @komikarun

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